歌と酒と
「そう言えば、さっき聞きなれない歌に釣られて店に入ったんだけど、あれママが歌ってたのか?」
「えぇ、そうよ」
「ママって歌い師なのか?」
「歌い師…?歌手の事かしら?いえ、私はただのカラオケ好きのママよ」
「カラオケ?」
「あぁ、曲を流して歌う事よ」
「そう言えばさっきから店内で流れてるこの歌も全部ママの国の歌なのか?」
「そうよ、この機械で曲を流す事もできて、歌えるんだけど…この国の歌は入ってないのよね…カラオケ無駄になっちゃったわね…」
「いや、ママの歌上手いからぜひ歌ってよ!」
「あら、でも本当はお客さんに歌ってもらうためのものなんだけど…まぁ異世界だし良いわよね?」
純夜がデンモクとマイクを取り出す。
「どう言う歌が好き?激しいの?ゆっくりしたの?女の人の歌?男の人の歌?」
「んー、よくわからないけどゆっくりした歌が好きだな!」
「じゃあ、ウーミンの春の恋うたってみようかしら」
〜〜〜〜〜♪
パチパチパチパチ!
純夜が歌い終わるとカイルは拍手をした。
「やっぱりママ歌上手いですよ!」
「あらそう?ありがとう」
「こんな魔道具見た事ないですよ!どうやって作ってるんですか?」
「ふふふ、私もわからないわ、なんか頭の良い凄い人たちが作ってるの」
「へぇ、ママの国は進んでるんだな!いつかママの国にも行ってみたいなぁ…」
「そう?確かにいい所だけど、時々疲れちゃうのよね…皆生きるために必死で」
「それってどこもそうなんじゃないんですか?」
「そうね、でも時には自分じゃどうしょうもない時もあったり、望んでそう生まれたわけじゃないのに周りから差別される事もあるのよ」
「確かに、それはキツいっすよね」
「どんな理由があれど、他人を傷つけてないなら差別していい理由にはならないと私は思うわ」
「言われのない差別…かぁ…」
カイルはグラスのお酒を見ながら何かを考えているように見えた。