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聖女ですが偽聖女に断罪されたのでこの国を捨てます。え?だって神である黒龍様を否定なさるのでしょう?なにか?

作者: 下菊みこと

過去作のリベンジ

私は、黒龍様を侮辱する方を許しません。


はじめまして、ご機嫌よう。私、ノワール・サントと申します。公爵令嬢です。代々長女は聖女になる家系に生まれました。そして私は長女。聖女なのです。その証拠に、普通の人には見えない妖精や精霊達が見えます。もちろん仲良しです。そしてこの国の神さま、黒龍シュバルツ様からとっても可愛がっていただいております。


だから、今の状況が上手く飲み込めないのです。


「ノワール様!もう嘘をつくのはやめてください!」


「嘘とは?」


「惚けるな、ノワール!お前が偽聖女ということはもうわかっているのだ!この悪女め!」


この学園の卒業パーティーの席で騒いでいるのは、男爵令嬢のクレール・スュクレ様。そしてこの国の王太子であり、私の婚約者のイディオ・リュウフワ様。…ついでに言うとこのお二人、学園生活の中で、私というものがありながら白昼堂々と浮気しておりましたの。この騒ぎに会場の皆様は興味津々のご様子。困りますわ。


「私には聖痕もありますが?」


「それは後から彫った刺青だろう!レールにこそ本物の聖痕がある!」


「それこそ後から彫った刺青でしょう。第一私の家系は代々聖女が生まれる家系。疑いようもないはずですが?」


…この辺で引いてくれませんかね?シュバルツ様や妖精、精霊達までもが怒り心頭で今にも暴れ始めそうなのですけれども。


「くどい!レールには奇跡の力がある!レールこそが聖女なのだ!お前のような偽聖女との婚約は破棄だ!」


「それはただの光魔法でしょう。稀少な価値のあるものですが、それと聖女の力とは関係ないはずです。…まあ、婚約破棄は喜んでお受け致しますが」


「よ、喜んでだと!?」


「はい。そこの神官見習いさん、婚約破棄書を」


「は、はい!」


「署名捺印しましたわ。殿下もどうぞ」


「な、生意気な…まあいい。これで貴様との悪縁も切れる!」


「はい、署名捺印いただきました。神官見習いさん、正式に受理していただけますか?」


「は、はい。確かに」


「ではこれで、殿下とは完全に他人ですわ」


「レール!これで私達は結ばれるぞ!」


「ディオ様!よかったです!」


完全にお二人の世界に入ってしまわれましたわね…。


「で、でも、ノワール様の断罪がまだです!居もしない神さまや妖精、精霊が見えるなんて嘘をついて、最低です!」


…。悲しいことですが、このバルムンク国では最近妖精や精霊達、挙げ句の果てにはシュバルツ様の存在までも疑う声が上がっています。魔法と科学が急速に発展した弊害ですわ。…でも、それ。私とシュバルツ様にとっては禁句でしてよ。


「…ほう。俺たちが居もしないか。思い上がったな、人間」


シュバルツ様が霊体化を解き姿を現します。この巨大な学園のパーティー会場にすら収まりきらず、天井を突き破りその巨大で偉大な、神々しいお姿を皆の前に見せるシュバルツ様。会場の皆様はあまりにも突然の出来事に誰一人として動けず、呆然としています。


「ああ、だが。そうだな、それもいいだろう」


シュバルツ様はゆったりと告げます。


「居ないと思うなら、それでいい。俺たちはお前らの思惑通り、この国から消えてやるよ。…本物の聖女と一緒にな」


そういうとシュバルツ様は私を背中にひょいと乗せて、学園のパーティー会場を邪魔だなと言って破壊して、翼を広げて飛び立ちます。


「お前らー、ついてこいよー」


「はーい!」


「わあい!久しぶりのお引越しだー!」


「みんなー、行こう行こう!」


そして妖精や精霊達を伴って、バルムンク国とは違い信仰心の篤い隣国の小国ドラグーンを目指します。


…パーティー会場を破壊した際には私が祈りの力で守ったので怪我人はいないはずですが、きっと今頃会場は相当なパニックに包まれているでしょう。…これからは、妖精や精霊、シュバルツ様の加護を受けられなくなるのですから。私だってお人好しではありませんし、可愛がってくださるシュバルツ様を侮辱する方を許すつもりはさらさらありません。せいぜい苦しむがいいですわ。


あ、家族に挨拶は要りません。そもそも私、シュバルツ様を信仰しない両親と仲が悪いので。


「ついたぞ、ノル」


あっという間にドラグーン国についてしまいました。ドラグーン国はシュバルツ様のお姿を見た王族や神官達が手厚く出迎えてくれました。


「今日からこの国で世話になろうと思う。黒龍シュバルツだ。こっちは、聖女で嫁候補のノワール・サントだ。…いつまでもドラゴンの姿でいると、ここでは狭いな。人間の姿をとるぞ」


人間のお姿をとったシュバルツ様はとても美しい青年です。かっこよすぎて、いつ見ても慣れないものです。…というか、え?嫁候補?


「これから俺とノルと…あと、お前らには見えないだろうけど妖精や精霊達も世話になる。よろしくな」


「はい、こちらこそよろしくお願い致します!黒龍様!」


「あ、あの、シュバルツ様、嫁候補って…」


「そのままの意味だぞ。あと、これからはルッツと呼べ」


「ルッツ様…」


「それでいい。今回のことで、お前を人間なんかに任せておけないと思ったからな。これからは俺の寵愛を存分に与えてやる」


絶対に落としてやるから覚悟しろよ、とルッツ様。一体なぜこのようなことに?


ー…


あれから数年が経ちました。ルッツ様は私を嫁候補と公言しながらも、決して無理矢理私をモノにしようとはされず、いつものように穏やかに私を見守ってくださって、私の気持ちを整理する時間をくださいました。そして私は、幼い頃からずっと私を見守ってくださった、お優しいルッツ様からの溢れんばかりの愛に溶かされ、ルッツ様と結婚する運びとなりました。


バルムンク国は、地図上から姿を消しました。愚かなバルムンク国は、シュバルツ様を侮辱したのです。これによりシュバルツ様や妖精、精霊達の怒りを買い、バルムンク国は守護と加護を失ったのです。守護と加護を失ったバルムンク国は大地が痩せ、経済は回らなくなり、疫病が流行して、政も上手くいかなくなり、クレール様と王太子殿下は革命軍により斬首され晒し首にされたそうです。他の王族達もまともな最期は迎えなかったといいます。私は、黒龍様を侮辱する方を許しません。ですが、無辜の民まで苦しめるのは本意ではありません。確かに、魔法と科学が急速に発展した弊害で、最近妖精や精霊達、挙げ句の果てにはシュバルツ様の存在までも疑う声が上がっていたのも事実。しかし、民はシュバルツ様の存在を知りました。もう、シュバルツ様を疑うことはないでしょう。ですから、シュバルツ様にお願いして、ドラグーン国に吸収合併された元バルムンク国にも守護と加護を再び授けていただきました。これで無辜の民は助かるでしょう。一方、バルムンク国を吸収合併したドラグーン国は、シュバルツ様や妖精、精霊達の加護を受けて、目覚ましい発展を遂げました。


「ルッツ様…」


「優しくて可愛い、俺の聖女…ノル。愛してる」


「私も、お慕いしております」


ちゅっ、と頬にキスをされ、抱きしめられる。


「もう、ルッツ様。せっかくの花嫁衣装にシワができてしまいますわ」


「ああ、すまない。お前があまりにも愛おしいから、ついな」


「ルッツ様…私、貴方様から愛されて、とても、とても幸せです」


「ノル…。俺もだ」


こうして私は、ルッツ様の虜になったのでした。

『悪役令嬢ですが、幸せになってみせますわ!アンソロジーコミック』の第3弾が7月27日(月)発売です!

定価780円+税

ISBN 978-4-7580-3534-7



〇内容紹介


大人気アンソロジーついに第3弾!

『悪役令嬢ですが、幸せになってみせますわ!アンソロジーコミック』の第3弾が7月27日(月)発売!!

「小説家になろう」発の人気読み切りコミカライズアンソロジー、大好評につき第3弾!!


私の書いた短編、『嫌われている相手に嫁いだはずがいつのまにか溺愛されていました』が収録されています。


コミカライズしていただき書籍化していただけたのも全て皆様のおかげです。ありがとうございます。もしよければ是非手にとっていただけたらと思います。

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