表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女奮戦記~アイン・ソフ・オウル~   作者: PONぽこPON
第3章~暗殺者編~
55/93

事態急変

「うッ……」


 ジャックは、微かに呻き目を開けた。


「……俺は生きているのか……」


 ナイフの一撃は、かなり深かったのを覚えている。それなのに今身体に痛みは無い。四肢を拘束されている感覚だけが、ゆっくりと感じ取れてきた。


「致命傷だったんだがな……」


 マイヤーが気づき、声を掛ける。


「感謝するんだな。どうしてもお前と話がしたいそうだ。マヤが魔法で生き返らせたも同然なんだぞ」


「ジャックさん!」


 着替えたマヤがジャックの元へ急いでやって来る。


「何やら借りができたみたいだな」


 ジャックが視線をマヤに向け、どこかぼんやりとした声で話しかけた。


「話を聞いてやる約束だったな」


「やっぱり、殺しは止めてもらえませんか?」


 マヤが切実な声で訴える。


「あいつが喜ばない、だったか……」


 ジャックは、マヤが以前言ったことを思い出し、寂しそうに呟いた。


「そうかもな。あいつは優しいやつだ、お前に似てな」


「じゃあ」


「だがな、あいつを死に追いやったこの国の貴族共が憎いのも変わらない」


 ジャックは視線を宙に向ける。どこかに逡巡があった。


「結局は、復讐にかこつけた、俺の自己満足だったのかもな」


「あなたが何人殺しても、それであなたも不幸になっていきますよ……」


 だって、あなたは人を不幸にしていることに気づいてる、マヤはそう続けた。


「貴族共がいくら不幸になろうがかまやしない、そう思ってたんだがな……」


 まあ、捕まっちまったことだし、これ以上の殺しは無理かな、と意外に明るくジャックは呟く。


「たぶん死罪だろうしな」


「そう……なんですか?」


 マヤはマイヤーをすがるように見て尋ねる。


「でしょうね、ただ、これまでの所業に証拠がなければ、今回の暗殺未遂だけなので死罪は免れるかも知れませんが」


 マイヤーはマヤを気落ちさせまいと、希望的観測を口にした。


「そうしてもらえるように、殿下にお願いを……」


 マヤが口にしかけたところで、部屋の中に不意に魔力の奔流が出現し、その中から人影が現れる。


「あらあら、大口叩いておいて、結局はこのザマかしら」


「アリシア!」


 魔力の中から現れた人物にを見て、マヤとジャックの声がハモる。


「もうちょっと楽しませてくれると思ったんだけれど、残念、ざ~んねん」


「あんた、またフザケたマネをしてくれたわね!」


 マヤが激昂して叫ぶ。


「私はフザケてないわよ。いたって真面目にゲームを楽しんでいるだけ」


「それがフザケてなくて何だと言うの!」


 アリシアは不敵に笑い、マヤを指差す。


「あなたも不完全燃焼でしょう。暴れ足りないんじゃないの?」


「フザケるのも大概にしなさいよ!」


 怒るマヤを尻目に、アリシアは勝手に話を続ける。


「そんなあなたに、クライマックスを用意して上げたわ。さあ、全力で立ち向かいなさい」


 アリシアが両手を掲げ、魔力を宙に打ち出した。咄嗟に、その場にいた全員が身を伏せる。

 しかし、なにも起こらず、しばし静寂が訪れた。やがて王都各所から、警報を示す鐘の音が響いてくる。

 工廠の魔導通信機が、緊急通報をがなり立てた。


『飛竜警報! 飛竜警報! 即応可能な魔導騎兵は直ちに迎撃に移れ!』


「さあ、頑張らないと、王都は明日の朝には地図の染みになっちゃうわよ」


 わざとらしく片目をつむり、頑張ってねと投げキスをして、アリシアは姿を消した。

 咄嗟にマヤはアインの元まで走り出す。


「待ちなさい! あなたまだ怪我してッ!」


 マイヤーが叫ぶが、マヤは振り返らずに叫び返す。


「大丈夫です! 魔法で治ってます!」


「うわぁッ!」


 途中で飛び出してきたトールとぶつかりそうになった。


「っと、マヤちゃんだったすか。ちょうどいい、アインに新装備着けたとこだから、説明するっすよ」


「新装備?」


 走りながら、二人は会話を交わす。


「アインの左腕に槍の射出機構を取り付けたっす。射出って言っても、8メルテくらい槍が伸びたら、元に戻るようになってるっす。魔力は補機の戦乙女の手投げ槍から取ってるから、かなりの出力があるっす。連続して使えるっすよ」


「えっと、杭打ち機みたいなもんですか?」


「そんなもんっす、すんません、テストもなしで」


「ぶっつけ本番でやれるだけやってみます」


 会話を終え、マヤはアインの操作席に飛び込んだ。

 魔導炉を立ち上げ、騎体の各部に魔力と術式を行き渡らせる。


「第三王女近習、マヤ・ミズキ三等陸尉、発信準備完了!」


 報告後、直ぐに王都防空指揮所から返信がある。


「ミズキ三等陸尉、発進よろし! 飛竜は海側から接近中、各個の判断で迎撃に当たられたし!」


 マヤは、アインを工廠から出すと、騎体各所の魔導推進機に魔力を込める。


「発進します。整備の方は下がってください!」


 そう言うと、マヤはアインを大空へ飛翔させた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ