41 焼肉パーティーは?
「な、な、なんじゃぁ、こりゃあっ?!」
「ヒィーハッ⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯なんだ、これ⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
船っぽい建物のなかは、だだっ広い草原だった。青空でよく晴れている。そのうち羊とか出てくるんじゃないだろうか。
勝手にお宝ムードをだしてた二人を困惑させるには充分な景色だったようだ。
「えーと⋯のどかですね??」
「そうだね⋯」
「⋯お宝はなさそう」
「草しか見えないしね⋯」
「あの船、なんだったんでしょうか?」
「⋯⋯⋯⋯門?」
「あ、あーーー⋯」
「いや、ごめん。無理矢理納得しないで」
とりあえず地図を確認しようと、スマホのマップアプリを起動する。
「⋯あー⋯でしょうね⋯」
そうだろうなって思っていたけど、表示されている範囲にはやはり何もないようだ。範囲を変えれば何か見つかるかもしれない。
「あ、あれ!?」
すっかり正気に戻ったミラさんが何かを見つけたようだ。
「んん?」
ここでは地平線っていう表現が正しいのかわかんないけど、そのあたりに白っぽい何かが見える。その何かは一つ二つではなく、横一線に広がっているように見える。
「なんだ?」
その白っぽい何かが徐々に近づいてきて正体がわかった。
「⋯え、羊?本当に?」
「ますますのどかですねぇ」
「⋯⋯いや、全然のどかじゃないような気が⋯」
のどかさとはほど遠い、ドドドドドッと荒々しい地響きが響いてくる。
「あれさ、もしかしなくても⋯⋯こっちきてるよね?」
「⋯⋯そうですね。なんならすごい勢いできてますよね」
「⋯え、やばくない?」
横一線に広がった羊が、すごい勢いでこっちに向かってくる。羊と羊の間に隙間はあるけど抜けられると思えない。となると、逃げ場は⋯⋯。
「やばいっ!戻ろうっ!!⋯⋯⋯って戻れないっ?!」
逃げようと振り返ると入ってきた通路はなくなっていた。なんならそっちからも羊が来ていて、全方位を羊に囲まれている状況だ。
「こっちもきてんじゃん!?」
「どうしましょうっ?!」
「⋯⋯⋯よし、焼くか?」
「そうですね。焼肉にしてやってください!!」
「焼肉っ!?」
「お腹減ってきたからちょうどいいね」
聖女二人が焼肉の単語で安定のおかしさを取り戻したようだ。
『炎』
ダヌさんが放った槍状になった炎が羊に向かっていく。当たったはずだけど少しも焦げていなさそうだ。勢いも変わらない。距離のせいだろうか。
「⋯⋯全く効いてないな」
「そうですね⋯」
「もっと強火で炙らないとっ!」
「うーん、塩持ってきてたかなぁ」
自分も合わせて炎を使って火力をあげようかと考えていたら、羊たちに黒いモヤが漂い始めた。
「⋯え、さらに魔物に?!」
「魔物は食べたくありませんっ!」
「えー羊はー?」
「そんなこと言ってる場合じゃないって!」
「逃げ場ないからな」
そんなやりとりをしていたら、まだ少し距離があったはずなのにいきなり目の前に現れた。突進でも使ったんだろうか。
「っ!?」
「ひえぇっ!?」
そのまま突進の勢いで攻撃されなかっただけ助かる。至近距離で全方位を囲まれているけど。
「どっかくずして、突破しないと!」
「俺の炎はあまり効いてなかったぞ!」
確かに二人の炎を合わせても効くと思えない。ただの羊っぽいのでも効かなかったのに、魔物化してしまったから余計に効くとは思えない。
「たてたてたーて⋯⋯さて盾を構えてっと⋯⋯さぁっ!来いっ!!」
あまり考えてもいられない状況でミラさんは威勢よく盾を構えた。焼肉ブームが過ぎ去ってくれて助かる。
「じゃあ、前に集中して炎を合わせましょう!」
「よしきたっ!」
「さっきと同じ槍状に!」
『『炎』』
二人分の炎が放たれるのと同時に魔物たちが前進してきた。
「きゃーっ!!ちょっと!?きゃーっ!!」
「この私を⋯この盾を甘く見るなよっ!」
ちょっと今は二人に構っていられない。炎で攻撃した箇所以外の魔物がどんどん突進してくる。
「つっっ!!?」
「ぐっっ!!」
「きゃーっ!きゃーっ!」
「ま、まだまだぁっ!」
盾を構えたミラさん以外はもれなく攻撃を食らってしまった。痛みで気づいたけど、この流れについてくので精いっぱいで防御力上昇をかけ忘れていた。
「もう!血が出ましたよー!」
「ミラさん、回復お願いできるかな?」
「⋯しょうがないな。じゃあ回復するから、防御力上昇をかけて」
こちらをチラッと見たミラさんが、盾を構えたまま回復をかけてくれた。⋯なんかキャラが変わっているような?
とりあえず魔法をかけあっているその間、魔物たちは再度突撃する為にか後ろに下がっていた。
「これはまたやられるぞ⋯」
防御力を上昇させたものの、どこまで耐えられるかわからない。さてどうするか。時間はあまりないだろう。
⋯そういえば、攻撃は最大の防御っていうよね。相手に攻撃させなければ、その間はやられないってことだよね。
とはいえ、全方位に攻撃は火力が不十分だろう。今の二人分の炎だって少し焦げている程度にしかなっていない。そんなのを全方位に広めたところで無意味だろう。一点に集中したうえで火力を上げないといけない。とれる攻撃の手段は火と水と土と鉄パイプと突進。ダヌさんがいるから火を組み合わせる事はできる。どうしたら火力をあげられるだろうか。
⋯試すとしたら、水と土くらいか?火はあんまり効いてないし。単独か火と合わせるか?
「⋯⋯こないだのをもう一回やってみるか」
とりあえず、魔物の突進から身を守る目的で土で壁を作る。壊されたとしても、勢いが弱くはなるだろう。
「そんでもって、集中してー⋯」
くっついた魔物を倒した時と同じく、でっかいのを一発お見舞いしてやる。圧力をかけて固くなるようなイメージもして⋯。
『水』
魔物の上に水の球が浮かんだ。それに気付いているのかいないのかわからないけど、魔物たちに逃げるような素振りは見えない。単に気付いていないだけでありますように。
「よし⋯⋯いっけぇぇーーっ!!!」
ッッドンッ!!!!!
水の球は勢いよく落下した。今回は土の壁があるからずぶ濡れにはならないと思っていたら壊れてしまった。
「ちょっと!?またビショビショですよ?!」
「それより!倒せたっ?!」
落とした所にいた魔物は倒せたのか、動かなくなった。
「よしっ!じゃあ次だっ!」
もう一発同じように水の球を落とす。属性なのか威力なのかわからないけど、ちゃんと効くならなんでもいい。とりあえずあと一発やればなんとかなりそうだ。
「最後っ!」
ッッドンッ!!!!!
「⋯⋯これで終わりだよね?」
「そうみたいですけど⋯⋯どうすんですか、これ」
「ビショビショだよー」
「こんな時は俺の炎が必要だな!」
「⋯⋯っ!!」
ダヌさんを見るサシャさんの目が険しくなった気がするけど、ここはそれしかないだろう。こんなことで風邪はひきたくない。
「⋯そうですね、お願いします」
「⋯あー、羊いなくなっちゃったんだ」
⋯⋯ミラさんは水を浴びて、焼肉が欲しい状態に戻ったようだ。




