56 こっちはどうですか
ホームセンターやら、スーパーやら、ネットやら。いろんなところを見たものの、何がいるのか、いらないのか。前回で学んだつもりだったけど、結局は足りないような気もしたし、いらなかったものもあったような気がする。⋯⋯ほら、あれ、鉄パイプとか。
⋯ま、それはそれとして、ぽちっとな。
あらかじめ話しておいた通り、洞窟の入り口付近で待ってくれていたようだ。近藤さんの時間を考えると、洞窟の中に早いとこ入っておかないといけない。
今回は、この話をもってきたテクノさんを含めた騎士三人、サシャさんとミラさん、近藤さんと俺、全部で七人で入る。ダヌさんはいない。
「お、きましたね!じゃあ、とりあえず入りますよ!」
サシャさんが洞窟に向けて一番に走っていく。
「いや、だから、サシャさんが先頭でどうすんだって⋯」
「あれ、サシャさんって盾役できるの?」
「できないよっ!どうせ急ぐってのにかこつけて、はしゃいでるだけだよ!」
「絶対そうだと思う。それに盾役は私の仕事」
「「「「え?」」」」
ミラさんが発した言葉に、騎士の人達も近藤さんも困惑しているようだけど時間が惜しい。
「近藤さん!考えるのは後だ!とりあえず急いで入っておこう!何もしないで戻りたくないでしょ?!」
「お、おう!」
幸いな事に入り口付近には魔物がいなかったようだ。事前に処理してくれていたのかもしれない。それならサシャさんが一番でも⋯⋯、いやダメだろ。
サシャさんに続いて洞窟に入ってみると、最初はゴツゴツした岩の壁だった。前とは違って、暗くなっていて先が見えない。
「暗いですっ!!」
「ありゃ、今回はライトが必要かな」
いらないかもと思ったけど、持ってきておいて良かった。ぽちっとこう。
「なんだ?!それは明かりなのか?!」
「⋯そうです。そういう道具です」
今回、テクノさん達と近藤さんの両方にいろいろ聞かれるのは、地味に面倒そうだ。
「あ、魔物じゃないですか?!」
「サシャ!私の後ろに!」
盾を構えたミラさんが叫ぶ。先を行くサシャさんが戻ってきた。
「あれって⋯警察とかの⋯?」
「⋯ええと、テクノさん達にお願いしていいですか?」
「よし、任せろ」
部下に指示をだし、彼らが持っていた剣で数回切りつけたら倒せたようだ。
「あれが魔物⋯」
「対処に慣れてますねぇ」
「仕事だからな」
「今まで魔法での攻撃しかできなかったから、すごく心強いです」
「誰も剣とか使えないのか?」
「使えませんね。なので、魔法が効かない魔物がでてくると困るんですよ」
「そうか。逆に距離があったり、複数の時は手伝ってもらおうと思っていたが⋯⋯今回は、炎が使えるのがいないんだったな⋯」
「そうなんです⋯。テクノさんは魔法は??」
「使えないな」
「そうですか。まぁ、なんとかなりますよ。ダメなら撤退しましょう」
「あぁ、そうだな」
自分の魔法があるし、近藤さんの扇風機あるし、なんとかなるはず。その近藤さんが静かな事に、若干の不安を覚えるけど。
あれ?いるよね?時間停止の範囲内だよね?
ちゃんと近藤さんがいる事を確認して進んでいく。
数分後、暗いとこを抜けると⋯⋯。
「今回は⋯⋯ジャングル??」
『⋯⋯ヴォーーッ!⋯⋯』
「なんか聞こえたんだけど?!なになに?!」
密林だった。どっかから雄叫び?が聞こえてくる。
前の洞窟は、雪だったり海だったりがそれっぽく見えていても、実際とは違って寒さ冷たさを感じる事はなかった。でも、今回は感じる空気から違う気がする。普段は感じることの無い、ムワッとした空気で蒸し暑く感じ、自然と腕まくりをしていたくらいだ。足元の地面を触ってみると、本物と変わりない土の感触がする。
「今回はよりリアルなようで⋯」
「佐藤さん、外にでたわけじゃないんだよね?」
「⋯多分ね。もしも外だったら、時間がきたら戻れるよ」
「あ、それってどういう事?ここは時間関係ないって事?」
「⋯そうみたいだよ?」
嘘ではない。能力かどうかはまだ黙っとこう。
「なるほど。じゃあ、ここを思う存分満喫できると」
「そうだね。まぁ、ちゃんと進むか戻るかしないといけないってことだけどね」
「⋯そうだね」
「まぁまぁまぁまぁ、ユウジさん?進むにしろ、戻るにしろ、必要なあれがありますよね?ここでも使えますよね?」
サシャさんに言われてスマホのマップアプリを起動してみる。圏外表示ながらも、どこかと通信しているようで現在地が表示された。
「え?スマホ使えるの?俺も使える?」
「どうだろね」
近藤さんのは使えないようだ。そらそうだ。
「佐藤さんのはなんで?」
「⋯⋯まぁ⋯⋯⋯能力みたいだよ?」
「え?魔法使えたりとか、スマホ使えたりとかチートじゃん?!」
「いや、言うほどチートじゃあ⋯」
「チート??あぁ、確か⋯。そう!ユウジさんはチートですっ!ズルじゃないけどズルですっ!」
「ちょっと?!人聞きの悪いことを言わないでほしいんだけど?!」
「ユウジ、何かズルをしてるのか?」
周囲を警戒していたテクノさんが疑惑の目を向けてきた。
「いや、こっちの人からすれば今までにない能力だから、そう思われても仕方ないってだけで⋯」
「能力?異世界を渡るのがユウジの能力なんだろ?」
「それはそうなんですけど⋯⋯⋯ここの地⋯」
「ここの地図が見れるんですよっ!それに、目的地までどれくらいとかわかるみたい!」
どうしてサシャさんが言うのか。どうしてもドヤりたいのか。
「地図⋯だと?洞窟内の地図なんて聞いた事がない。そもそも変わってしまうのだし⋯」
「そうでしょうね。でも、それがあったからこそ進む事ができたんですよ」
騎士さん達がざわついている。
「だから攻略⋯」
「⋯それが本当なら⋯」
「他の洞⋯」
今のうちに地図を確認しておこう。
更新された地図を上下左右、拡大縮小してみる。
「さてさて、なんかないのかな⋯」
相変わらずだだっ広い空間のようだ。普段、アスファルトしか歩いていないから、このリアルなジャングルを進むのはかなり大変そうだ。
こんなとこ進んでいくのに、こんな格好で良かったんだろうか?
俺と近藤さんは動きやすいからとジャージとスニーカー。サシャさんとミラさんはいつもの聖女服。テクノさん達は騎士らしく鎧姿だ。
まぁ、どんなとこかわかんなかったんだし、仕方ないよね。
そんな事を考えていたら、黄色いマークを発見した。
「お?」
相変わらず、それがなんなのかは地図上ではわからない。それでも目的地にするにはいいと思う。他にはなんにもないんだから。
それを長押しして経路検索すると、到達まで三時間と表示された。
「⋯こんなとこを三時間も?」
「何かわかったのか?」
「あっちの方角に三時間くらい歩いたとこになんかあるみたいです」
「っ?!時間もわかるのか?!それにこんな広いとこを、そんな小さいのでわかるのか?!」
「え、そうですね。こんな感じで動くので⋯」
画面を見せて、触って動かして見せる。
「お、おぉ⋯。なんだこれ⋯」
「まぁ、こんな感じです」
「流石ユウジさん!」
「ウッホウッホ!」
「ん?サシャさん?ドヤるだけでは足りなくて、ゴリラの真似でも始めたの?」
「え、ゴリラってなんですか?そもそも真似してませんよ?!」
「ウホ!」
「ほら、してんじゃん」
「してな⋯」
「さ、佐藤さん⋯あれ⋯」
「ウホ」
「ん??」
近藤さんが指し示す方向を皆で見てみると、ドラミングをしているゴリラがいた。




