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魔王様とメイド長

話に彩りを添えるメイドさん登場!

猫耳メイドはもちろんよいものですが、忠実さを表現するなら犬耳メイドも悪くないと思うのです。

でも血で血を洗う犬種当てクイズに発展しそうな気もするのです。


そしてラミアのメイドは果たして需要があるのかどうか……。


メイド道の深淵に若干怯えつつ書いた第三話、お楽しみいただけたら幸いです。

「コッヌイ! 全く何をしているのですか!」

「も、申し訳ありません!」

「魔王城に勤める者としての自覚が足りません!」

「申し訳、申し訳、ありません……!」


 メイド長が廊下でメイドを叱り付けていた。

 ラミアである彼女の、ヘビのしっぽが示す先には割れたツボ。

 コボルトのメイド・コッヌイの犬耳は垂れ、真っ青な顔で震えている。


「何や、何の騒ぎや」

「あ! 魔王様!」

「ま、魔王様……!」


 大きなナメクジのような姿を見て、二人は城の主の名を叫んだ。

 そう、このどう見ても初期の町周辺の雑魚にしか見えないそれが、この城の主、魔王その人であった。


「申し訳ありません! コッヌイが、魔王様の大事にされているツボを落として割りまして……!」

「申し訳ありません……!」

「……あー、こら見事に真っ二つやなぁ」

「あ、あの、拭こうとしたら、台から落ちて、その……」

「……さよか。……コッヌイ、怪我ないか?」


 思いがけない言葉に、コッヌイの目が点になる。


「え? あ、はい、怪我は、ありませんが……」

「レヌは?」

「え、えぇ、私も怪我はありませんが、ツボが……」

「……ツボなんかよりも働くもんの身体のが大事や。このツボもきれいに割れとるし、うまい事引っ付けとけばわからんやろ。ま、次から気ィつけてや」

「あ、ありがとうございます!」

「……!」


 許されたと思い、笑顔になるコッヌイに、メイド長・レヌの鋭い視線が向けられる。


「ご安心ください魔王様。二度とこのような粗相をできないよう、これからきつく叱ります」

「ひっ……」


 レヌの硬質の言葉に、コッヌイが喉の奥で悲鳴を上げる。


「あー、ワシも子どもの頃、お父んの大事にしとる花瓶、汚れとったからきれいにしたろ思うて割ってしもた事があったなぁ」

「え、あ、はい……?」


 いきなり話が切り替わり、目を白黒させるレヌ。


「お父んにごっつ怒られてなぁ。でも何があかんかったか分からんかった。お父んに喜んでもらお思ただけやったからなぁ」

「はぁ……」

「んでその後お父んに機嫌直してもらお思て、今度は石像倒してまた怒られてなぁ。理由を言うてくれんから、同じ事やらかしてしもたんや」

「!」


 魔王の言わんとしてる事を理解したレヌは、ハッとしてコッヌイを見た。

 怯え、震えているその姿に、ふっと息を吐き、肩の力を抜く。


「お母んにワシの手ぇはぬるぬるしとるから、壊れもんの掃除に向かんって話してもろて、ようやく分かったんや」

「魔王様……」

「その後はお風呂掃除で大活躍や。このぬるぬるの手ならピカピカになるで?」


 明るく笑う魔王に、場の空気が緩んだ。

 魔王の触腕が、表情の緩んだコッヌイに伸びる。


「ほらぬるぬるやで? 触ってみ?」

「あ……、はい」


 微笑んでその手を取ろうとするコッヌイ。

 二人の手が触れ合おうとするその刹那。


「魔王様、セクハラです」

「手ぇ伸ばしただけで!?」


 どこからともなく現れた側近の吸血鬼・ラーミカの言葉に、魔王はコッヌイに伸ばしていた触腕を引っ込める。


「まさか魔王様がクソザコナメクジではなく、セクハラドスケベゴミクズゲス野郎クソザコナメクジでしたとは……」

「弁護士ィー! 無実の罪に対して罵倒が長いし濁音多い!」

「今後その触腕、若い娘の前で出すの禁止です」

「ワシの手そんなに卑猥!?」


 二人のやり取りにレヌは表情を緩め、魔王に頭を下げる。


「……承りました。罰ではなく対策を相談いたします」

「頼んだで。えぇ対策見つかったらみんなにも教えてや」

「はい」


 深々と頭を下げるレヌ。

 コッヌイも慌てて頭を下げる。

 魔王はラーミカと共に立ち去った。


(魔王様はコッヌイだけでなく、私も叱らずに、しかも新たな道を示した……。『弱さを知る者』の二つ名は伊達ではありませんね……)


 魔王が廊下の角を曲がったのを見送ると、レヌはコッヌイの頭を撫でる。

 コッヌイは驚いた顔でレヌを見上げる。


「さ、ツボを拾って、直せるかどうかやってみましょう。そしてその後は……」


 レヌは暖かくにっこりと微笑んだ。


「お茶でもしながら、対策を考えましょう」

「はい!」


 涙を吹き飛ばすようなコッヌイの元気な声が、魔王城の廊下に響いた。

読了ありがとうございます!


卑猥、かなぁ……?

挿絵(By みてみん)


注意をするなら改善策と共に、は意外と忘れてしまいます。

子どもへの注意は、特にそうですね。

「やっちゃダメ!」に「こうなると危ないから、次からはこうしよう」を添えると、再犯率は結構下がります。

瞬時にその場に適した対策を考えるのは大変ですけどね……。


さて、割れたツボの行方は!

次話もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] メイドに触手とか卑猥以外の何物でもない。 可愛く描いても卑猥なものは卑猥なのです。 ところで魔王様が犬耳メイドを触手で慰めているイラストはどこですか?
[良い点] 魔王様のキャラクター好きです。 口調もとてもマッチしていて、拝読していて笑顔になって癒されます。 二つ名にドキッとしました。 この二つ名とても好きです。 クソザコナメクジの魔王様が慕われ愛…
[良い点] ラミアのメイドさんにコボルトのメイドさんですか、良いですね……すべすべ尻尾に締め付けられたり、尻尾や肉球をもふもふやぷにぷにしたり……ラーミカさんに辛辣に罵られそうですが(笑) 弱さを知…
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