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少女奮戦記~アイン・ソフ・オウル~   作者: PONぽこPON
第1章~ゴルト村編~
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アイン・ソフ・オウル

 闇に包まれたマヤの意識に、ふと、光が差した。


(汝、我が主たる資格を得んと欲するか?)


 何者かが、穏やかに語りかけてきていた。


「……誰?」


 ボンヤリとマヤは問いかけるが、答えは返ってこない。


(汝、何故に力を欲するか?)


 穏やかな語りかけだけが続く。


「……あたしは……人を助けられるようになりたい……」


 マヤはゆっくりと返答する。


「……強くなりたいんじゃない……助けたいんです……」


 何者かが微笑んだ、マヤはそんな気がした。


(我を欲するならば、我が名を呼べ、さすれば汝は我が主たらん)


 何者かが厳かに告げた。


(我は無より出でし無限なりて光なり)


「……アイン……ソフ……オウル……」


 マヤが無意識に浮かんだ言葉を紡ぐと、意識が黄金色に染まった。




『莫迦なッ!』


 数十発の火球が一瞬にして吹き消されたのを目の当たりにして、ハンスは思わず叫んでいた。


『術式で耐えたではなく、魔力の放射で消し飛ばしただと!』


 勝利の確信を得て火球を放たせた直後、アインから黄金色の魔力の光が濁流の如く吹き出し、全ての火球を消し去っていた。


『奴のどこにこんな魔力が!?』


 アインは押さえ込んでいる火吹き竜を、そのまま持ち上げるように立ち上がる。

 驚いて飛び退こうとする飛竜の頭を、アインの左手が掴んだ。

 そのまま、騎体から黄金色の魔力の奔流を立ち上がらせる。

 轟々と迸る魔力が光の柱となり天を突いた。

 いとも簡単に、飛竜の頭を握りつぶす。

 マヤは魔導炉から溢れ出る魔力を制御しようと、必死になっていた。魔力切れで意識を失いかけ、気がついたらとんでもない魔力の渦の中にいたのだ。無我夢中で魔力を自分に取り込み、制御しようとするが、膨大な魔力が溢れ出ていってしまう。


「駄目、制御できない!」


(案ずるな……心静かに……念ぜよ)


 何者かの声に諭され、心を落ち着ける努力をする。

 すうっと、魔力の流れが穏やかになる。

 そのまま、剣に意識を向けると、魔力がそこへ流れ込んで行く。剣が黄金色の魔力を纏い、輝いた。


『ええぃ! もう一度だ、奴を丸焼きにしてやれ!』


 火吹き竜が一斉に火球を放った。


「つぁぁぁッ!」


 マヤは剣を振るう。剣先より伸びた、黄金色の魔力の切っ先が空を凪ぐ。

 一振で、すべての火球と火吹き竜を凪払った。30メルテはあろうかという火吹き竜達は一体残らず、跡形もなく消し飛んでいた。

 膨大な魔力に耐えかねて、アインの剣がボロボロと崩れ去る。


『ば、ば、化け物か……』


 ゆっくりと、ヴァルキュリエに向き直ったアインに、ハンスは思わず後退る。

 次の瞬間には、アインはヴァルキュリエの真正面まで接近していた。そのまま、魔力で構造強化した右腕を、手刀の如くヴァルキュリエの胸部に突きいれる。

 ヴァルキュリエの魔導炉を掴むと、そのまま引きずり出し、ゆっくりと握り潰した。

 魔導炉の外殻が潰され、炉心となっていた魔導具が姿を表す。それは短い槍の形をした魔導具だった。

 動力源を失ったヴァルキュリエは機能を停止する。

 それと同時に、集まってきていた竜達が統率を失い、一斉に逃げ出していった。


「終わった、のかな?」


 マヤは操作席の背もたれに身を預け、大きく溜め息をつく。魔導炉の出力が定格運転まで落ち、魔力が一気に抜ける。成し遂げた充実感と魔力切れの疲労感に、マヤは意識を手放した。




「ほっほっほ、始まったかの?」


 とある田舎の山中で、老人が独り言ちた。

 マヤの魔法の師であった老人である。


「アイン・ソフ・オウルと出会ったか」


 老人は王都の方向を見やり、呟く。


「これからが大変じゃぞい」


 頑張るんじゃぞ、と心の中でマヤを励ましていた。

一章のラストバトル終了です!

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