表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女奮戦記~アイン・ソフ・オウル~   作者: PONぽこPON
第3章~暗殺者編~
47/93

日常

 ある日、近衛の工廠に設けられた待機室で、マヤは金属の板とにらめっこしていた。


「なにやってんだぁ一体?」


 書類を届けに来ていたマクダニエルが、不思議に思い声をかける。


「魔導反応装甲の術式、改良できないかなって思って」


 マヤが、金属板に術式を送り込みながらそう答えた。金属板は魔導反応装甲の試料片だった。


「障壁の魔法が受動発動するよう術式が施してあるんだろ? どう弄る気だ?」


「操作席側からの操作で、任意でも発動できるように出来ないかなって」


「そんなことして、何かいいことあるのか?」


「全力で障壁張る時とかに同時に張れると、あたしが少し楽になります」


「そもそも、全力で障壁張る事態を避けようや……」


 若干呆れつつ、マクダニエルは忠告する。


「もう少し、逃げるなり避けるなりしても罰は当たらんぜ」


「そうは言われても……避けられないことも有りますから」


 そう言って、またマヤは熱心に金属板に術式を送り込む。


「まあ熱心なのはいいが、書類の処理はしといてくれよ」


 どっさり積まれた書類をぽんぽんと叩き、マクダニエルはニヤリと笑う。


「さっさと処理しねぇと、支払い期日に間に合わねぇ」


「会計局はおっかないですからね」


 マヤも笑い返す。会計局は支払業務を行う部局で、軍の財布を握る最強の部局として様々な部局から恐れられている。書類不備にはいつも厳しい態度で当たってくる、融通の利かない部局として名高い。

 何時の世も金を握っている所は強いのだ。


「先に処理しちゃいますか」


 漸く金属板から視線を外し、書類に目をやるマヤ。


「頼んだぜ、何せ数が多いからな」


「魔導騎兵って金食い虫ですね、ホントに」


 書類を捲りながら、思わずぼやく。


「アインはむしろ安く済んでる方だ。近衛の正規採用騎なんか倍は掛かる」


「なんでです?」


「嬢ちゃんが動かすときに、構造強化の魔法を併用してくれてるお陰でな、間接やらフレームの消耗が押さえられてる」


 その代わり魔力伝達管の消耗は早いがな、とマクダニエルはニカッと笑う。


「費用的には魔力伝達管の交換の方が安いんだよ、整備も楽だしな」


「あ、そうだったんですね」


 マヤが構造強化の魔法を併用して動かしているのは、最初に使った案山子がボロだったため、構造強化を使わないとまともに飛竜とやり合えなかったからだが、それが以降癖のようになってしまっているからだ。


「構造強化使っておくと、殴り合いになった時とかに踏ん張りがきくので」


「そりゃあ大事だがよ、良く戦闘しながらそんな魔法を行使できるよな」


「先生に教わってるときは、10個くらい同時に行使させられましたから……」


「……俺は魔導士じゃないからなんとも言えんが、それ、地味にとんでもねぇ事じゃねぇのか?」


「たぶん、そうなんでしょうね……実感あまりないですけど」


 鼻の頭を掻きながら、マヤは自信無げに答える。


「さすがに、戦闘しながら10個なんて無理ですけど」


「いや、普通戦闘しながら複数行使ってだけで、相当難易度高いんじゃねぇのか?」


「案外、慣れればどうってことないですよ?」


「そりゃ嬢ちゃんだけだよ」


 ガックリと肩を落とし、マクダニエルはマヤの無自覚に呆れて見せる。


「まあいいや、邪魔したな。書類は処理しておいてくれや」


「はい」


 返事をしたマヤは書類に向き直り、覚悟を決めて書類と格闘を始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ