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その1

自由船は、超高速航行でプルの村を目指していた。虫の残骸や周辺の状況を調査し、何者が呪物を仕掛けていたのか手掛かりを掴むためだ。


地上に影響が出ない高度を飛行し、僅か3時間で人猫族の村に到着してしまった。船旅なんて優雅なものではなかった。(笑)


族長とプルは、自宅の温泉から出て直後くらいに到着を知らされた。


「ばんちゃん、村に着いたって。」


「ヒエッ、もう着いたの?」


族長は驚いている。プルの足でも2日かかったらしい。あいつめ、温ーく走っていたな?(笑) いや、族長を心配してか。


毛並みが温泉の影響でモフモフ&フサフサになった2人が、名残惜しそうに後部ゲート(元正門ゲート)の前に立っている。


俺と妻達、ラヴィ様も一緒だ。プルの村には来たことが無いとかで、見物も兼ねて同行するとか。ただ気晴らししたかっただけでは...(笑)


「あなた、実験はしたの?」


マニが心配そうに尋ねた。それもそのはずで、ショック吸収フィールドを体の周囲に展開させて降下する装置で船から降りる仕様なのだ。


これはマニみたいにエアフロウ等の飛行魔法を体得していれば必要がない。あくまで、一般人用の処置だ。


自由落下だから、スピードが半端無い。失敗したら、俺でも死ぬんじゃないか?


「いや、これはやってないね。俺が先にいくから、大丈夫だったら降下してね。」


他の面子は、万が一でも息さえしていれば回復できる自信はある。フィールド内の衝撃がどれくらいかを体感しないとなので、先ずは自分で確認する。


正門脇に据え付けられた3m立方体の透明なオブジェの中に入り、扉型のチャンバーを閉めた。


オブジェ内部中央付近のプレートの上に立つと、球状の空気の塊が体を包んだ。そのまま床が開いて、俺は自由落下していった。


落下ポイントはプルの村の近くの浜辺で、高さ100mからの落下だ。正直、メッチャ恐かった。(笑)


本当はもっと停泊高度を落とせるんだが、実験も兼ねているので仕方ない。妻達はもっと低い高度で降りてもらう。


案外落下の衝撃は少なかった。地面に接触する手前で、フィールドが足の方へ脱落し、地面との間に空気のクッションを形成する。


一瞬エレベーターが止まる時みたいな感覚があり、安定して安全に着地できた。魔法のエアシールドの応用らしい。


「思ったより結構安定してる。今から高度を下げるから、合図したらお願いね。」


俺は妻達にメッセージを入れた。3人ともエアフロウを使えるから、いざと言うときは自力で飛べる。船体の高度が下がり、20m上空で停泊した。


アズが最初に降りてきた。流石に武術家だけあって、胆が据わっている。次にナルが、最後にマニが着地した。


「あなた、度胸があるわね。あんな高さで降りる勇気は無いわ。」


アズは率直に感想を述べた。他の2人も頷いている。やっぱり恐かったのな。俺自身も相当ビビっていたので。


「まあ、実験は成功だね。でも視界が問題だね。高所恐怖症には使えないね。」


「ああ、高いところが苦手な人ってことね?確かに。」


マニが不機嫌そうな表情を。うーん、システム自体見直さないとかなあ。


プルと族長は転移ゲートの設置待ち。降下組が作業を終えてからの瞬間移動になる。先ずは村へ向かった。


到着すると、空中に浮かぶ巨大な船を目の当たりにして、人猫族の村は軽い混乱状態だった。男衆が完全武装で、俺たちの前に立ちはだかった。


「お騒がせして申し訳ない。プルートゥと族長はあの船で待機中です。私は第三者委員会のマサと言います。」


「おお、貴方がマサ殿か。と言うことは、やはりあれがフロートジョイなのですね!噂には聞いてましたが、あのような巨大な物体を飛ばせる技術が凄いですね!申し遅れましたが、私は族長の息子でプルの父親のアッシュと言います。お見知り置きを。」


俺とアッシュは固く握手した。プルと同じく毛だらけでよく判らないが、見た感じ戦士風の御仁だ。人の善さが滲み出ている。


この人(?)も和猫みたいな赤茶色の毛並みだな。黒斑の入り方と言い、プルにそっくりだ。


「上に待たせてあるので、早くゲートを設置したいのですが、族長の家の近くとかに設置できないでしょうか?」


アッシュはうーんと唸ると、ポン!と手を叩いた。


「それなら、裏手の空き地が良いですね。何、母も細かいことは言わないでしょう。案内します。」


俺達は彼に案内されて族長の家に数分で到着した。ログハウス風の木造の家で、以前砂漠に生えていた白樺が使われている。


中には入らずに裏手に回ると、100坪位の面積の空き地がある。確かにここなら便利かな。


「それでは、すぐに設置にかかります。


「分かりました。今、飲み物をお持ちしますね。」


アッシュは、傍らに控えている女性の人猫に指示を出した。俺は次元工房を開き、ゲートを搬出した。


人猫族の村人が目を丸くしているが、あえて無視。(笑) 説明すると時間がね。


クラフトで地面をコンクリートに変質させ、ゲートを置いて接地面を接着する。そして管理者登録。


「網膜パターン認識。管理者登録完了。空間転移ゲート「ブライト・ホール」起動します。」


「転移場所登録。」


「リアクターに触れ、転移先の風景をイメージしてください。」


俺は、19番の正門ゲート外をイメージした。


「登録完了。転移先の名称を登録してください。」


「フロート・ジョイ」


「フロート・ジョイを登録先1に設定しました。」


「登録完了。」


「設定完了しました。オートドライブに移行します。」


流石にアッシュが突っ込みを入れてきた。ウズウズしている姿が、プルにそっくりだ。(笑)


「い、今のはどういう仕組みなんですか?衝立の中に人が居るのか...?」


「いえいえ、これは自動音声です。移動は体験された方が早いですね。此方へ。」


俺はアッシュをゲートの光っている面に触れさせた。一瞬で彼の姿が消える。お茶を持ってきた女性の人猫が固まっている。(笑)


「折角だから、君達はお茶を頂いていたら?俺は族長を連れてきます。」


ゲートで自由船の正門前に戻る。アッシュは既に族長を見つけていた。


「母上、御無事でしたか。」


「何も危険なことなどありませんよ?それどころか、快適極まりない船旅でした。」


「おとうちゃん、温泉が最高だにゃあ!後で一緒に入るにゃあ。」


「温泉って何だ?」


あーあ、親子で話し込んじゃってる。(笑)


「お迎えに上がりました。どうぞ此方へ。」


俺は3人をゲートに誘った。後ろ髪引かれる思いなのか、振り向きながらゲートへ進む族長が笑える。すぐまた来れるんだし、そんな顔しないで。


ゲートに移動先登録をして、一瞬で自宅の裏庭に転移した。嫁達はお茶を立ち飲みしていた。プルがお茶を持ってきてくれた女性に飛びつく。


「お母ちゃん、ただいまにゃあー!」


ああ、あの人がプルの母親か。無口でプルとは対照的な御仁だ。困ったような顔をして、プルを包容している。


と言うか、プルが百数十歳と言ってた気がするんだが、親は何歳なんだろう?親父さんや婆様に直接年齢聞くのは失礼だしなあ。


見た感じが皆若く見えるのは、体毛のせいなのか実際の事なのか。


そう言えば、マニはプルが血の継承をする前はヨボヨボの婆さんだったと言ってた気がするが、老化の原因は年齢以外の理由があるんだろうか。


この両親を見ていると、マニの話からは想像できないくらいの若さ加減に見えるな。後でアズとかにでも事情を聞いてみるか。


プルの頭を撫でて、母親は俺の方を向いた。優しそうな人だな。アッシュも傍らにいる。


「...こんな娘で申し訳ありません。」


「いえいえ、彼女の才能を俺が買っているんです。性格も込みで。寧ろ彼女が居てくれて良かった。」


「...申し遅れました。私はアッシュの妻のヨヴと申します。マサさんの事は、族長からよく聞かされています。大変お世話になっています。」


「こちらこそ。今後もお見知りおきを。」


非常に丁寧で低姿勢な人だ。何故この人からプルが育ったのか?あいつのあの性格は一体...。


「とりあえず此方へ。中で打合せ等しましょう...そう言えば、ラヴィ様は?」


族長が家の中へ誘った。主はさっきまでは実体化されていたのだが?


「ここに居るぞよ。」


ラヴィ様は族長の前に現れた。村の衆が驚いている。主は村人達に向かって語りかけた。


「かなり昔に都で祭られていた者じゃ。御主等もよしなに。」


「おお、畏れ多きことでございます。」


族長以下村の衆は片膝をついて両手を前に突き出した。ラヴィ様は畏れるでないと仰り、普通に接してくれと申された。



さて、族長の家に入ると早速村の戦士達との報告&今後の対応に関する会議が始まった。


「族長、例の物を袋から出すのじゃ。マサよ、分解して消滅させるのじゃ。」


「分かりました。」


「了解です。」


俺達は、主のお言葉通りに実行した。オブジェは光の粒子となって虚空に消えた。参加した村の面々は、驚きの声をあげた。


「いっ今のは、どんな魔法ですか?」


アッシュが突っ込みを入れてきた。俺はいつも通り説明を。(笑)


「...よく解りませんが、マサ殿が凄いことは理解できます。」


アッシュは冷や汗をかいていた。俺の力の片鱗を見せることも、今後信頼のきっかけになると良いのだが。主もそう望んでおられたのだろうか?


「して、現状を確認したい。巨大な虫はその後どう処理したのかの?」


「余りに巨大故に、出来る所から解体しております。資源にもできますので。」


族長が返答した。そう言えば激しい戦いだったのか、体が部分的に欠損している者や包帯を巻いている者も居るな。


俺はラヴィ様の方を見た。主は精神感応で、


「良い、皆を治療するのじゃ。こちらで今後のスケジュールをたてておく故。」


と、俺の心を読んで承諾された。俺は頷いて、プルに指示を出した。


「プル、今から村人を治療するから、希望者を集めてくれないか?」


「分かったにゃ。でも、会議はどうするにゃ?」


「ラヴィ様が纏めてくださる。元々こちらの視察はラヴィ様のアイディアだからね。今は治療師としての務めを。」


「マサ殿、恐れ入ります。場所なら、ヨヴに案内させます故。」


族長が指示を出した。ラヴィ様は引続き会議を続ける事になった。アズは会議にラヴィ様の補佐で残ってもらった。彼女に任せておけば安心だ。


マニとナルは治療の手伝いを。特にナルは亜人に深い思い入れがあるらしく、自分から手伝いを買って出たほどだ。マニも快く引き受けてくれた。


ヨヴは自宅に俺達を案内した。村長の家の隣だった。応接間が臨時の診療所になった。その日は約半日を治療に専念した。


思ったより多くの人が病や怪我で苦しんでいた。海産物と酒を食す人は尿毒(痛風やリウマチ)を患っており、戦士は皆何処かしら怪我をしていた。


この様子を鑑みると、余程に過酷な戦闘だったのだろう。大規模殲滅の時は、俺やナルがいたからな。


この連中だけで、どの位の物量を相手にしたのやら。人猫族の胆力が伺い知れた。俺は愛想よく振る舞いながら、一心不乱に治療をした。



日が陰ってきた頃、最後の客を治療し終えて一時休憩していると、アッシュがヨヴに連れられて入ってきた。


「マサ殿、どんな病気や傷も治療できると聞きましたが?」


アッシュは懇願するように尋ねてきた。怪我でもしているのかな?


「誰が、どのような症状なのか教えていただけますか?」


「実は私の事で申し訳ないんですが、古傷なんです。太腿をドゥイタに噛られましてね...。」


ドゥイタとは、どうも鮫のような海洋生物らしい。特徴を聞いていると、少なくとも近い種類の生物の様に聞こえた。


ナルに視線を向けると、こくっと頷いた。ライブラリーから前次元の生物図鑑を閲覧していたってサットから聞いている。流石学者だな。


古傷は、裂傷を無理矢理縫合した風になっていた。左足の大腿四頭筋近辺が、結構な割合で欠損している。


「そこにお座りください。」


俺は短く指示すると、分子遺伝学クラフトを使った。


「欠損部位再生」


患部が淡く光り始め、やがてまばゆい白き光の塊になった。ヨヴは手で光を遮っている。数分間の治療で、太腿は完治した。


「...私は夢を見ているのだろうか?これで、また現役に復帰できる!」


最初呆然としていた夫妻だったが、徐々に目の輝きが増してきた。ヨヴはアッシュと固く抱擁し合い、涙を流している。プルは大喜びだ。


「マサ、すんごい感謝だにゃあ!お父ちゃんの足が治ったにゃあ!」


ピョンピョンとバク宙しながら、夫婦の周りをグルグル回っているプルが猫ではなく猿に見えるのは俺だけだろうか?(笑)


ここは感動するシーンなんだろうが、プルの動きが猿過ぎてシュールに見えてしまう。マニの方を見たら、後ろを向いて震えていた。(笑)


ナルも、口許がむにゃむにゃしている。きっと笑いを堪えるのに精一杯なんだろう。秀麗な顔のナルがああいう風に笑っているのも珍しいな。


騒ぎを聞きつけて、ラヴィ様と族長が入室してきた。アッシュの回復した足を見て、族長は驚いていた。


「あれまあ、本当に治っていますね。お前、何ともないの?」


「母上、マサ殿は神がかっていますね。この通り、以前以上に動く気がします。」


族長は俺達に頭を下げた。俺はそんな事気にしないでと、族長に頭を上げさせた。


「動ける人が増えるのは、社会的にメリットがありますからね。この治療した事を、活かしてくだされば本望です。」


「マサよ、治療は済んだかの?」


「はい、さっき終わりました。調査の方は如何しましょう?」


「それよ。明日早くに、現場まで出掛けたいのじゃ。一応護衛で御主も来てたもれ。」


「分かりました。では、早朝に出発いたします。」


「うんむ、大義じゃ。」


ラヴィ様は依り代にお戻りになられた。俺は族長に、


「裏庭のゲートは、基本あなたとアッシュさん、ヨヴさん、プルのみが通過できますが、こちらに滞在中は村人全員に解放します。公衆浴場やその他施設を楽しんで下さいね。」


と告げた。村人全員が、何やらどよめいている。


「皆の衆、公衆浴場とは温泉の事です。とても気持ちよかったので、私は皆に勧めたい。中では都並みに店もあるので、飲食も出来ますからね。」


これを聞いた人猫族達は、小踊りして喜んだ。実は親父様と打合せ済みだ。自由船では、一時的な受け入れ準備を整えている。


「族長、一応正門ゲートで村人のチェックをしていただけるとありがたいです。何分物騒なもので。」


「分かりました。顔は全員知ってますので。」


百数十名の村人全員が、ゲートに並んで自由船に瞬間移動した。そして、皆が温泉や店をを楽しんだ。飲食は食材と交換で支払いをしてもらった。


都の解放時、人猫族だけセレモニーには参加できなかったので、それに配慮したつもりだ。族長一家は、自宅の温泉を使ってもらった。


入浴後は、夕食でもてなした。アッシュは酒が強くて、セネル氏と良い勝負だった。


キッチンでアジを一心不乱に食べるプルを、ヨヴが困った顔で見ている。


アズが、今晩こそ魔石契約で悪癖を治すと息巻いていた。無理だっちゅうに。(笑) しかしその晩、プルはとうとう契約させられてしまった。


プルよ、可哀想だが我慢してくれ。万が一呼吸が出来なくなったら、態度を改めれば戻るとか。飯の時間が休憩になってない件。(笑)



次の日、俺はナルや少数の人猫族の連中と一緒に巨大な虫の調査に向かった。解析能力や、自然科学の学術的見解も必要となる為と、ラヴィ様は仰せだ。


アズとマニは一緒に、ライエを魔法学園の初等部に入学させるための筆記試験を受けさせるために、自由船に残った。



...話は2週間前に遡る。学園は232期の募集が始まっていた。ライエは今6歳なので、今期は適齢期になる。


本人、マナのコントロールや魔法が上達したいってね。サット爺さんが、霊格を上げて分子クラフト伝授の方がとか言ってたが...興味ないらしい。


学園は初等、中等、高等部がある。マニは勿論高等部卒で、並み居る同期生と比較しても頭抜けた成績で卒業している。


特に、実践テストにおいて他者の追随を許さなかったらしい。生真面目なアズがべた褒めしている所からも、実力の高さが伺い知れた。


そんな霊的母親を持つライエは、同期生の親には注目の的だそうだ。俺の立場とも相まって、サラブレッド扱いらしい。ちょっと可哀想...。


だが、ともかく実技試験前日はメチャクチャ上機嫌の娘だった。鼻唄混じりで、マニと特訓した成果を俺に自慢していた。


「パパ、パパ、これ見てー?」


ライエは温泉流し場の洗浄スプリンクラーの前に俺を引っ張ってきた。まあ、これ楽しいものね。そして見事に放水が。(笑)


ライエの背が低いので、俺が抱っこして窪みに届かせてやる羽目に。結構な勢いでマナを流していたなあ。


これなら、チェインショック位の魔法は使えるのでは?何かちょっとコワイ...。


それを見たアズが、感心していた。


「あら、凄いじゃない!この歳でコントロール出来るなんて、ちょっと信じられないわ。どれだけの才能を秘めているのかしらね!」


魔法の事になると熱くなるアズ。早速初級の呪文をマニと教え込んでいた。おいおい、危険な事を未熟な者に教えて良いのか...?


「やあねえあなた、こんなに小さいのに被害が出るような魔法を発動できる訳無いじゃない。心配しすぎよ、もう。」


マニは楽観的で、アズも同じ認識なのだろう。マナのコントロールをイメージで教えながら、比較的魔力量の少ないエアフロウを教え込んでいる。


「...エアフロウ!」


ライエの体が少し宙に浮き、やがて不安定ながらも大人の頭くらいの高さを漂う位には使えるようになった。


「パパー、見て見て!飛んでる!」


「おおう!凄いじゃない。早く母様達みたいに飛べると良いねえ。」


「ライエね、パパとマニ母様と一緒に狩りに行きたいの。3人で村のために頑張りたいの。」


うーん、将来的に畑や家畜とかの有機農法で賄う予定なんだよなあ。そっちを覚えた方が...ま、役に立つからいいか。


数時間後には、速度はゆっくりだが自力で10分くらい飛べるように。マニが目を見張っていた。


「うーん、流石私達の子だわ。霊的な遺伝というか、この歳でこれだけチャンネルが開いているのが驚きよ。」


「そうなの?普通はもっとレベル低いの?」


「エアフロウで飛べるのが普通ではないわ。と言うか、呪文が発動しないレベルよ。」


「それじゃあさ、何で実技試験があるのさ?」


「才能のある子に、英才教育クラスへ編入してもらうためのチェックよ。たまに、そういう子も居るのよね。少数精鋭を育成するわけ。」


得意そうにアズが説明してくれた。


「それに、英才教育クラスは将来的にも一緒に活動することが増えるわ。共同研究や害獣駆除とか、実力と息の合った者同士でね。」


「なるほど。」


「切磋琢磨させる訳ね。ただ、この子はその中でも同じレベルの子が居ないかも...。」


「もうさ、俺達で教えちゃえば良いんじゃね?」


「学友も居た方が良いじゃない。大切よ、成長期の友人関係って。」


「はい、そうですねごもっとも。」


マニに論破された俺は、ライエが色々教え込まれるのを膝を抱えて見学していた。ライエ、お願いだから母様みたいに勇者にはならないで...(笑)



...と言う訳で、今日が筆記試験だ。IQテストみたいな事をやらせるらしい。案外教育は進んでいるんだな、この世界。アズのお陰か。


俺は何の憂いもなく虫調査に没頭出来る。ナルは調査研究のためね。そう言う訳で、俺とナルとラヴィ様でゲート前に立っている。


「そう言えばさ、ナルと調査とか初めてだよな。俺、君のそう言う所見たことないな。」


「ん、すぐ見れる。」


「だね。んじゃ行こうかい。」


ゲートで転移すると、既に武装した人猫族の男衆が村の入り口で待っていた。俺達は徒歩で現地に向かうことに。


何故って、ナルの提案で周辺の自然の状況を調査したいから。色々な動植物や地質、有毒ガスの発生状況とか水質etc...。


俺の作った試験管に色々入れている。次元工房でそれを発見したナルは、是非にもと欲しがった。


ラガーの酵母を研究培養するために使ったんだよな。彼女にとっては、都合の良い道具だった訳だ。


強化ガラスの薄い容器を見て、小一時間舞い上がってたっけ。この世界、そっちの方は遅れているんだな。


そんなこんなで、あちこち寄り道しながら半日ほどかけて、俺達は20kmを歩いた。現地到着してみたら、巨大な虫の巣は案の定地下にあった。


「この洞窟が入り口?」


「そうです。地下へ降りるのは、更に数時間かかります。」


アッシュがけろっとした表情で言い放った。ええ...そんなにかかるの?


「我々だけで行くのじゃ。ナルキスは洞窟の途中の調査とかは必要かの?」


「ん、それもやりたい。」


「んじゃあ、優先順位で先に虫を調査しよう。洞窟調査はその後だな。」


「分かった。」


ナルは次元部屋に入った。入り口が突然現れたのを見た村の衆が、目を丸くしている。(笑) まあ、当たり前か。


レイスフォームでラヴィ様と一緒に地面に潜る。数百メートル地下に、巨大な空洞があった。


そして、弾丸で蜂の巣状態の巨大な生物の一部が底部に横たわっている。大きすぎて、全体が見えない。俺が以前倒したのより、約2/3位の大きさだ。


「これはまた、巨大な地蜘蛛じゃのう。今見えているのは胴体の部分かの。」


「ああ、そうですね。でかすぎて何だか判らなかったです。」


底部に着地して、ナルを次元部屋から誘導する。目の当たりにしたナルは、案外タンパクな感じだった。


「ん、大きなスパルチュラ。」


「へえー、こいつはそう言う名前なんだね。」


「あっちでは何と?」


「うーん、日本なら地蜘蛛って呼んでた。こいつさ、気持ち悪いよな。」


「ん?そうでもない。」


「マサよ、御主の倒した巨大カマドウマの方が気色悪かったのじゃ。」


「ああ、あれも相当でしたね...実は子供の頃から、こいつがトラウマなんですよ。」


「御主の実の父親じゃな。不器用というか、不用意な教育だったのう。」


「尊敬出来る所もあったのですがね。幻滅する所も多かったかなあ。」


「人間、と言うことじゃ。人臭い親だったの。」


「そう考えると、ある意味普通だったのですね。あまり良いイメージがないですね。」


「母親の刷り込みも、影響が大きかったのじゃろう。如何にもあの時代の日本人女性、と言う感じじゃな。」


「当たり前ですけど、ラヴィ様にはお見通しなのですね。恐れ入りました。」


「うむ、御主の過去は一通り見てきたからのう。」


「旦那様の御義母さん?」


「うーん、ナルには意味がない話かも。」


「でも、あなたの事は知りたい。」


「後でね。今は目の前に集中しような。」


「分かった。」


ナルは、でかい蜘蛛の生体サンプルを試験管に集めている。体液や体毛、皮膚などの組織を、少量ずつ集めている。


俺はレイスフォームで、心臓の部位を調べた。以前ラヴィ様が取り込まれていたのは、心室の内壁だったからだ。


「ラヴィ様、ありました。」


「やはりな。同じ部位に取り込んでいたようじゃの。心臓周辺を流れる生体エネルギーを利用して、強力な呪印結界を維持しておるのじゃな。」


「すると、単体では効果が出ないか、弱くなると?」


「そうらしいのう。19番村の地下にあった呪物も、高位の合成霊からエネルギーを吸収しておった。」


「ん、あの方が気持ち悪い。」


ナルが採取し終わったらしく、近付いてきた。


「うん、あれも違う感じで気持ち悪いよな。というか此方の比じゃないな。」


「同感。」


「ラヴィ様、特に何かお気付きになられましたか?」


「うーむ、この呪いと虫の巨大化は関係しているのじゃ。この大きいのが母体で、その子供は影響を受けておるのやもしれんのう。」


「何と!では、尚更根源を早く突き止めないとですね。」


「ん、元を絶たないと。」


「マサよ、例の呪物に、御主の対抗ウィルスは効果があるかのう?」


「成る程、流石ラヴィ様です!あの呪いの解析が終われば、あるいは使えるやも知れません。」


「神様スゴイ。」


「むっふっふ、そうじゃろう?」


「真祖の呪いとは違うとサットが申しております。時間をかければ、解析できます。ウィルス製造は、その後ですね。」


「自然界に迅速に広まるように、感染スピードを高めるのじゃ。周辺のコミュニティーの負担も減るであろう。」


「おお、何と慈悲深いお考えでしょう!サットも超乗り気ですよ。」


「うむ、大義じゃ。地上へ戻ろうかの。」


「仰せのままに。」


ナルを次元部屋に入れて、瞬間移動した。地上では、アッシュ達が洞窟の入り口で野営をしていた。


俺はナルと一緒に洞窟の採取作業をお願いした。ラヴィ様は依り代にお戻りになった。


人猫族との共同作業は、地上に戻った昼過ぎから夕方まで行われた。夕飯時に無数の試験管をサンプル用バッグに納めたナルの顔は、満足そうにホクホクしていた。



次の朝、アッシュ達を次元工房に収容して瞬間移動した。本当は昨夜帰還する予定だったのだが。


ナルが早朝に採集、観察できる物があるかをチェックしたいと、昨日の夕食後に言い出したのがきっかけだ。


アッシュ達も、すぐ帰れるなら一晩くらいは大丈夫と言われてしまった。俺としては帰宅したかったのだが。


ライエの件は、恐らく順調だとか。試験結果は教師達が採点するので、後日報告だそうだ。だが、アズは絶対合格と太鼓判を押していた。


メッセージで夜のうちに色々な報告、連絡をマニと取り交わしていた。そんな訳で、午前中の日が高くなる前に村に帰還できた。


ポータルのある裏庭に到着すると、プルが既に待っていた。


「お帰りにゃ。お父ちゃん、ばんちゃんが呼んでいるにゃ。」


「分かった。マサ殿、これからお急ぎの予定はありますか?」


「いえ、重要なことなら何なりと。」


「村の者達が、治療のお礼に食事に招待したいと。満足いただけるかはわかりませんが。」


メッセージで連絡があった様だ。人猫族は義理堅いなと俺は思った。


「うーん、では家族同伴でもよろしければ。呼ばないと、妻達に色々ね。(笑)」


「ああ、それは大丈夫ですよ。今から申し入れておきます。取り敢えず、お茶でも飲んで休憩して欲しいと族長から言われています。」


「ナルは予定があるかな?」


「ん、サンプルをしまえば大丈夫。」


「では1度自由船に帰還して、またお邪魔すると言うのはいかが?」


「分かりました。村長に伝えておきます。」


俺達は、自宅前へ瞬間移動した。玄関でマニとライエが待っていた。


「パパー、お帰りなさい!」


飛び付いてきた娘を抱っこして、マニと包容&キスをすると、俺は食事の誘いの件を妻達に聞いてみた。


アズとマニは2人とも、プルの悪食を知っているから微妙な反応だったが、結局招待されると言うことになった。あくまで善意だものね。


昼食時に、俺達は再び人猫族村にお邪魔した。村長宅の裏庭では、既に準備が整っていた。見た感じ、所謂海鮮バーベキュー方式の様だ。


族長は、近所の集落に用事があるとかで留守らしい。アッシュが代表で食事会前に挨拶した。


「皆、今日は私達の恩人であるマサ殿一家を招いての食事会だ。あれだけの厳しい戦闘で満身創痍の我々を、完璧に治療してくれた恩人に感謝を。乾杯!」


俺の治療を受けた人達で、食事会は和やかに進んだ。各々が、俺の前に来て御礼の言葉をのべた。それをマニが優しい目で見つめていた。


ライエが、目を輝かせている。海辺に来たのは初めてらしい。潮風の匂いが刺激になっているようだ。こう言う浜焼き的な料理も、勿論初めてだ。


浜辺までは少し歩かなくてはなので、海は後日キャンプの時に楽しもうな。今は、海鮮料理を御馳走になろう。


種類は判らないが、魚介類が金網の上でジュウジュウと食欲をそそる音と匂いを発している。もう、プルのよだれが最高潮に。そして...


「クッ...グヘッ!」と言った途端、前のめりに倒れた。あっこいつ、契約魔石に抵触して呼吸できなくなったな?(笑)


「おいプル、違うことを考えてヨダレを止めるんだ!お前死んじまうぞ!」


「ウッ...カハッ!ゼエゼエゼエ...」


プルの呼吸が戻った。そのまま眠るように意識を失った。スキャンしたら、酸欠で意識が一時的に遠退いたようだ。ああ、ビックリした!


「こっこれは...」


村の衆が呆然としている。アズが先日プルの行儀を改めさせるために魔石契約したと説明をした。誰からも反対意見は出なかった件。(笑)


「皆さん、プルが何時もお世話になっています。」


ヨヴが気絶したプルを膝枕しながら、申し訳なさそうに言った。


「いえいえ、うちの主人こそ、何時も仲良くして頂いてます。」


一番面倒をかけられているアズが、そう言って応じた。うーん、俺もそこまで昔の関係を知っている訳ではないけど。


マニの話では躾で一番手間をかけていたのがアズだったらしい。以前から食事マナーが成っておらんと嘆いていたそうだ。凄く解る気がする。(笑)


「娘はこういう性格ですから、あまり友人らしい人が居ないのです。皆さんの話だけは、何時も聞いていますので。」


「友人なんて多ければ善いとは限りませんよ。少数精鋭が分相応の場合もありますから。」


俺なりにフォローをいれた。まあ実際薄く知り合い程度に繋がっているよりは、俺達は深いんじゃないかな。


「皆さんが友人で、本当に安心します。こんな娘ですが、どうぞお見捨て無きように。」


ヨヴは謙虚だった。何故にこの両親からこの娘が?俺は以前からの疑問を聞いてみた。


「こんな言い方は失礼かもですが、御両親を見ているとプルが何故ああいう性格なのかが解らなくなります。」


アッシュが困惑した顔で、


「治療して頂いた古傷を負った当時ですが、我々夫婦は海の危険生物が大量発生して駆除に追われていましてね。娘はまだ幼少で、数年も前族長に預けっぱなしだったのです。」


「前族長?」


「はい、私の父でプルの祖父です。母と共に孫を甘やかしすぎたのが災いしましてね...。母はその責任を感じていて、いまだにプルの躾に厳しいのです。」


いやもう躾ても年齢的に無理な気が...。まあ、そう言う訳だったのか。


「ん、族長プルに厳しい。」


「だよな。いつも頭にたん瘤が出来ているもんな。(苦笑)」


「アズナイル卿には、魔石契約して貰って助かっていると、母が言ってました。」


アズは苦笑していた。自分も苦労したから、族長の気持ちが解るんだろうな。まあこれからの御目付け役で、イメージが悪くては困るし。



俺達はジューシーで新鮮な料理を堪能した。俺の差し入れでラガーの樽を提供したので、皆ほろ酔い加減で楽しい雰囲気になっていた。


ライエは蛤のような貝が痛くお気に入りで、模造の醤油とバターを乗せて美味しそうに食べていた。アズは巻き貝の壷焼きを好んで食している。


そう言えば、日本のソウルフードの刺身が食べたい。流石にこの世界では、生食は無いのかな?


「アッシュさん、此方では新鮮な魚とかを生で食べたりはしませんか?」


「村の古い者の話では、その昔は食べたらしいですね。」


「私の出身地では、薄くスライスした生魚を食す文化があったのですよ。この新鮮な料理を頂いていたら、懐かしくなりましてね。」


「それ食べてみたい。」


ナルが興味津々だ。ああ、ライブラリーで観たのかな?


「私も食べたいわ。マサ、どうやるの?」


マニもチャレンジする気だ。アズは気持ち悪そうな顔をして聞いている。まあ、無理もないけどな。


「アッシュさん、獲れたての魚ってありますか?」


「ええ、此方にたくさんありますよ。」


俺は鮮度をチェックして、青魚風のやつを選んだ。結構でかくて、1m位だ。あれ?海洋生物は普通のサイズに見える。巨大化しないのかな?


海辺に瞬間移動し、シメて血抜きと内蔵を出して海水でよく洗った。会場に戻ると、クラフトでまな板と出刃包丁を瞬時に出した。


余談だが、俺がレイスフォームで瞬間移動する度に、村の衆が呆然としていたらしい。目の前を猛スピードの虫が飛び去っていったみたいな?(笑)


3枚におろして、中骨を分けて冊状に加工し、刺身包丁をクラフトしてテンポ良くスライスしていく。


いつの間にか、その場の全員が集まって作業を見学していた。(笑) 解体ショーになってしまった件。


アズも作業に見とれていた。さっきは微妙な表情だったが、今は楽しそうな顔をしている。


「しかし本当に、あなたは料理が上手よね。前から思っていたけど。」


「ふふーん、そうでしょう先生?」とマニが得意顔に。


「何で君がそんな顔を?」


「えっいや、何となく...」


皆が笑った。ナルは黙って食い入るように手先を見ていた。


「ほい、完成。」


木の大皿の上に魚の頭とか尻尾とかを飾り、海水で洗った緑色の葉っぱを1枚乗せて盛り付けた。即席の刺身盛合せ完成。試食してみたら、バッチリだ。


事前にスキャンしているので、食中毒はないだろう。だが、その場の全員が未経験の為に手を出し辛くて困惑している感が。(笑)


「パパ、これどうやって食べるの?」


ライエが困惑した顔で聞いた。恐らく彼女も初体験だろう。


「この醤油を、こんな感じで少しつけて食べてるんだよ。」


目の前で試食して見せた。うーん、油が乗っていて最高!旨そうな顔の俺を見て、ライエも真似をしてみる。


「あっ、ライエこれ好き!」


味をしめたらしい。(笑) 手が止まらなくなり、夢中で刺身を食べ始めた。それを見ていたナルが、何気に食した。


「!」という顔をして、無言で幸せそうな顔をするナル。そしてラガーをグッと飲んで、「これ好き。」と抑揚の無い感想を。(笑)


そこからは全員がチャレンジして、美味しさに感動していた。俺はワサビも模造クラフトで出した。こっちは大人向けな。


「この緑の香辛料を少し乗せると、また美味しいですよ。でも癖が強いけど。」


「あー、これ私は好き。何て言う香辛料?」


アズもわさび醤油が気に入ったらしい。最初は恐そうに食べていたが、今は盛んに手を出している。


「ワサビって言うのさ。日本のソウルフードだね。」


「鼻にツンと抜ける風味が爽やかで、生臭さを消してくれるわね。本当に、日本という所は食文化が凄いわね!」


アズは、日本食にハマった。マニもライエと一緒に旨そうに食べている。あっという間に刺身は無くなってしまった。


「マサ殿、私達にも調理方法を教えて貰えませんか?村の名物にしたいです。」


アッシュに懇願されて、そこから料理教室に。(笑) 俺の気まぐれが超面倒臭い結果となってしまった。


人猫族達に教えるのも兼ねて、俺は素材選びから教えた。活きの良さの見極め、寄生虫の知識、薄く切る意味、盛付けのコツetc...。


日が傾いてくる頃には、数人が普通に捌ける迄になった。プルを見ていると信じられないが、人猫は真面目で勤勉家だ。


一生懸命さが伝わってくるので、教える側も楽しくなる。職人気質なんだろうな。本気で、何人か自由船に迎え入れたい。



可哀想に、プルが目覚めたのは食事会が終わってからだった。涙目になっていたので、夜食に自宅で刺身を作ってご馳走したらまた呼吸が。(笑)


今度は慣れていたせいか気絶しないで済んだプルは、刺身を慎重に堪能していた。ちょっと気の毒な...アズがそれを見て苦笑していた。


「うっ、うっ、うまいにゃああああああああ!グズッ...」


半べそをかきながら、刺身を旨そうに食べるプル。親友よ、早く普通のマナーを身につけなさい。俺はお前を信じているぞ。(笑)

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