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数分間しか、いれません!  作者: うちの生活。


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49/69

49 あれ、既視感が⋯

 サシャさんに連れていかれた近藤さんは五分ほどで戻ってきた。おそらく位階が一なんだろう。機会があれば状態を見てみたい。自分以外のこっちの人間は初めてだから。


 ただ、それはそれとして。


 本来の目的である取引先に行かないといけないんだけど、近藤さんのテンションがやたら高くなっている。


「ちょっと佐藤さん!本当に異世界なんですかっ?!」

「そうですよ。多分あっちの教会でしたよね?仮にこっちの教会だとしても、この車内から一瞬で行き来なんてできませんよ。それにサシャさん達もいないでしょ」

「それは確かにっ!」


 勢いよく後部座席を振り返る。本当にいないのかを確認しているようで、あっちこっちを見回している。


「まぁ、仕事が終わって落ち着いたら⋯⋯もう一回行ってみますか?」

「行けるの?!行けるならぜひっ!」

「じゃあ、まずは⋯⋯と、そろそろですね」


 見覚えのある会社が見えてきた。少し感傷にひたるかなと思っていたけど、近藤さんがブツブツ言っているせいでそうならなさそうだ。


 車を停めた後、受付で会社名と名前を名乗り、用件を告げる。


「っ!!佐藤さんっ!!」


 あまり待つことなく、聞き覚えのある声が響いた。以前良くしてもらっていた部長さんだ。


「どうも、お久しぶりです」

「本当に良くなったんだね!聞いてた話だともう会えないと思っていたよ」

「はい。なんとか。理由が理由なので少し恥ずかしい気もしますけどね」

「いやぁ、治ったならそれが一番だよ。本当に良かった⋯。本当に⋯」


 部長さんが感極まったようで泣き始めてしまった。それにつられて自分も涙が頬をつたった。


「もう、完全に治ったので安心してください。再発もしないと思いますよ」


 消失しているんだから、その心配はないはず。仮になったとしても回復で治せるだろうし。


「そっか⋯。それは本当に良かったね」

「⋯はい、ありがとうございます」


 仕事での付き合いしかないのに、ここまでの反応をしてくれるのは素直に嬉しい。


 ちなみに近藤さんは先ほどまでのテンションはなりをひそめて、とても穏やかな表情をしている。なんかちょっとイラッとするのは気のせいだろうか。


「⋯すまないね、どうも年をとって涙もろくなったようで」

「いえ、なんか⋯⋯本当にありがたいです」

「⋯さて!じゃあ、納品だよね?」

「えぇ、本来の目的はそれですからね」


 少し落ち着いたのか仕事モードに戻ったようだ。部長さんのあとに着いて、納品する荷物を持っていく。指示された場所に置いて、今後についての商談も行う。とはいえ、担当はもう近藤さんだから、横で話を聞いているだけでいい。


「じゃあ、次もそれでお願いします。⋯話は変わるけど、佐藤さんは前の部署には戻らないの?」

「そうですね。今はもうこの通り近藤がいますしね。私は今の部署で頑張りますよ」

「そっかぁ。もったいないなぁ⋯」

「人手不足になったりすれば、変わるかもしれませんけどね」

「まぁ、それは御社の都合だものね。また会えただけ良しとするよ」

「こちらこそ、会えて本当に良かったです。また何かあれば近藤に言ってください。私も何かあれば言っておきますから」

「わかったよ」

「さて、じゃあそろそろ失礼させていただきます」

「あとは会社に戻るのかい?」

「いえ。一泊して明日、別の会社に約束がありまして」

「そうか。まず体に気をつけて」

「はい。それでは失礼します」


 会社をでて、車に乗り込むとなんだかまた泣きそうになってきた。


 本当に治って良かったな⋯。あんなふうに心配してくれる人あまりいないんだよね。


「佐藤さん、良かったですね」

「えぇ、話してくれてありがとうございます」

「いえいえ。⋯⋯それはそれとして!!ホテルに行ったら異世界行けますかっ?!」


 おっと、いい雰囲気が秒で台無しだ。


「い、行けます」

「ぃよしっ!!」


 おっと、なんだか既視感があるぞ⋯。こんな人だったのかぁ⋯。


 というわけで、ホテルにて。


「なにそのボタン?!見たことある?!」


 ぽちっとな。


 ピンポン。


 ホテルの部屋から教会へと景色が一変した。


「⋯キタキタキタキターッ!!ビバッ!異世界っ!!ありがとーーっ!!」

「こ、近藤さん⋯ちょっと⋯」


 急に騒がないでほしい。教会の人が来ちゃうじゃないか。見知った人ならいいんだけど。


「んん?サシャみたいな人がいる??って、ユウジさんと⋯コンドウさんだったかな?」

「あ、ミラさん」

「なんですか?!私みたいなセリフが聞こえて⋯あ、ユウジさん」


 サシャさん、ちゃんと自覚してたんだね⋯。


「ちょっと⋯異世界について説明というか、体験というか⋯」

「さっきは時間が短かったですしねぇ」

「いや、今回も短いと思うけど。あ、そうだ。近藤さん、見ててください」


『状態』


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


    ユウジ・サトウ


職業  無職

位階  十一

体力  満

魔力  満

能力  世界移動 十五分間+十分間

     洞窟内は時間停止

    学習

     学習による効果 回復

             解毒

             防御力上昇

             突進

             炎

             水

             土

    地図

    経験増


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 これを見せれば、異世界だってわかりやすいんじゃないだろうか。それに、近藤さんのも確認しておきたいって思ってたし。うん、いい機会だ。


「おお?!なにこれ佐藤さん!!タブレットじゃないよね!?」

「ステータスというか、名前とか体力とか見れるやつです」

「ゲームみたい!!」

「あの、知りたいって思いながら、『状態』って言ってもらえますか?」

「⋯⋯え?もしかして使えちゃう?!」

「た、多分⋯」

「うっひょぉっ!!よしよしよーし⋯」


 ずっとテンション高めだったけど、少し真面目な顔をして⋯。


『状態』


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


    タクミ・コンドウ


職業  無職

位階  一

体力  満

魔力  中

能力  ???

    世界移動(仮) 五分間

     ユウジ・サトウによる効果


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「⋯でた⋯。これ、俺がやったんだよね⋯?」

「そうです」

「⋯⋯⋯なんで無職なんだろう?」

「それは⋯⋯わかんない。俺もだし」

「そっか。⋯⋯⋯⋯⋯え、これ魔法だよね?!俺にも使えちゃった!?使えちゃったよ、おい!!!」

「そうだ⋯あっ」


 ひとしきり騒いだ近藤さんは時間がきたようで消えていった。


「にぎやかな人でしたねぇ」

「⋯うん。⋯⋯戻るの、少し嫌だなぁ⋯⋯」


 ⋯今後の付き合い方を考えないといけないかな。うん。


「⋯サシャさんが二人いるとこんな感じなんだね」

「うんうん。確かにそうかも」

「⋯⋯え??」

「いや、ほんと」

「そうそう」

「そ、そうですか⋯」


 なんでそんなに動揺してんの。あなたもにぎやか担当ですよ。


「話かわるけど、魔物の洞窟の件で偉い人から何か言われたりとかしてないんだよね?」

「そうですね。こっちに来ることになった以外には特にないです」

「⋯褒美じゃなくて、仕事をもらったんだね⋯」

「っ?!」

「⋯いや、別にいつもと変わらないのかな?」

「ぐぬぬぬっ⋯」

「こっちの洞窟も行くの?」

「行ってもいいかなって思いますけど⋯」

「けど?」

「行かなくてもいいのかなとも思いますね。結局お金になってないですし。それに仕事はこっちですしね」

「そうそう。私はサシャみたいに怒られたくない」


 それは確かに。前回は攻略できたけど、本来なら別にやらなくてもいいことだし。


「まぁ、お宝とかあればねぇ。あとは、好奇心を満たす何かとか?」

「それだったら、ニホンでもいいのかなぁって」

「⋯⋯物珍しいのは日本だろうしね。まぁ、俺は適度に楽しめればいいし」

「そうですね。適度に楽しんで、私に貢いでください」

「直接的に言うようになった?!」

「いや、そこはほら、攻略して進化した私、みたいな⋯」

「⋯⋯そろそろ時間かなぁ」

「まだじゃないですか?!」

「そう?じゃあ、この町はまだあまり見てないからウロウロしようかなぁ」


 残り十分もないだろうけど外に出てみる。前は防御力上昇をかけてもらった時だけだから、ほぼ何も見れていない。


「村よりは建物があるような⋯」

「そうですよ。町ですから!」

「それなら、店とかも多いの?」

「多いです!⋯⋯けど、ニホンを見たあとだと何もないに等しいですねー⋯⋯⋯」

「え、あー⋯⋯」


 町に対する下げ発言に何も言えないでいると、時間がきたようでホテルに戻った。


「佐藤さんっ!」


 んん?なんだ?


「はい??」

「佐藤さん、佐藤さん佐藤さん!!!」

「はい⋯なんでしょう」

「ありがとうございます!異世界!これからも行きたいです!」

「え、えぇ、都合が良ければ⋯」

「はいっ!うっひょおーー!!!」


 そうだった。こっちのサシャさんがいたんだった。んー、そんなに普段の接点ないし⋯大丈夫か、な?


「⋯うーん」


 なんだか、部長さんに会いたくなってきた。


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