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数分間しか、いれません!  作者: うちの生活。


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58/62

58 人それぞれ

「もうね、チートでもズルでもいいよ!それより出発しませんか?!」


 いつまでもここにいる意味は何もない。そろそろ先に進まないと。


「そうだな。他の魔物がくるかもしれない」

「ミラさん、盾は大丈夫そう?まだ使える?」

「大丈夫!まだいける!」

「結構キツイのくらってたと思うけど⋯日本の技術ってすごいんだな」

「⋯厳密にはどこ産なんだろね?」

「⋯そんなの知らないよ。書いてるんじゃない」


 地図に表示されている黄色い三重丸のマークを目指して出発する。もし、マークの意味が前と同じなら安全地帯かもしれない。


 歩き初めて数分。騒がしくなることはなく、むしろ静かになっていく。


「暑い⋯」


 まだ大した距離を歩いてないのに、汗が流れてくる。梅雨の季節のような蒸し暑さだ。地面がぬかるんではいないが、かといって歩きやすいわけでもなく、普段と違う体力を使っている気がする。


「こんなとこ、あと三時間って?⋯ふざけてる⋯」

「前と違いますね⋯」

「ほんとにね⋯。適度に休憩しないと熱中症になるぞ」

「⋯その時は回復で⋯」

「そうだね⋯」


 ⋯ガサッ。ガサササッ。


「なんだ?!」


 音がした方を警戒していると、ゴリラがひょこっと現れた。さっきよりだいぶ小さい。子供だろうか?


「また?!」

「くるのか?!くるなら私の盾にこいっ!!」


 ミラさんの声で慌てて防御力上昇をかける。


「ウホッ!ウホッ!」


 襲ってくる事を想定したが、黒いモヤが漂って魔物化しそうにはない。今のところは動物園で見たゴリラとなんら変わりない。サイズが小さいからか、かわいくさえ見える。


「ウホッ!ウホッ!」


 ドラミングをしているけど、ペチペチ聞こえる程度。そのままこちらに向かってくる。


「こっちきたけど⋯大丈夫っぽい⋯?」

「そうですね。さっきとは違いますね」

「少しは警戒しつつ、先に進むとしよう」

「はい」


 完全に安心はできないけど、すぐにどうこうなるわけじゃなさそうだ。


「ウーホッ!ウーホッ!」


「あれ?もしかしてついてきてる?」

「きてますね」

「これって親がきたりとか⋯」

「ほんとに来ちゃうから言わないでください」


 ⋯ガサッ!ガサササッ!


「ユウジさんのせいですよ!?」

「いやいやいや⋯」


 今度はさっき倒したのと同じくらいのサイズのゴリラが現れた。わかりやすく黒いモヤをまとっている。


「親どころか、魔物じゃん!?」


「ヴオオオッ!!ヴオオオッ!」


「⋯⋯⋯ウホ?」


 小さいゴリラは、初めて見るのかキョトンとしているように見える。とりあえず小さいゴリラ以外に再び防御力上昇をかける。


「来るぞっ!!」


 テクノさんの声と同時に、魔物が勢いよく近づいてきて両腕を振り上げた。それが誰に振り下ろされるのかと思ったら⋯⋯⋯小さいゴリラにだった。


「え?!なんで?!」

「ウホッ?!」


「ウガアァッ!」


「ウギャッ!?」

「あっ!?」


 勢いよくくらった小さいゴリラはふっとんでいく。


「仲間割れなのか?!」

「そもそも仲間なんですかねぇ⋯?」

「ちょっとサシャさん!?なにしてんの?!」

「ええ?!もしかして治せって言ってます?」

「なんかかわいそうでしょ?!」

「えぇ⋯??」


 サシャさんにしては困惑している。それはわかる。だが、だがしかしだ!


「お願いっ!!」

「んもぅ!!なんでゴリラなんか⋯ぶつぶつ⋯自分で⋯」


 ぶつぶつ文句を言いながらも治しに行ってくれた。あとはこっちをどうするかだ。


「ユウジ!土の魔法でどうにかできないか?!」

「土ですか?!やってみます!」


 槍状で、とても固くなるようにイメージする。


『土』


 イメージ通りのものが魔物に向かっていく。


「ガァァッ!!」


 何個か振り落とされたけど、何個かは刺さった。それに続くように、テクノさん達も斬りかかっていく。


「はぁっ!」

「グァ?!」

「よし!ユウジ!少し引きつけておくから、トドメをさせるか?!」

「わかりました!」


 さて、どうするか?このまま土で倒した方がいいっぽいよな。⋯⋯⋯うん、上から落とそう。


「いきますよ?!」


 テクノさんたちが魔物から離れるタイミングで魔法を放つ。


『土』


 大きな硬い土の塊が魔物の頭上に現れる。


「グァガッ?!」


 ドンッ!!


 落下による振動と音が響いた。


「倒せたよね⋯?」

「あれなら倒せたでしょ」


 今までほぼ喋ってなかった近藤さんが、ドヤ顔で言ってきた。まぁ、倒せたということには同意する。


「終わりましたかぁ??」


 小さいゴリラを治療していたサシャさんが戻ってきた。すごく懐かれているように見える。


「サシャさん⋯?それ⋯」

「はい??⋯⋯あー、なんか懐かれましたねぇ」


 懐かれているというより、まとわりつかれているというのが正しいような。


「サシャさんに?!」

「治したからですかね」

「⋯なるほど。じゃあ、そのままゴリラ担当で」


 サシャさんが何か言いたそうにしていたけど、出発を告げる。まだあまり進めていない。今回は割とさくっと倒せたんだから進んでおきたい。


「そういえば、すっごい今さらで申し訳ないんですけど、テクノさん以外の方の名前知らないですね」

「ん?そうだったか。じゃあ今のうちに。彼はマッシュ・レイヤー」


 坊主頭の彼が反応した。


「こっちがウルフ・セニングだ」


 もう一人のスキンヘッドの彼も反応した。


「皆さん、家名があるんですね。貴族ってやつですか?」

「そうだな。ただ、名前だけだな。私もだが家を継ぐ立場ではない。だから騎士になるという人間が多い」

「騎士として頑張ってたら、別の家を興せたりとか?」

「出来なくはないだろうが、な。そんなに簡単にはいかない」

「なるほど⋯」

「ラノベみたい⋯」


 あ、そういえば。


「さっき、散々チートだの、ズルだの言われましたけど皆さんの能力は?」

「マッシュが能力を持っているが⋯⋯戦いには向かないものだな。というか、よくわからない」

「わからない??」

「そうだ。『コウツウセイリ』という名前しかわからない」

「コウツウセイリ⋯」

「それを使っても何も起こらないんだ。⋯いや、少しキビキビ動いてるように見えるような⋯」

「⋯え、コウツウセイリってあれ?」


 近藤さんがボソッと言ったけど、発音からしても間違いないと思う。


 交通整理。


 警察官とかが事故現場でやってるやつだろう。それを日常的にやる人なんていないだろう。日本ならまだしも、こっちで誰がやるんだ、そんなの。なんだその能力は。前に聞いた残念な能力といい勝負じゃないか。


「そうですか⋯。いろんな能力があるんですねぇ⋯」


 ⋯あれ、前に聞いたのなんだったかな⋯?⋯⋯ま、いっか。


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