王都防衛戦
『次の機会に、必ず尻尾を掴みます』
アンダースンの決意に満ちた声が、アインの魔導通信機から聞こえる。
『傾向からして、そろそろ、人口の多い都市を狙ってきそうですからね』
相手が王権に対して、何らかの打撃を与えたい、と思っているなら、そろそろ大都市を狙ってくる、と言う読みであった。
「あたしはどうすればいいんでしょうか?」
『いつも通り、飛竜を撃退してください』
尋ねるマヤに、アンダースンはあっさりと答える。
『ただ、こちらの作戦は発動される、と覚えておいてください』
「分かりました」
マヤは通信を切り、溜め息をつく。よし、と気合いを入れた。
いよいよ、受け身から攻め手へと切り替えるのだ、やる気が出てこない訳はない。いつの時代でも、人、特に若者は積極的な行動を好むものだ。マヤとて例外ではない。
「後は、あたしがどれだけアインを使いこなせるか、だけね」
マヤに任された仕事は、飛竜を素早く撃退すること、それだけを考えれば良いのだ。
「あの時の力が、自由に使えればいいんだけど」
あの黄金の魔力が溢れたのは、あの謁見式の時だけだ。その後は何度やっても、思うように行っていない。
「どうすればいいのかなぁ?」
一人悩むが、答えは出ない、実戦で答えを見つけるしかなかった。
「やれることをやれる限り、やるしかないよね」
うん、と気合いを再度入れ直して、マヤは操作室を出た。
翌日早朝、休息時間中であったマヤを含むアードバークのクルーにも召集がかかった。
『飛竜の大群が王都を目指し進行中』
基地に鳴り響く警報と魔導通信から流れる言葉を聞きながら、出撃の準備を大急ぎで行う。
マヤは格納庫にて待機状態のアインの操作席に、飛び込むように乗り込んだ。
魔導炉を立ち上げ、出力を上げていく。
『各魔導騎兵は直ちに出動、直接迎撃に当たれ』
魔導通信が指示をがなりたてる。と、そこへ、アードバークから通信が入った。
『曹長、アードバークは空中退避を行う。王都は頼んだ』
モリスンが神妙な口調で告げてくる。
「はい、気を付けてください。幸運を」
マヤが返答を返すと、モリスンは何時もの口調で投げ返してくる。
『幸運が必要なのはお前さんだろ、死ぬんじゃねえぞ』
「はい!」
マヤは視線を上げる。騎体の外で整備員達が腕を振っていた。
『ミズキ曹長、発進よろし』
管制塔から指示が来る。
マヤはアインの左腕を上げ、整備員達に答えると、騎体を格納庫から外に出した。
アインの魔導探針儀にも、多数の飛竜の反応が写る。
その数に一瞬たじろぐが、気持ちを押さえ込みグッと前を見る。
「ミズキ曹長、発進します!」
アインを空中に一気に飛翔させる。
『迎撃に上がった各騎に告ぐ。竜の数が多い、王都防空指揮所が管制を行う。各騎は指示に従え』
王都各所の基地には、先日の飛竜の襲撃を教訓に戦力の増強のため魔導騎兵が追加で配備されていた。
そこから緊急発進した、所属も装備もバラバラな騎体を、一元的に指揮することで効率的な迎撃を行おうと言うことだ。機転の利く誰かが居たらしい。
「アンダースンさんかな?」
ふと、マヤは思い至る。どちらにしても気は抜けない。
『ミズキ曹長は南方面の後詰めに当たれ。2騎先行している、その援護だ』
「ミズキ曹長、了解しました」
マヤは指示に返答し、騎体を南に向けた。
視線の先で魔力光が走った、先行騎体が攻撃を開始したようだ。
マヤはアインを加速させ、右腕の魔導砲の射程にまで戦場へ接近する。
前衛の2騎は、数の多い相手に一撃離脱を心掛け、確実に数を減らす作戦のようだった。
マヤは遠距離から前衛に翻弄され動きの止まった飛竜を、追尾の術式をかけた魔力弾で狙い撃っていく。
今のところ、迎撃は順調そうに思えた。




