工廠にて
「折角の訓練だってのに、なんであの力を使わなかったんだ?」
マクダニエルが、アインの操作室で伸びているマヤに問いかけた。
「あの力? ですか?」
「ああ、例の竜を纏めてぶっ飛ばした時の力だよ」
「あ、あれですね……」
マヤは合点がいったと頷く。
「あれ、何故かあの後何度試しても、あんな出力出せませんでしたよ」
訳が分かりません、といった様子でマヤは答える。
「ただ、何か意思のようなものがあった気がします」
もしかしたら、本当に必要な時にしか出せないのかも、とマヤは自分の考えを伝えた。
「自在に操れねぇってことは、つまり、無ぇってのと同義だぜ」
マクダニエルが乱暴に呟く。
「それに、意思だぁ? 魔導具が意思を持ってるなんざ、それこそ神話の時代のお伽噺じゃねぇか」
「アイン・ソフ・オウルって聞いたことありますか?」
マヤが唐突に尋ねた。あの時、無意識で発した言葉だった。
「あぁ? 聞いたこたぁねえが……」
腕を組み考え込むマクダニエル。
「それがあの魔導炉の核になってる魔導具だと?」
「たぶん、そうじゃないかな、と」
「どっちにせよ、相当な代物のようだからな、上手く使えばそれこそすげぇ力だぜ」
「上手く使えれば、ですけどね」
マヤが自嘲気味に溜め息を漏らした。
「現状、使い方が分かりませんから」
「まあ、何度も挑戦して、データを取るしかねぇか……」
マクダニエルも打つ手無しといった様子だ。
「今日の特訓で、嬢ちゃん追い込めばあるいは、とは思ったが、なかなか上手くいかんな」
「やっぱり、追い込むつもりだったんですね」
マヤはムッと唇を尖らせる。
「まあ、そうむくれるな、訓練にはなったろう?」
「そりゃあ大隊指揮官から直接指導を受けるなど、滅多に無い貴重な体験でしたけれども」
現役の魔導騎兵操者の技量を我が身で体感できたことは、よい経験であったことは確かだった。
「魔導炉の定格出力であれだけ動ければ、当面の任務にゃ支障は無かろう」
「それもそうですが……」
「後、補助魔導炉として積んだ魔導炉の核の魔導具は『戦乙女の手投げ槍』ってやつだそうだ 」
操縦する時、なんかの役に立つはずだぜ、とマクダニエルは親指を立てる。
「分かりました」
マヤはそう答えると、操作席の背もたれに身体を預ける。そのまま眠ってしまいたいほどの疲労感が彼女を襲う。
少しの間、眠気に抗っていたマヤだったが、やがて意識を手放し眠りに落ちていった。
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