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少女奮戦記~アイン・ソフ・オウル~   作者: PONぽこPON
第4章~共和国編~
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海戦阻止

「敵艦隊、領海に侵入します!」


 王国海軍、連合艦隊旗艦インヴィンシブル号の艦橋に報告が入った。


「共和国の連中は、どうやら我々を舐めているようだな」


 艦隊指令、ハウ提督は歯噛みをする。既に艦隊は戦闘準備を終えている。後は一言命令を下すだけで、共和国の艦隊を海の藻屑に変えてやれる、そうハウ提督を含む王国艦隊の首脳陣は考えていた。


「共和国も、何もわざわざ負けに来た訳ではありますまい。何か策を持っているかと」


 インヴィンシブル号の艦長がそっと進言する。艦隊規模では、共和国へ派遣していた艦隊と合流した連合艦隊の方が大きい。莫迦正直に正面から挑んでくるとは考えにくかった。


「共和国へ派遣した艦隊が、飛竜に襲われていたな。連中、飛竜を兵器として扱うようになったか」


 元来、人の脅威として恐れられている飛竜である。いかに王国の誇る連合艦隊とて、敵艦隊と同時に戦うには多大な困難が予想された。


「対空、対海中見張りを厳とせよ。竜の接近を許すな! 艦隊……」


 戦闘開始、とハウ提督が言いかけたところで、報告が邪魔をする。


「本土より高速で接近する騎体があります! 騎体照合! 近衛第三王女近習所属騎!」


「あぁ、殿下肝煎りの例の騎体か?」


 ハウ提督も、その騎体のことは聞き及んでいた。


「何をしに来た? 殿下の勅命か?」


 その時、戦場全域に魔導通信が響いた。





「共和国艦隊へ告ぐ! 直ちに進路を変更し、帰還せよ!」


 マヤはアインの魔導通信機の出力を最大にして、共和国艦隊へと警告を発する。既に魔導炉は高出力で運転しており、膨大な魔力により戦場全体へと彼女の声を響かせる。


「これは警告である! 従わない場合、相応の措置をとる!」


 既に、命令を受け作戦行動を開始している戦闘部隊に、敵から戦闘を止めろと言われて、止める莫迦はいない。

 であるなら、作戦行動を中止せざるを得ない状況を作ってやる必要がある。マヤの目的は、その状況を人死にを出さず作り出すことだ。でなければ、アリシアに自分の身を捧げていた方がマシになってしまう。それだけは許せない。

 共和国艦隊の上空で直掩にあたっていた魔導騎兵が、急速に接近してくる。


「拘束」


 マヤが術式を流し込み、魔法を発動する。

 たちまちに魔導騎兵は魔方陣に囲まれ、その行動を拘束された。

 その魔法の発動を合図にしたかのように、共和国艦艇が次々と発砲を開始する。

 王国艦隊も応戦を始め、砲撃を開始した。


「勝手に始めるなァッ!」


 引き金は自分の魔法であるため、我ながら滅茶苦茶言ってるなと思いつつ、マヤは魔法を使用する。

 両艦隊の中間に長大な不可視の障壁が形成された。作り出したのはマヤが使用した障壁の魔法である。アイン・ソフ・オウルからの魔力を大量に注ぎ込み、艦隊を分かつ巨大な障壁を現出させた。

 お互いが放った砲弾が空中で障壁に激突し、爆発する。


「共和国艦艇へ。これより我が力の一端を示す」


 これから行おうとしていることは、明確に自身が脅威となることを表すものだ。

 共和国どころか、王国からすら恐れられ、迫害される可能性すらある。

 それでも、ここで戦争を起こさせない方法は、自らが抑止力となることしか思い付けなかった。

 マヤは覚悟をきめた。


「共和国旗艦、サヴォアを撃沈する」


 共和国艦艇の中でも、特に巨大なその艦影を見下ろし、冷徹に宣言する。


「空間把握」


 巨大な戦艦サヴォアを、一呑みにするほどの魔方陣が艦を中心に展開する。

 マヤはサヴォアの全乗組員、2,335人の位置を把握する。


「転移」


 その乗組員を全員一気に、近くの魔導騎兵母艦の甲板上へ転移させた。


「魔器具現」


 かざしたアインの左手の先に、ゆらりと光の槍が具現化する。


「拡大『鋼巨人の槍』」


 光の槍がぐっと拡大し、アインの全高の数倍の長さと太さを持つ巨大な光の塊となった。

 アインはその光を左腕の射出槍に纏わせる。アイン自体が、巨大な光の槍となったような姿だ。

 マヤは目を閉じて魔法を行使し、ゆっくりと目を開いた。

 微かに手が震えるのを、ぐっと操縦桿を握り来んで押さえつける。


「行きます!」


 叫び、アインを加速させた。一気に高度を上げ、サヴォアの上空に位置取りをする。

 そのまま急降下、サヴォアの主砲塔を目指し突っ込む。


「撃ち抜けェェェェッ!!」


 一条の光となって、アインは突っ込んだ。

 強靭な主砲塔天蓋の装甲板に激突し、一瞬の抵抗の後、そこを貫通。艦体を貫いて海中に飛び出したアインは、ゆっくりと上昇に転じた。

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