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少女奮戦記~アイン・ソフ・オウル~   作者: PONぽこPON
第1章~ゴルト村編~
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死闘

『死ねよ!』


 ヴァルキュリエが、純粋な魔力の塊である魔力弾を連射する。

 着弾した魔力弾が立てる爆炎の中を、マヤはアインを走らせた。


「時間かけられない! 早く止めないと!」


 飛竜がこちらまで来る前に、決着をつける必要があった。

 追尾、斬撃の術式を剣に展開し、一気に間合いを詰める。


「ハァッ!」


 気合いと共に剣を振り抜くが、切っ先は虚しく空を切った。


『やはり、追尾を使っているか、素人め!』


 ヴァルキュリエを僅かに後退させ、斬撃をかわしたハンスは余裕を見せる。


『そんな剣では、僕を捉えることなど出来はしない』


 魔力弾を連射したヴァルキュリエが、大きく距離を取る。

 魔力弾を障壁で無効化しつつ、マヤは再度突っ込んだ。

 騎体を加速させ、一本の槍のごとき突きを繰り出す。

 しかし、ヴァルキュリエにはかすりすらしない。


「欺瞞の術式を使っている?」


 マヤは、相手の動きから、追尾の術式を惑わす欺瞞の術式を使っていると気がついた。


「流石に、天才と自称するだけはある」


 欺瞞の術式で、追尾の際の目標の位置をずらして認識させているのだ。でなければ、2回とも外れることなど考えられない。欺瞞の術式の構築自体は高度な技量が求められる、伊達で天才と名乗っているわけでは無かった。

 考える間もなく、魔力弾が飛んでくる。


「時間が無い。こうなれば強引に!」


 三度、マヤはアインを突っ込ませる。


『いつも避けるだけだと思うな!』


 ハンスはアインの突進先に、置くように魔力弾を射つ。今までよりも魔力を込めた強力なものを放っていた。

 マヤはアインのスピードを落とさず、ギリギリをすり抜けるよう僅かに騎体を横滑りさせる。


『弾けろ!』


 アインがギリギリを通過した瞬間、魔力弾が爆発を起こす。

 それを最低限の障壁の術式のみで防ぎ、アインは更に突進した。勢いそのまま、鋭い突きを繰り出す。


『甘いんだよ!』


 欺瞞の術式で騎体の位置を誤認識させつつ、ハンスは魔力弾を再度放とうとする。

 空を切ったアインの剣は、しかし、そこから凪払うように振られた。


『何ッ!』


 振られた剣に、ヴァルキュリエの魔導砲が切り裂かれる。


『莫迦なッ!』


「欺瞞に何度も頼りすぎです。あなたの魔力の癖を見つけました」


 マヤが静かに告げる。


「もう、あたしには欺瞞は効かない」


『舐めるなぁッ!』


 ヴァルキュリエも抜刀し、アインに斬りかかった。

 その攻撃をアインは容易く受け流してみせる。


「あなたの攻撃は、あたしより単調ですね」


 アインはグンッと踏み込み、鋭く切り上げる。

 咄嗟に操作席を庇ったヴァルキュリエの左腕が、切り飛ばされた。


「次は、魔導炉を潰します」


『ふ、ふはははは』


 剣を突きつけるマヤに、ハンスは笑って見せた。


『残念だったなぁ! 時間切れだ!』


 声と同時に、マヤを衝撃が襲う。

 近づいてきていた飛竜が一体、アインに掴み掛かったのだ。


「くッ! このッ!」


 振りほどこうとするが、30メルテはある火吹き竜がガッシリと爪を立ててアインの胴体を押さえ込んでおり、騎体の自由を許さない。


『舐めた真似をしてくれた礼だ、ただじゃあ殺さない!』


 ユラリと立ち上がったヴァルキュリエの背後に、十数体の火吹き竜が並ぶ。


『さあ、王族もろとも街ごと焼き払え!』


 ハンスの狂を発したような声のもと、全ての火吹き竜が一斉に火球を放った。


「止めろぉぉッ!」


 次の瞬間、全ての火球が障壁の術式で阻まれる。

 その、街を覆うほどの障壁の術式を展開したのは、


『お、お前が止めたのか……』


 ハンスが愕然とした顔で、アインを見る。


「街も人も、傷つけさせない!」


 限界まで拡大した術式を展開しつつ、マヤが叫んだ。


『は、はは、格好いいよ、格好いいじゃないか、お前!』


 ハンスがうわ言のように呟く。


『だが、後何発止められる!』


 ヴァルキュリエが、掲げた剣を振り下ろす。火吹き竜が再度火球を放った。


「くッ!」


 再び障壁が展開され、火球を阻む。しかし、先ほどの障壁よりも力強さに欠けているのが見て取れた。もう、マヤの魔力も騎体の魔導炉の魔力も限界だった。


『次で終わりだよ!』


 火吹き竜が火球を吐く。


「たとえ命を削ってだって!」


 止めてやる、と言おうとして不意に視界が歪む。限界だ。


(駄目、今倒れたら、誰も守れない……)


 急速に暗くなって行く視界の中で、マヤは必死に抗う。


(絶対……守りぬく……絶対……)


 そして、視界が闇に落ちた。

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