5 1-B(前編)
「最近いい奴いないなー」
まだたったの一年なのにもう大半は用済みになった。
「おい、挨拶しろ―。天音」
アイツ、わたしとやったからってイキりすぎ。そういえば、あの教師雑魚だったからなー。
「あと髪染めるな―」
ウッザ。うるさいなあ。あとなんで学校で禁止してんの? 社会では許されてるのに。
「天音っていうのやめてくださーい、せんせ」
こうやって言っておけば、大概イジってくる。
「分かった百合、けど校則は守れ―」
うーわ。名前呼び捨て中年男性キツイって。ウザいの極まりすぎる。
適当に手を振ってその場を後にする。
「良かったね、一年主任と仲良くて」
右からくる声に振り返ると、さっきまで一緒に登校してたのに気づけば目の前にいた。
「いーや全然? ふざけないでもらえる?」
「どうせ、アイツとも経験済みでしょ?」
「まー最近ネタが無さ過ぎて、もう転校してしまおうかな」
「そんなことで軽く転校しようとすんなよ! 私百合居なくなるの嫌だし」
「わかったよ。多分大丈夫だから。そこまで本気にならなくても、彩音」
「ふーん。信憑性が無いなあ。あ、それよりさあ、聞いてくれる? 最近彼が都合悪い事多くてさ、もう別れちゃおうかな?」
「別れたら?」
「全然気持ちこもってない! そうどんどん別れれたらいいんだけどね。向こうがなんか親に知らせたみたいで」
「えーそれヤバ。まだどのくらいまでの関係か分かってないのに知らせるのはえぐいね」
「ホントホント。いっそ考えずに音信不通にしようかな?」
「それが良いと思うけど」
「でもそれからどうしよう。まだ良い人見つかってないのに」
「私みたいにすれば?」
「好きでもない人とは流石に嫌だよ。それが許せるの百合しかいないから」
「そっちの方が楽だよ? よく考えなくていいしさあ」
「はいはい。分かった」
彩音は一見普通の女子だ。髪は私みたいに染めてないし、私より100倍も1000倍も頭が良い。クラスメイトからの憧れの存在でもありながら、裏腹にとんだイカれ野郎だ。私と同じで。飽き性と言ったほうがいいだろう。
クラスでは男女が隣り合わせになるような並びなため、彩音は斜め左前の席だ。私は一番左から二番目だ。つまり彩音は一番左の席。私の隣の男子は一年生で不登校だから、いつも休み時間になったら彩音がその男子の席に座って隣り合わせで話す。
「っでさあ、あのK-POPアイドルめっちゃカッコ良くない?」
「分かるー。一度は会ってみたいよね」
「うんうん」
そんな話をしている時だった。
「ねえ、百合ちゃん。これ、百合ちゃん宛てだって」
そう女子友達に言われて手に持ってあるものを見た。
「手紙…?」
「そう、なんか伊藤くんから貰ったんだけど、伊藤くんも他の人から貰ったみたいで誰からか分からないらしいんだよね」
「へえ……」
唸りながら手紙を開ける。周りに彩音や他の女子もいるが対して問題にはならないだろう。
封を取って中を確認しようとしたら、先に見えたであろう女子が先に悲鳴を上げた。
「ええー!? これだけ?」
大したことは書かれていないのだろうと思いながら自分でも見てみる。
「好きです、会議室に来てください」
心の中で読んだが、彩音が先に読み上げた。
これだけマジ、とかいつなの?とかていうか誰?とか周りの女子が言ったが、冷静に声を出した。
「まあどうせいつも通りだし、楽しませてもらおうかな」
ラブレターなんて初めて貰った。告られることは何度もあるが、ラブレターなんて正直古い考えだと思ってるし、そう考えている人もいると思うからそういうこともあって今までラブレターは貰ったことが無かった。
決して嬉しくは無いし、行く気もほとんどない。だが、暇を潰すだけに行こうと思う。
これを書いた人は恐らくかなり気持ち悪い。私のまだ知らないくらい影の薄く、名前も知らず、そして私のことを知っている。それか、誰か知っている人がやっているかもしれない。心当たりは大いにある。この人はどれだけ自己中心的な考えなのだろうか。普通の花の女子生徒だったら行かないのが最善の選択だろう。
最悪の気分だ。




