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さすがに驚いた

さすがに驚いた。


いきなり膨れ上がった黒猫の大きな口に飲み込まれたと思った、次の瞬間にはペッと吐き出された。

吐き出された私は地面に背中を付けて倒れていた。特に痛くはなかったけど、状況が呑み込めない。視界には鳥居と、うっすら虹色に輝いている空が見えた。すごく見覚えがある。なぜ?


出雲大社ふたたび!



「アキちゃん!」

聞き覚えのある声だった。

起き上がって視線を向けると幸人が私を見下ろしている。

昔から幽霊が見えると言っていたから、もしかしたらと思っていたけど、本当に見えるみたいだ。まって・・という事は、幸人が今まで見ていたのは幽霊ではなく鬼ってこと?幸人は幽霊だと思っていただろうか、それとも鬼とわかっていて見ていたのだろうか?

「アキちゃん!」

もう一度私を呼ぶ声で、私は顎に手をあて考える人になっていたことに気づいた。あっもう人じゃないのだった。

「コレどういうこと!心配してたんだよ。行方が分からないって会社にアキちゃんのお母さんから連絡があって・・。」

幸人がまくしたてる。

「道に抜け殻みたいに服や鞄が落ちてたって聞いたから・・・。」

それはホラーだわ。いや、事件現場か。



「あの人1人でしゃべってる。」

「あぶな。」

横を通り過ぎたカップルが言った。



幸人が驚いたように私を見る。

「・・・・アキちゃん、死んだの?」

幸人はうつき小声で言った。やっぱり、幸人は幽霊を見ていると思ってたんだ。

1つ謎がとけた。私が何も言わないでいると、幸人は上目使いで私を見た。私は少し笑って首を横に振って見せた。

さて、何からどう話そう。

「とりあえず移動しようか。」

移動と言っても、少し歩いた芝生の上だ。鳥居と記念撮影している人達が見える場所だけど、幸人の独り言は聞こえないだろう。天気がいいとは言え、冬の冷たいが風の吹く中、芝生に座り込んでいる男の図は不審かもしれないけど・・・。私達はそこに座り込んだ。あの黒猫は幸人の横にピッタリとくっついている。



「なんで、1人で来たの?」少し拗ねた声で言われた。

いや、黒猫につれてこられたんです。でも、もともとは・・・

「幸人が連れてきてくれたんでしょ。」

シキが幸人の未練だと言っていた。もちろん幸人には意味が分からない。

「私ね、気づいたら出雲大社の前にいたの。」

私は自分に起こったことを正直に話した。



「俺別れて欲しいなんて言ってない。ほんと明ちゃんって人の話聞いてないよね。」

アレ?そこ!

「『旅行には行けなくなった。本社の子が来たんだ。だから・・・わかって欲しい。』別の日に変更しようと思ってたのに。」

え~と。

「いきなり、帰るから怒ったのかと思ったし、それだけ楽しみにしてくれてたんだと思ったのに・・・。まさか・・・。」

「も・・・もうしわけない。」


短い沈黙が下りる。ハ~と、幸人が一度大きなため息を吐いた。

「じゃーあれも幽霊じゃないってこと?」

幸人は自分の足元を指した。そこには黄色の目をした黒猫が寝そべって、じっと私を見ている。

「普通の猫じゃないとおもうんだけど。」

「はい、ではご説明しましょう。」

「ど・・・どちら様?」

青い靄が視線の端にいたので気づいてはいたけど、シキはいきなり会話に入って来た。

さすがなれたもので、幸人は冷静だ。

「初めましてシキと申します。」

シキは幸人に向かって頭を下げた。それから顔を幸人に向けるが視線は明らかに違うところへ向かっている。

「風の民としての先輩で、いろいろ教えてくれてる人。・・まぁ人ではないけど。」

「あぁ・・そうなんだ。」

幸人もなかなか受け入れが早い。

「アレは猫の形をしていますが猫ではありません。何か力の塊のようなモノで、大きな力が発生しそうな場所に現れるのです。アレに取りつかれたあなたはラッキーです。アレは取りついた人の願いを1つ叶えてくれます。特に害はありませんので、ご安心ください。」

シキはかなり端折って言った。願いをかなえてくれると言うのは初耳だ。

「あぁ、それでアキちゃんを連れてきてくれたのか。俺がアキちゃんに会いたいって言ったから。」

言って幸人は黒猫を撫でると、黒猫が金色の目を細めた。

「まさか、そんなことに願いを使ったの?」

「そんな事じゃない。」

幸人は怒ったように言った。


付き合う前から思っていたけど、この人はどうして私のことが好きなのだろう?自分を卑下するわけではないけど、外見も性格もどちらかと言えば可愛くないだろうに。こんなに好かれる理由が正直わからない。


「俺の愚痴を笑って受け流してくれるのはアキちゃんしかいないのに、アキちゃんがいなくなって俺のストレスはたまる一方だったよ。て言うか、俺は本当に心配してたからね。ここに来たのだってもしかしたらって思ったからで・・・。」

まあ確かに幸人の愚痴は、人に聞かせるにはなかなかアレではある。

「ねぇ、アキちゃんうちにおいでよ。」

言って幸人は私の手を握った。


不思議だなと思う。見る事ができる人は振れることも出来た。風の民は精神と水と風馬で出来ている。肉を持たないはずなのに、ちゃんと幸人の温度を感じることが出来た。

不意にシキが視界に入って来た。見ていないようで、興味津々なのが伝わってくる。私もだいぶこの人になれてきたな。


「アキちゃん。話聞いてる?」

幸人がうろんな目で私を見ていた。


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