開店準備
カランカラン…
「あら、カイル!いらっしゃい〜」
「ママ、今日友達連れて来たんだけど、悩み聞いてくれないか?」
「あら、どんな悩み?」
私は純夜、ゲイバーに勤め始めて早10年。
数ヶ月前に新宿二丁目で自分のお店を出すことが出来たの。
しかし、新宿の店にも関わらず来るのは外国のような見た目をした人や、リザードマン、ドワーフ、エルフのような亜人ばかり!
と言うのも実は………
ーーー遡ること約半年前。
「はるママ、今までありがとうございました!」
「純夜、これから大変だろうけど、がんばるんだよ」
純夜はゲイバー「虹花」を卒業して自分のゲイバーを開くために、テナントを契約しに行くことになった。
「ん〜〜微妙ねぇ…」
「では、こちらはどうですか?」
「家賃高すぎだわ」
「ではこちらは?」
「ちょっと狭すぎるわね…」
純夜は不動産が出す物件の写真と睨めっこをしていた。
「もっと他に物件はないのかしら?」
「ん〜〜〜、あるにはあるんですが…所謂事故物件でして…」
「へぇ〜いいじゃん!あたし幽霊とか信じてないから見してよ!」
「では、こちらになります…」
ペラペラッ
「あら!ここいいじゃない!」
「え…!よりによってそこですか?!」
「えー何よー?安いし広いし、内装が残っててそのまま使えそうだし、何より綺麗じゃない!」
「実は、そこ前の方が2名連続で1週間以内で解約されてるんですよ…」
「へぇ〜なんで?」
「それが…どうせ信じてくれないの一点張りで理由はわからず…」
「ここにする!」
「え?!今の話聞いてました?!」
「大丈夫、私強いから」
「確かに体格はいいですが…もう何があっても知りませんよ?」
純夜は鍛え上げた上腕二頭筋を見せつけると、不動産の担当は渋々承諾した。
内見しに行くと、純夜はまぁ素敵じゃないと目を輝かせていたので、契約までに時間はかからなかった。
そしてあっという間に半年が経ち、お店の看板が出来上がり、店内にはメニューやポスターが貼られ、お酒が担ぎ込まれて来た。
「準備はできた…あとは開店するだけね!」