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魔王様と結婚願望

お待たせしました!

書きたいものがたくさんあって、でも表現する力がクソザコナメクジで、時間がかかってしまいました!


今願いが叶うなら、翼とかいいから時間がほしい。

あと富とか名誉もほしい。


流れ星が黙って首を横に振るレベルですが、気にせずお楽しみください。

「魔王様」

「おー、ロクド」


 ローブをまとったガイコツがうやうやしく頭を下げる。

 彼はリッチのロクド。賢者の遺骨から生まれた高位の魔物で、その知恵と魔力は群を抜いている。


「本日もお変わりないようで、このロクド、心より嬉しく思います」


 そのロクドが魔王と呼んで最大限の礼を表したのは、中型犬程度の大きさのナメクジだった。

 魔物の格も強さもロクドの方が明らかに上だが、彼はナメクジの魔王に心からの敬意と忠誠心を抱いていた。


「ロクドの調子はどないや?」

「おかげさまで、特に問題はありません」

「さよかー。そら何よりや」

「魔王様はどちらに?」

「ぼちぼちと巡回や。ホール回って厨房見て、後工房にも顔出そかなと思うとる」

「でしたら途中までご一緒してもよろしいですか?」

「もちろんや!」


 ロクドは魔王のゆったりとした歩みに合わせながら、世間話のように軽く話しかける。


「そういえば魔王様に聞きたい事があるのですが、よろしいですか?」

「? かまへんよ。何や?」

「魔王様はまだ妃を迎えられないのですか?」

「最近みんなそれ聞くなぁ。何でなん?」


 頭をひねる魔王に、ロクドも首をひねる。


「いえ、後継ぎの事を考えましたら、妃を迎えるのが当然かと」

「後継ぎなぁ……。ちょっと考えとる事があるから、今はまだかなぁ」

「あぁ、五年後ですか」

「? 何の話や」

「いえ、人間のメーフィ姫を妃に迎えるのかと」

「ちゃうちゃうちゃう!」


 大慌てで触腕を振る魔王。


「え、何!? 見てたん!? 聞いてたん!?」

「メイド長のレヌ殿に『面白い事になっている』と誘われたので、玉座の間をのぞいておりました」

「正直者ォー! あ、あんな、あれは、その、ちゃうねんて。泣かさんようにして、時間を置いて、こう、気が変わらんかなーって……」

「そうだったのですか。約束と言う形で安定させない事で姫の記憶に長く残し、五年後再度約束を持ち出させる高度な戦術だと感服していたのですが」

「え!? はたから見てたらそんな感じ!? どないしょ……。メーフィに泣かれる……。オイラエにどつかれる……。ラーミカに怒られる……」


 魔王の触腕が頭を抱える。


「その点に関して言えば、オイラエ国王に話を通しておけばよろしいのでは? それとなく姫の意識を結婚から逸らすようにと」

「それや! さすがはロクド!」

「もったいないお言葉」


 喜ぶ魔王に、ロクドは更に言葉をかける。


「褒美がわりと言っては厚かましいのですが、魔王様のお考えというものを聞かせていただいてもよろしいでしょうか?」

「……世襲制の廃止や」

「!」


 魔王の言葉に、ロクドは少なからず衝撃を受けた。


「……随分と思い切った事をお考えで」

「前々から考えてはおったんや。何の力もないワシに、みんなと触れ合える機会を与えてくれた世襲制には感謝しとる。でもワシの子ォまでそれがえぇ形になるかはわからん」

「それで世襲制を変えてから、結婚やお子様の事を考える、と」


 ロクドの問いに頷く魔王。


「せや。その前に子ォが生まれたら騒動の種になるからな」

「という事は、選挙などによる代表制を敷くのですね」

「せや。本当にみんなから慕われ、力のあるもんが魔王になれるようになー」

「そうなると魔王様の再選待ったなしですが」

「ははは。ロクドも冗談言うんやなぁ」


 魔王は機嫌良く笑った。


「ほなワシこっちやから」

「お気をつけて」


 魔王が廊下の角を曲がるまで見送った後、ロクドは息を吐いた。


「ラーミカ様。これでよろしいですか?」

「えぇ、面倒をおかけしました」


 虚空から現れたラーミカが、ロクドに労いの言葉をかけた。


「しかしなぜこのような回りくどい事を? ラーミカ様が直接聞けばよろしかったのでは?」

「メーフィ姫の件があったので、私が聞くと詰問と勘違いされる恐れがありましたので」

「確かに。では結婚の意思を確認した理由は何ですか?」

「魔王様がお妃を望むのであれば、側近として適切に対応しなければなりませんからね」

「……」


 ロクドは知っている。

 この話以前にも魔王への求婚者に対して、ラーミカが面接を行っている事を。


『魔王様のために全てを捧げる覚悟はあるのですか?』

『はい!』

『では三日以内に三親等以内の身内の財産全てを持って来なさい』

『えええぇぇぇ!?』


(適切とは一体……)


 魔王の妃となれば様々な重圧や責任が生じるが、それにしても少々やり過ぎではないかと思う部分がある。


「何か?」

「いえ、何でもありません」


 しかしロクドは魔王城一の知者。

 魔王を守るために行っているであろう行為をとがめて、自分を危うくするような真似はしない。


「魔王様が魔王様である限り、ご結婚はされない。この情報はそれとなく城内に広めておくようにお願いします」

「……承りました」


 ラーミカが消え、ロクドはこっそりと溜息を吐く。


「罪作りな話だ……」


 そう呟いたロクドは、文官長としての仕事へと戻っていった。

読了ありがとうございます。


魔王の野望が明らかになりましたが、果たして部下達はどう受け止めるのか。

ロクドの言う通りになりそうな気もしますが。

今後ともよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ラーミカさん、面接の内容がエグくていいですね(笑) 選挙制にすると、魔王様が存命中はずっと魔王様が選ばれ続けて、あれぇ?ってことになりそうです。 それだけ好かれているということですが、自…
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