27 サシャさんは逃したくない
ぽちっとな。
ピンポン。
「あっ、こんば⋯」
「洞窟は広かったですけど、地図が見れて!時間も気にしなくていい!って事はやっぱり魔物倒し放題って事ですね!?頑張れば洞窟をなくせるかも?!」
挨拶する事もなく、最初からテンション高めに話し始めるサシャさんには、もう慣れたものだ。
「え?そこまで頑張るの?」
「え!?やらないの?!」
「ほどほどでいいんじゃ⋯」
「いやいやいや!やれるならやらないと!逃しますよ?!」
何をだよ。⋯⋯慣れたとしても、ついていけるかどうかは別の話だね。
「⋯えーと、そこまでやるにしても、やらないにしても⋯」
「!?やりましょうよぉ?!逃しちゃっていいんですか?!」
「だから、何をだよ?!⋯って行くなら準備をしないといけないよね?」
「ま、まぁそうですね⋯。ゲフンゲフン」
長時間になるなら食べ物も欲しいけど、あれが欲しい。あれ。
「洞窟に持っていってなかったけど、体力魔力が回復できるような道具ってあるんだよね?」
「あー、あるにはありますけど⋯」
「けど?」
「ちゃんと効いてるのがわかんないんですよねぇ」
「なにそれ。ちなみにそれは何ていうの?」
「エナドリですねぇ」
「⋯エナドリ。ポーションじゃねぇんだ⋯」
サシャさんの反応からしても、名前からしても、効果には期待できなさそうだ。⋯翼は生えないのだろうか。
「飲めば効果はあるんだよね?」
「ちゃんと回復はしているらしいんですよ?それと、飲めば爽快感が得られますし」
「⋯ただの炭酸の飲み物?!」
「ないよりはあった方がいいかな、という程度です」
「えぇ⋯」
⋯まぁ、邪魔にならないなら、あってもいいのかな。どんな味だろ。飲んでみたい。
「ないよりはあってもいい、とか、あってもなくてもいいとも言われてます」
「え、ほとんどいらないんじゃ⋯」
「⋯⋯そういえば、地図は状態に表示されてました?」
「表示されてたよ。やっぱり能力みたいだね。あと、洞窟内で時間が止まるってのも表示されてた」
「おぉ!やっぱりっ!」
洞窟内で確認した時には表示されてなかったが、あとで確認した時には表示されていた。あのタイミングで能力が追加されたって事は、魔物の洞窟に行かなければ、日の目を見る事がなかった能力だろう。地道に時間を延ばそうとしていたこちらとしては、時間を気にしなくてよくなるのはありがたいが、洞窟内限定なのは⋯⋯。ありがた迷惑というのはこういう事をいうのだろうか。
「そうだ。こないだ、風とか土の魔法をって聞いたけど」
「それはちょっとまだ⋯」
「あ、それはいいんだけど、剣とかさ、魔法以外の攻撃手段はないのかな?」
「⋯⋯魔法以外??剣??」
え、どうしてポカンとしているの?⋯まさか、ないの?!そんな訳ないでしょう?!
「ほ、ほら俺もダヌさんも炎で攻撃するけど、それ以外の手段が欲しいなって思うんだよね。炎が効かないと困るし。水はあるけどさ」
「⋯⋯⋯⋯⋯」
「防御力上昇をかけて、剣とか槍を持って突進すればいい感じに攻撃できないかなって」
「⋯⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯あれ?」
え、どうして無反応なの?!おかしな事言ってるかなぁ。
「おーい、サシャさん?」
「⋯⋯⋯は?!」
「だ、大丈夫?」
「すいません。いろいろ想像してました。剣とか槍をもったユウジさんを。⋯⋯想像した結果、ユウジさんには扱えないと思います」
「扱えない?」
「はい。まず、剣も槍もそれなりに重いです、仮に持てたとしても、自在に扱えるようになるまでが大変なんです。そこに突進を重ねるなんて、仮にできたとしてもかなり先の話だと思います。だから、持ちやすくて軽くて丈夫なもの、もしくは何も持たずに普通に突進するのがいいかなと」
「⋯おぉ、珍しくそれっぽい事を言っている」
確かに日本ではそんなの使ったことはない。それどころか、持った事もない。どのくらいの重さなのかはわからないけど、こっちの武器だと重そうな気もする。そしてそんなものを持ち歩く。⋯うん、現実的ではなさそうだ。ホームセンターにでも行って何か探してみよう。
「剣とか使うだけなら、技をくらった方が早いと思いますよ」
そこでドヤられると、それっぽく言ったのは台無しだよね⋯。
ーーーーー
魔物の洞窟に行くっていうから、どんな感じになるのかなって見ていた。正直、魔物退治に時間を使われるのは、もったいないなぁって思っていた。
「あれ?ダンジョン内は時間が止まっている?んん??」
ユウジのスマホに届いたメッセージにそう書いてあるらしい。
「そんな能力にしたんだったかな?」
能力を容量いっぱいに詰め込んだのは覚えている。そのせいで、レベルアップ等をしないと時間を延ばせないようになっている。
「⋯⋯⋯した、んだろうね」
使えないはずのスマホにメッセージが届いたのも、地図が使えるようになったのも、もちろん自分の力だ。ただ、必要になった時にそうなるように設定されたものであり、サシャの時のように、特別に今回何かをしたわけではない。⋯⋯だから、初期設定の時に盛り込んでたうちの一つなんだろう。記憶にないけど。
「まぁ、死なない程度にダンジョンを楽しんでもらえるようになるならいいかなぁ」
今後も、何か覚えのないものが出てくるかもしれない。だとしても、交流に役立つように盛り込んでるはずだから、大丈夫だろう。⋯⋯⋯⋯多分。
「⋯⋯あれ、死なない、よね?」
一抹の不安を感じるのは、あの聖女が一緒だからだろうか。ちなみに、死なないような特別な加護をつけたりなんかしていない。というか、つけれなかった。
「⋯⋯でも、あの子の叫び声、クセになりそうなんだよねぇ」




