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数分間しか、いれません!  作者: うちの生活。


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55 家電代わりになるか

 数日後に魔物の洞窟に行く。それは決めたからいい。でも、普段は普通の会社員なんです。


「佐藤さん。昼行きませんか?」


 異世界の事がわかってから、近藤さんが結構な頻度で昼を一緒にと誘ってくる。そのせいで同じ部署の人より行く回数が多い。


 別部署なんだから、わざわざこなくていいのに。メッセージでもくれればいいのに。


「⋯いいですよ。行きますか」


 変な噂をたてられなきゃいいんだけど。俺が好きなのは女性です。


「お、また近藤さん?最近あの外国の人を見かけないような⋯もしかして乗り換えた?」

「んなわけあるかーい。って乗り換えるも何もそんな関係でもないですし。近藤さんとは仕事の引き継ぎできなかったから」


 二人ともそんな関係ではいと軽く言いつつも、追求されにくい、それっぽい言い訳をしておく。


「え?じゃあ、改めて引き継ぎの時間でもとったら?」

「⋯⋯いえ、雑談も多いですし、そこまでしなくてもいいですよ」


 仕事の話をしないわけではないが、ほぼ異世界絡みの話だから、そんな時間はとってもらうわけにはいかない。昼の時間で充分です。


 そして、最近の事でもう一つ。すごく高い確率で、外に行ったタイミングでサシャさんが現れる。そうなるとどっかに入るのを断念し、急いでコンビニで買う事になる。そろそろ食事代として、なにかしら請求してもいいかもしれない。⋯⋯いや、少しの時間なんだから買わずにやりすごせばいいのか⋯?あれ??


「⋯もぐもぐ。コンドウさん、それも食べたいです。もぐもぐ⋯」

「え?これ?⋯⋯いいよ、あげるよ」

「ありがと⋯もぐ⋯ございます⋯もぐもぐ」


 最初から遠慮はなかったと思うけど、最近は近藤さんにも遠慮がないようだ。近藤さんは近藤さんで、サシャさんの滞在時間が短いからと甘くなってしまうのはわからなくはない。ただ、それは悪手だ。どんどんサシャさんは要求を通していくだろう。簡単な事にも気づかなかった、今の俺のように⋯。


「好き勝手食べて消えるっと⋯」

「え?⋯もぐもぐ⋯」

「⋯⋯あれ?もしかして位階あがった?時間延びてない?」

「え、気づきました?」


 食べながらドヤる顔が腹ただしい。


「これでもう少し長い時間食べられますよ!⋯⋯もぐもぐ⋯」


 その様を眺めていた近藤さんが少し真面目な顔をして聞いてくる。


「⋯佐藤さん、聖女ってなんだろうね⋯⋯?」

「⋯⋯ただの、職業だと思うよ」

「そっか⋯」

「サシャさんはこれに加えて、お金とかに執着がすごいらしいよ⋯」

「いえ、結局もらえてないんだから、それは違います!」

「⋯違わねぇと思うよ」

「そうなんだ⋯」

「だから、アニメのイメージとは違うって事だよ」

「確かに⋯そう思ってた方がいいね」

「うん。聖女って職業のサシャさん。そう考えておくのがいいと思うよ」

「なんか失礼じゃないです?!⋯もぐ」


 サシャさんは時間いっぱい食べて消えてった。まだ食べてないものも抱えていった。どんだけ食うんだよ。あっちで食べてないのか?


「⋯昼、どうしようかな」

「もう一度コンビニ行きます?」

「時間も時間だし、それがいいかな」

「⋯なんか残念だね」

「⋯⋯まぁ、うん⋯⋯」

「洞窟の話、なんにもしてないね」

「それは、仕事終わったら話に行くよ。今日は一人でさくっと終わらせるので」

「うん。その方がいいね。⋯あ、ミラさんもあんな感じなの?」

「⋯いや、サシャさんよりはだいぶ普通だと思うよ。洞窟行って、盾持つと勇ましくなるくらいかな」

「え、なにそれ」

「まぁ、今度行けばわかるので」


 もう一度コンビニで買って、近くの公園のベンチで食べ始めた。


「そういえば、扇風機はどんな感じ?」

「あー、イメージ通りの扇風機かな⋯」

「⋯というと?」

「家にあるのと同じようなイメージで扇風機って言ってみたら、風がでてきた」

「ほう」

「弱、中、強みたいな感じで風量は変わるかな」

「なるほど。⋯扇風機という名前だけど、そうだと思わずに風の魔法だと思って使ってみるのもいいかも」

「⋯というと?」

「わかりやすく、暴風とか。こっちでは難しいかもしんないけど」

「⋯それは扇風機ではないね」

「要はイメージ次第でどうとでもなるかも、と。でないと、魔物退治には使えないだろうし。ちなみに俺にかけてもらえない?すっごく弱くていいから」

「え、こんな感じかな」


『扇風機』


 近藤さんから、とても弱い風が流れてきた。扇風機の弱よりも弱いのを浴びてるみたいだ。


「あー、やさしい風だ⋯」

「いろいろ考えてみようかな。今のところは扇風機代わりに使ってるくらいだし」

「電気代かからなくてよさそう。あ、可能な限り使っていると位階があがるからいいと思う」

「位階ってあがるとどうなるの?」

「レベルアップみたいなもんだから、魔力が増えたりとか?一番分かりやすいのは異世界での滞在時間が延びる」

「な、なんですと!!?」

「位階が五あがるごとに増えるみたい。だから、使っておいて損はないかな」

「確かに!」

「さ、そろそろ戻らないと」


 ⋯よし。これで風も使えるようになったのでは?!あとで状態を見てみないと!


 水と合わせてうまく使えば、過ごしやすい夏になるのでは?

 火と合わせてうまく使えば、過ごしやすい冬になるのでは?


 そう、エアコンだっ!


 あとは洞窟に行くんだし、攻撃に使う方法も考えてっと⋯。


「佐藤さん、なんか楽しそう?」

「え?まぁ、なんだかんだで普通はできない事を体験してるしね」

「それはそうっ!!」

「ちょっ?!もう会社だから⋯」

「おっと。⋯でもさ、洞窟に行くのはいいんだけど、時間短いよね?あまり体験できないんじゃないかな」

「⋯⋯それは、多分なんとかなるかと」

「え、なんとかなるの?」

「多分。今度は前と違うとこだから、多分としか言えないけど」

「ふーん?」


 おそらく今度の洞窟では、近藤さんにもテクノさんにも言ってない事が全部バレるだろうなぁ。


「ま、いっか」

「?なにが?」

「いや、なんでも」


 どうとでもなるでしょ。


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