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死神

真っ先に思ったのは不審者と言うワードではなく、


「死神・・・?」


もしかして、あれに刈られたら成仏するとか・・・?でも男が持っていたのは、田舎のお爺ちゃんが使っていたような草刈り鎌みたいで、死神っぽい大鎌ではない。



どうする。

私どうする。

試しに刈られてみるか?



目が合った男が鎌を振り上げて走った。


「いや、無理でしょ!」


走って逃げようと方向を変えた瞬間、反対からも似たような男が近づいてくるのが見えた。振り返ると最初の男がもう目の前にいる。


もう無理だ!とっさに頭をかばってしゃがみ込む。


次の瞬間、強い風が吹いた。

キャーと言う人の叫び声が聞こえる。

何この風!と言う声も聞こえた。

目を開けると、黒い靄が飛び回っている。立っていられないほどの突風、木の枝や人の荷物が飛んでいく。気づくとフードの男も飛ばされて転がっている。阿鼻叫喚ってこんな感じの事かな、と一瞬暢気なことを考えてしまった。


すると転がっていたフードの男が立ち上がり、黒い靄を避けるようにしてこちらに向かってくる。私がぎくりと身構えると、黒い靄がフードの男を吹き飛ばした。

吹き飛ばされたフードの男がすぐに起き上がろうとしたが、なぜか今度は鳥に襲われている。なんだこりゃ。


「お姉さん!」


急に肩をつかまれた。驚いて見上げると、小学生ぐらいに見える少年が私を見ていた。


「早く止めて。」

「何を?」


聞くと酷く冷静な声が帰って来た。


「あの風、お姉さんでしょ。」

「風?」


私が首を傾けると、少年も「え?」と首を傾ける。


「迷子じゃない?」 


走り寄って来たのは少年より背の高い綺麗な少女だった。少女は片膝をついて私に視線を合わせると、私の手を取って言った。


「イメージして。この掌から、あの黒い風を吸い込んで、お姉さんのお臍の少し下ぐらいにある空間に閉じ込めるの。」


真摯な目だった。


私を冷静にさせる、不思議な色をした目だった。

とりあえず言われた通りにやってみる。

もちろん、出来るなんて思っていないけど。


「!!!」


黒い靄が私の手に吸い込まれていく。驚いて気を抜くと、黒い靄が溢れ出した。


私は慌てて靄を吸い込むようにイメージする。集中すればあっと言う間に黒い靄は私の掌に消えていった。


「本当に吸い込んじゃった。」


私が呆然として言うと、美少女がふーと息を吐いて笑った。

うわ、やっぱり綺麗!


「トカゲは追っ払った。」


ひょろりと背の高い・・・たぶん少年が近づいてきて言った。


「トカゲってさっきの鎌持ったヤツ?」

「そうトカゲみたいな顔してたでしょ。」

「してた。」

私は心から頷いた。


そしてその背の高い少年の背に隠れて一緒にやって来た小柄な少女は、祓社で目が合ったと思った子だった。


「とりあえず、ここを離れよう。」その少女が言った。

「急いでシゲちゃんが切れそうだから。」背の高い少年が言って皆を促す。


私は美少女に腕を引かれて立ち上がった。そのままを私の腕を離さずに歩き始める。私は1人にされなかったことに心底ホッとした。


それにしても、たぶんあれは死神ではなかったのだろうな。とりあえず、刈られなくて良かった。


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