44 にゃんにゃんにゃーん!!
少し挙動がおかしいダヌさんが最後に風呂に入って、それぞれがしっかりと休んだ次の日。家の外に出てみると人は見当たらない。魔物らしきものも見当たらない。
マップアプリを起動してみると、現在地や近くの建物などは普段と同じように表示された。ただ、よく見てみると地名や店の名前などは表示されていない。やはりここは日本ではなく、洞窟内ということで間違いないだろう。
「わかってはいたけど、やっぱり日本じゃないね」
「そうですよね。人が全然いないですし」
「いつも誰かが歩いてるもんね」
そのまま何かないか地図を探していると、最寄り駅から三つ先の駅付近に黄色い三重丸を見つけた。
「少し先に何かあるっぽい」
「じゃあそこに行くんです?」
「そうしようかなって思うけど⋯」
「⋯けど??」
「すっごく行きたくなさそう顔してない??」
「そ⋯そんなことはないですよー⋯⋯」
なんか前回にも見たような顔をしている。快適だったからまだゆっくりしてたいとかそんなんだろう。
「お風呂は入れたけど、今回は食料に限りがあるんだし、進まないとね」
「い、いや!だから、そんなことはないんですよー⋯」
「⋯ふーん??」
「さ、さぁ!行きましょう!どっちですか?!」
「あっち⋯⋯⋯いや、こっちかな」
「え?!あ?!どっち?!んもぅっ!!」
表示の黄色い三重丸が前と同じなら何かしらあるはず。突進を使ってもいいんだけど、街中だと連続では使いづらいし、そんなに遠くなさそうだから歩いていってもいいだろう。三人にとっては、ちょっとした観光になるんじゃないだろうか。
「⋯あ、電車乗れないかな⋯」
駅で思い出した。家の設備が使えたんだから、もしかしたら乗れるかもしれない。
⋯あ、動いてても運転できないよね。勝手に動いてくれるかな?
そんな事を考えながら、いつもの通勤と同じように駅に向かって歩いてたら何か聞こえてきた。
「⋯にゃーん⋯」
「ん?サシャさんなんか言った?」
「言ってませんけど?」
「⋯にゃーん⋯」
「え、ほら、猫の真似してない?」
「いえ、してませんけど?!」
「あれ??」
「⋯にゃーん⋯にゃーん⋯」
「え、ほら」
「だから、私じゃないですって!」
サシャさんじゃないとしたらミラさん?ダヌさんなわけないだろうし⋯⋯って、じゃあ本当の猫??
数メートル先にあったコンビニの自動ドアが突然開いた。同時に、中から数え切れないほどの猫がこっちに向かってくる。
「にゃーん!!にゃーん!!」
「にゃんにゃんにゃーん!!」
「にゃーご!にゃーご!」
「にゃーっ!!!」
あ、白い猫だ。かわいい。って一瞬思ったけど、かわいくない量の猫が敵意たっぷりで襲ってきた。灰色だったり、黒だったり、三毛だったりと様々な色をしている。猫の種類も様々かもしれないけど判別がつかない。よく見ると黒いモヤも漂っている。
「⋯⋯え?え?え?」
「猫⋯ですよね?」
「⋯いや、モヤでてないか?」
慌てて今度は忘れずに防御力上昇をかける。ミラさんは盾を構える。
魔物になったとしても小さいままで回り込んでくるから盾が役に立たない。そのままかみついてくる。
「に゛ゃ゛ーん゛!!!」
「にゃーーーー!!!」
「にゃにゃにゃにゃ!!!」
「痛い痛いっ!?」
「ちょっと!?かわいくないねっ!!いたっ!?」
「このっ!」
『炎』
ダヌさんが炎を放つ。何匹かには当たったけど、大半は素早く避けてこっちに向かってくる。攻撃をしたせいで、余計荒っぽくなってしまったような気もする。本当にかわいくない。
「ちょっと皆つかまって!!」
駅も近いことだし、どうせ当たらないならこのまま突進で攻撃しながら逃げてしまうのもいいだろう。
『突進』
また何匹かには当たったけど、大半には避けられた。倒すの目的ではなく、逃げたいからそのまま突進を繰り返す。数回使ったところで地下鉄の入り口付近にたどり着いた。
「⋯にゃー⋯⋯」
「⋯⋯ワン⋯⋯」
まだ猫の声は聞こえるけど、少しは離せたようだ。追いつかれる前に駅に入ってしまおう。⋯⋯え、犬もいるの?いや、そんなのはどうでもいい。
「この階段おりるよ!」
「どこ行くんですかぁ?!」
「説明はあとっ!追いつかれるよ!」
降りていくと改札は通れるようになっていた。そのまま通り過ぎてホームまで降りていく。
「まだ降りるんですかぁ?!」
「し、しんどいよぅ」
ホームにはいつも乗っている電車があって、扉は開いていた。急いで乗り込むと、ちゃんと皆もついてきた。
「ハァッ、ハァッ⋯ユウジさんっ、これは⋯」
プ、プシューッ⋯⋯。
「あ、閉まった⋯。え、発車するの?」
乗ったはいいけど、どうしたものかと思う暇もなく、電車は目的地方面に進み始めた。
「⋯⋯えと、これは地下鉄っていって、地下を走る電車なんだけど⋯⋯そもそも電車を知らないか。馬とか馬車より速くてたくさんの人数を運べる乗り物です」
「「「へぇーー⋯⋯」」」
「あれ、サシャさんの反応が薄い」
「いつもいつも叫ぶわけないじゃないですか⋯。ただでさえ、追われて疲れてんのに、階段降りて疲れてるし、そんな余裕ないですよ⋯」
「そっか」
「それより、ユウジ。これはどこまでいくんだ?」
「あー⋯正直わかんないですね。動くとも思ってなかったし」
「え?!」
「⋯でも、多分目的地付近で止まると思いますよ。なんとなくそう思います。止まらなかったら⋯は考えたくないです」
「そ、そうか⋯」
ここまできたら、都合よく止まってくれるだろう。⋯⋯多分。止まらなかったら⋯⋯どうしようかねぇ⋯⋯。




