3 2-A(前編)
「若菜!」
そう呼ばれてハッとした。
自分よりも先に靴をしまいに行った瑠奈に何故か呼ばれた。
動揺して言う。
「どうしたの……?」
「これ、見て!」
瑠奈が手に手紙を持ってこっちに渡してきた。
「何?」
「これ、若菜の下駄箱に入ってたよ?」
「え?」
疑問形しか発していない。何もかも理解不明だ。
「ラブレター?じゃない?」
「え?」
言語がなくなったように音しか口から出ていない。
「中身、確認してみたら?」
そう言われて、瑠奈が持っている手紙を受け取った。
封を開け、読もうとしたときにもう一度聞いてみた。
「これ、一応聞くけど瑠奈が作ったものでは無い?」
「そんなわけないじゃん。そんなに私のこと信じてないの?」
「そういうわけじゃないけど……」
『放課後、図書室に来てください』
たったそれだけしか書いてなかった。
「うっわ。たったこれだけ? 乙女の恋心というやつを知らないなあコイツ」
自分が読んでいるところに首を突っ込んできた瑠奈が言った。
かといって、瑠奈の意見には賛成できる。
人生では告られるのは二回目といったところだが、貴重な体験を潰されてしまった。
衝撃が強く言葉が出なかった。
「こんな奴なんかほっといて良くない?」
私は少し悩んだ後、コクッとうなずいた。
私は昼休みにもまだラブレターを手に持っていた。
「誰が、一体……」
そんなことを呟いて、校舎裏で隠れながらもう一度確認していた。
手紙にはたった一言しか書かれておらず、名前が一つも書いてなかった。
こんなものなら誰が書いたのか分からないし、強いては私宛てかも分からない。
ここまで気遣いが足りない人が私のことが好き――なのかは分からないが仮に好きだとして――と考えると、自己肯定感が薄れる。
そんなことを考えていると、「こっち」っと言っている男子の声が聞こえてきた。
咄嗟に私は草木に紛れるように隠れた。
「ずっと好きでした。僕と付き合ってください!」
力の入った声で男子がよくある台詞を言った。
校舎裏で、定番ネタを言うというのは、面白味が無いとも思えるが、意外とそういうのが最適なのかもしれない。
「私もこんな告白されたかったな」
なんて聞こえない声で呟いた。
正に盗み聞きしているように見えるが、というか盗み聞きしている。肯定するしかない。
「ありがとう、けれど」
呼び出された女子は最初にそう言い放つと、私は、それと彼も終わったと思った。
これもまた振る時の定番台詞だ。
「…こんな私だけどこれからもよろしくね!」
そう笑って言った。
そこからは、十分ぐらいずっと話した後、そのまま二人で何処かに行ってしまった。
放課後になってもまだ帰らない生徒は少なからずいた。
中学生となって誰かと付き合う人は多くなっただろう。
そんな人が少し楽しむために残っているのだろう。
結局残る事にした。
誰にも言わず、一人で図書室に行く。そうしようとしてた、が、瑠奈の察し能力が強く、何故か一緒にいる。
「なんで行くの? まあ若菜だったらそうすると思ってたけど」
瑠奈はザ・お嬢様で、こんな私を親友と言ってくれた。でも、瑠奈は私と違ってモテモテ。瑠奈と比べられて、いつも他の人からは酷いことを言われたりされたりする。
だから、誰かに認められたのが嬉しくて、どうしても行きたかった。
なんて、言えるわけない。
だから、適当に誤魔化した。
「このまま行かずに帰ったら、それこそ私がろくでなしみたいになる。そんなこと嫌だから」
「ほんとかー? まあいっか。私、帰るけど何か聞きたいことある?」
「ない」
「そっか。じゃあ一つ、知識として。好きでもない人と付き合うのと、付き合ってから好きになるっていうのは絶対やめたほうがいいよ」




