第16話 地雷系ロリBBAにコロコロされる
「占ってやろうか? ……のう? 傾国の魔女さんや」
「……っ!」
冒険者ギルドのロビーにて。
ソファーに座って水晶占いをしていたエルフの幼女がユウキに声をかける。
しかも、ユウキを昔の忌名で呼んだ。
(傾国の魔女は数千年前に広まったユウキの呼び名だ。もう誰も覚えていないはずなんだが……)
「ど、どうしてその名を……」
ユウキは息を呑んで顔を硬直させていた。
「ワシにはおぬしの裏の顔も見えておるぞ。プリーストは仮の姿。性別に関しては……どちらでもかまわぬ。愛のカタチは人それぞれだからのう」
長い金髪をサイドテールにまとめた背の低いエルフの幼女……カーラは世間話をするような軽い口調で秘密を暴露すると。
――――キィン!
右目を金色に輝かせた。
「大事なのはおぬしが死印を宿しておることじゃ」
「……っ!!」
「ユウキ、こいつは危険だっ」
オレはユウキを庇うように前に出る。
しかし――――
「かかったな、阿呆め」
床に突然、魔法陣が浮かび上がった。
魔法陣から放たれる電撃の魔法。
――――バチバチバチ!
「が……っ!」
電撃魔法は鎧を通して、肉体に直接ダメージを与える。
オレは一瞬で脳を焼かれて、絶命した……。
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「初回サービスじゃ。タダで占ってやろう」
「いいの?」
「もちろんじゃ。こうして出会ったのも何かの縁。いや、必然じゃからのう」
カーラ――耳の長い金髪エルフの幼女は、まるで老人みたいな口調でユウキに語りかける。
(戻ってきた……!)
慌ててステータスを表示して、スキルを確認する。
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【ロイス・コレート】
●冒険者ランク:ゴールド
●クラス:パラディン(Lv7) ファイター(Lv30)
●能力値:【体力52】【反射36】【知覚31】【理知25】【幸運21】
●所持スキル:【シールドマスタリー】【ホーリーシールド】【ホーリーレジスト】【回復魔法/初級】【剣技/上級】【攻防の構え】【炎耐性】【刺突耐性】【水中呼吸】【水泳/中級】【電撃耐性】
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ステータスはパラディン仕様に改ざんされている。
耐性スキルについては盾役が覚えていても違和感はないだろうと、表示をオープンにしていた。
不意打ちを食らって耐えたとき、耐性スキルを覚えていないと不自然だからだ。
(【電撃耐性】を覚えてるな……)
これで電撃魔法の罠に耐えられるだろう。
だが、罠があるとわかっているのに引っかかるバカもいない。
オレはユウキの手を引っ張った。
「もう行くぞ。試験の準備をしないと」
「ええ~? タダで占ってくれるみたいだよ。ちょっとだけいいじゃーん」
「ああいうのは初回だけタダでやらせて、抜け出せなくなったところで高い金を請求してくるんだよ。みんなやってるよ。最初は怖くないってな」
「おいこら。ワシの占いはギルドの正式な許可をもらっておる。悪徳シーフギルドみたいな詐欺は働いておらぬぞ」
「どうだかな。人を罠にハメようとするヤツは信用できない。いくぞ」
オレはユウキの手を引っ張って、そのままギルド会館を後にした。
◇◇◇◇
「ふむ……」
僧侶もどきと騎士もどきが会館から立ち去った後、ワシ――自称『お天気占い師のカーラちゃん』は神妙に頷いた。
(よもや……じゃ)
あの騎士は、ワシが仕掛けた電撃の魔法陣に気がついておったのか?
いいや、ありえない。ギルド職員にも内緒で罠をはった。
職員の中には一流のソーサラーも在籍している。あんな脳筋騎士に見破られるはずがない。
本当は魔女の力を試すものであったが、まさか従者も未知数の力を持っておるとは。
「くふふ。楽しくなってきた。退屈せずに済みそうじゃな」