お姉さんがいなくなった
お姉さんがいなくなった。
お客さんが急にいなくなる、そう言うことが家では良くある。心配する必要がないのはわかってるけど・・・て言うか、私は心配しているわけじゃない。素直に言ってしまえば寂しい。
3人に報告すると
「へー。」マサキは全く興味なし。
「挨拶ぐらいして行けばいいのに。まぁ風の民だしね。」ヨウは正論を並べるだけだった。
「ハルカは寂しいのか?」マサルに気づかれてイラッとした。
「別に・・。」私はそれだけ言った・・・それだけしか言えなかった。
初めてお姉さんを出雲大社で見た時、そこだけスポットライトが当たったように明るく見えた。だから、そこに視線を向けずにはいられなかった。それだけ聞くとまるで恋をしたみたいに聞こえるかもしれないけど、そういうのとは明らかに違う。明確な明るさの違いがそこにあった。でも誰に聞いても、同意はしてくれなかった。
お姉さんだけが特別なのかと思っていたけど、シキさんも明るかった。風の民が明るく見える。それは私に、もしかして自分も風の民かもと期待させたけど、彼らが噂通り感情の起伏が少ない凪いだ心の持ち主なのがわかれば、自分は絶対ちがうのだとすぐに悟った。
じゃーどうして私にだけ、彼らがあんなに明るく見えるんだろう?あの明るさを目にしてから、それ以外がいっそう暗く見えてしまう。
あの明るさが心底恋しい。
お姉さんはなぜいなくなったのか?
疑わしいのはマリーさんだ。あの人はいつも力を欲しがっている。
「マリーさんなんかした?」
お父さんがいない時に、私はマリーさんに聞いた。マリーさんは儚げな微笑みを浮かべて、首を横に振る。
「いいえ。私が何かする前にいなくなってしまいました。とても残念です。」
マリーさんは悪びれない。マリーさんはやったらやったと言うから、嘘じゃないはず。田村のおばあちゃんだろうか、でもマサルが違うと言っていたから、多分違う。そう言えば、こないだのマサキの行動が不審だった。でもいつも通りと言えばいつも通り、マサキの言動はいつも謎が多い。
結局考えてみたところで答えが出るはずもなく、私は不貞腐れて自分の部屋の床に寝転がる。本棚にぎっしり入った歴史の偉人たちの本・・・。
「お父さんがどんなに望んでも、私がそんな風になれるはずもないのに・・・。」
私も風に乗って、どこか遠くに行きたいよ。
ずっとずっと、遥か遠くに。
皆の事は大好きだけど、二度と会えないとしても私は後悔なんてしないだろうと思う。
それほどにここではない、どこかが恋しい。




