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エース!?

『お疲れさまでした』


 飛竜を撃退し基地に帰投したマヤはアインの操作席で、早速アンダースンから通信で労われていた。


『30メルテ級の火吹き竜ともなると、なかなか手強い相手ですからね、それを苦もなく倒すとは』


 恐れ入りました、とアンダースンは笑って見せる。


「いえ、苦戦はしました。アインの性能に助けられてもいますから」


 あたしだけの力じゃ無いです、とマヤは素直に打ち明けた。


『それでも大したもの、なんですよ』


 そうアンダースンは続けると、口調を真剣なものに改める。


『やはり、地域の魔素の濃度が上昇していることが確認されました。例の装置が使われていたのは間違いないようですね』


 謁見式で、ヴァルキュリエに積まれていた飛竜を操っていた装置、それと同じものが使われていたと言うことのようだ。


「犯人は捕まらなかったんですね」


『魔素の流れを追っていたのですが、途中で装置を切られたようですね』


「そうですか……」


 マヤは溜め息をつく。早く真犯人を捕まえたいのだが、なかなか相手も証拠を残していないようだ。


「次はもう少し粘って戦闘を続けましょうか?」


『いえ、それでは貴女と周辺の街に危険が及ぶ可能性が高くなります。貴女は早く飛竜を無力化することだけを考えてください』


「分かりました。差し出がましい真似を致しました」


 マヤは提案の思慮の足り無さを自覚し、自分を罵りたくなっていた。自分の心配までされてしまっては、返す言葉すらない。


『では、充分気を付けてください』


 と、通信が切られる。


「あぁ、なんだかなぁ」


 何とも言われぬもどかしさに、思わず声が出た。


「よう、天才操者さん、元気無いじゃないか?」


 アインの操作席の前に渡された作業用通路に、不意に誰か現れた。


「モリスン三尉!」


 咄嗟に立ち上がって姿勢を正そうとし、操作席の天井に頭をぶつける。


「あ痛!」


「おいおい、大丈夫か?」


 思わず、モリスンは手を出してマヤを支えた。


「大丈夫です、頭は昔から固いって言われてますから」


「いや、騎体の方だが」


 にやっと笑ってモリスンが嘯く。


「後で整備の人に見て貰っておきます」


「冗談だよ」


 真面目な表情のマヤに、モリスンがくだけた声色で突っ込んだ。


「それはそうと、どうした? 飛竜を一体撃退だ、もう少し誇ってもいいんだぞ?」


「ありがとうございます。ですが、ここは謙虚にしておこうかな、と」


 控えめにマヤは言った。先ほどのアンダースンとの会話が、まだ頭から離れていない。とても喜べる気分ではなかった。


「初撃退だろ?もう少し喜べよ」


「撃退数だけなら、若竜を入れて18体目ですが」


「はぁ!?」


 モリスンの口が魚のようにパクパクした。

 当然と言えば当然である。マヤの評判は国王を守った事で知られているからだ。まさか、誰も十数体の飛竜を一撃で吹き飛ばしたとは思われてもいなかった。


「おま、18って、エースもエース、トリプルエースじゃないか!?」


「そうなんですか?」


「そうだよ! 何者だお前!?」


「ただの田舎出身の小娘です」


「嘘こけ!」


 モリスンが全力で否定する。


「ただの小娘が18体も飛竜を倒せるか!」


「アインの性能のお陰です」


「この魔導騎兵だって、軍の試験用の払い下げだろうに!」


 モリスンは天を仰いだ。


「なにか? お前さんは天命を受けし勇者とかか?」


「だったらよかったんですけど、ただの新人ですよ」


 はあ、とモリスンは溜め息をつく。


「まあ、冗談だよな。最近の若い奴は冗談がキツくていかんな」


「ははは…」


 これ以上話しても信用を損なうだけだろう、と気づいたマヤは曖昧に笑って誤魔化す。


「まあいい、今からは待機明けで休息時間がある。部下達が撃退祝いで軽い食事会を用意しているから顔を出しな」


 酒は無しだがな、とモリスンはマヤに片目を瞑り、笑いかける。


「はい、お邪魔します」


「間違えるな、お前さんが主役だからな」


 よろしくな、と言い残しモリスンはアインから離れた。


「勇者、か…」


 ふふっと笑みが溢れる。やりたかった事を今やれている、マヤはそんな満足感に浸っていた。

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