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少女奮戦記~アイン・ソフ・オウル~   作者: PONぽこPON
第1章~ゴルト村編~
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作動試験

 数日後、マヤは工廠へと道を急いでいた。組上がった魔導騎兵の作動試験を行うとのことで、急に呼び出されたのだ。

 工廠へと向かう道すがら、何度かすれ違う若い男性の視線が気になった。

 どうも胸元辺りを見られている。


「やっぱり、仕立てて貰えばよかったかな……」


 思わず愚痴が零れる。

 今日は謁見式の説明会があり、その後、式で着る服を合わせたのだが、魔導吏員の礼服で支給されるサイズではマヤの並みより若干、いや、大分大きい胸とお尻に合わなかった。

 それでも、仕立てるのは勿体ないと、一番体に合ったサイズを選んだのだが、タイトな上着とスカートが災いして、胸元とお尻が随分とけしからん事になっている。


「……動きにくい」


 ヒールのある靴と合わせて、非常に動きが阻害される。

 がに股にならないよう歩くので精一杯、と言ったところだ。

 ようやくの事で、工廠の門をくぐる。


「こんちわー」


「よう、マヤちゃ……」


 近くに居た若い工員が、声を掛けたところで凍りつく。

 視線ががっつり胸に行っていた。


「ちょっとトールさん、どこ見てんです?」


 マヤが唇を尖らせる。今日はそこにも紅が乗っていた。


「いや、嬢ちゃん、ここには若ぇ奴も多いんだ。刺激が強すぎるのは勘弁してくれ」


 マヤの格好に気がついたマクダニエルが、そっと注意をする。


「その格好は、あれか? それで謁見式に出るつもりかい?」


「ええ、その予定ですけど?」


「王子の一人でも落とすつもりかよ」


 マクダニエルは思わず小声で突っ込んだ。


「そんなにいけませんか?」


 マヤがしゅんとして聞き返す。


「いけねぇこたぁねぇがな。ちと、刺激的にすぎるな」


 思わず視線をそらしつつ、マクダニエルは鼻を掻く。


「ま、いいか、魔導騎兵を起こすから、嬢ちゃんは操作席へ行ってくれ」


 はい、と返事をして、マヤは魔導騎兵の腹部にある操作席へ向かう。

 工廠の奥で立った状態で支柱に固定されている魔導騎兵は、操作席が建物の3階ほどの高さにある。

 そこまで階段を登り、足場を伝って操作席に乗り込んだ。


「よっと、うわ、スカートきつ、操作しにくいなぁ」


 座った時に、まくり上がってしまったスカートを直しつつ、操作席にベルトで身体を固定する。


「はい、乗り込みました」


「よーし、じゃあ、魔導炉を起動してみてくれ!」


 マクダニエルの指示を受け、魔導炉を起動させる。

 微かな唸りと共に、魔導炉が魔力を発生し始めた。


「魔導炉起動成功! 出力上昇中!」


 外部で騎体をモニターしていた工員が、声を張り上げ報告する。


「魔導炉、定格出力に到達!」


「嬢ちゃん! 魔導炉が安定した! 魔力を操作できるか!?」


「やってみます!」


 操縦桿を握り、術式を流す。


「あれ、全然手応えがない?」


「こいつは試験用だったからな! 積んでる魔力伝達管や、魔力蓄積用の魔導結晶の容量が莫迦デカイんだ!」


 マクダニエルが大声でアドバイスする。

 様々な機器を試験するための騎体だったお陰で、魔力関係には余裕のある機材が積まれていた。

 その分、まともに動かすためには、大出力の魔導炉が必要になってしまってもいた。


「並みの魔力じゃあ、騎体に吸われちまうからな、間違っても自分の魔力だけで動かそうとするんじゃねーぞ!」


 すぐに魔力切れでぶっ倒れるぞ! と警告も飛んで来る。


「魔導炉の出力上げて大丈夫ですか?」


「出力上げるっても、もう定格出力だろ?」


 モニターしている工員が疑問を挟む。


「いや、あの魔導炉の定格出力ってのは俺たちが回したときの出力だ」


 マクダニエルが少し楽しそうに答える。


「嬢ちゃんの話じゃあ、飛竜とやり合った時は、出力が跳ね上がったらしいからな」


 覚悟を決め、声を張り上げる。


「よし、出力上げてみろ!」


 マヤはその声を聞くと、騎体に術式を送り込む。

 魔導炉から、魔力を引き出すように組み上げた術式だ。


「出力急上昇!」


 悲鳴のような声で、工員が叫ぶ。


「並みの魔導炉3基分の出力です!」


「嬢ちゃん、制御できてるか!?」


 思わずマクダニエルが叫ぶと、出力がストンと落ちた。


「大丈夫です! 思った通りに制御できます!」


 マヤから会心の笑みを含んだ回答が帰ってきた。


「もうちょっと高くしても大丈夫だと思います!」


「おいおい、あの魔導炉って、隅で埃被ってたボロだったよな」


 誰かが、ひそひそと囁いた。


「炉心、何が入ってんだ?」


「案外、とんでもねぇもん見つけちまったのかもな」


 マクダニエルは呟くと、次の指示を出す。


「嬢ちゃん! 次は出力上げて騎体に魔力を循環させるんだ!」


「はい!」



 ~数時間後~



「はいよ、上出来だ、嬢ちゃん」


 もろもろ試験を実施し、ようやくマクダニエルは満足を得ていた。


「思った以上に仕上がったな。後は外装を取り付けて、塗装して終了だ」


 装甲も付けるんだったな、と確認する。

 予備の装甲でまがりなりにも実戦に耐えれるようにしろ、と指示が出ていた。


「さて、予備の装甲なんてどれだけあったかな?」


 頭の中で計算しつつ、騎体を見上げる。

 何人かの工員が、操作席の前で困っているのが目に入った。


「どうしたぁ!?」


「嬢ちゃんが操作席開けてくれないんですよ!」


 工員が叫び返す。

 試験中に閉めた操作席を、マヤが開けていないのだ。


「多分、中でのびてるな」


 なんだかんだ、魔力を相当使っている筈である。並みの人間なら、もっと早くにダウンしていただろう。


「操作席を強制解放しろ! 後、嬢ちゃんを仮眠室に連れてってやれ!」


 指示を飛ばしつつ、苦笑する。


「当分、野郎共は仮眠室立ち入り禁止だ!」

試験用のガタがきた騎体ですけど、専用機になる予定です。うまく活躍させたいですね。

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