第91話 看病の力は
私は風邪を引いたので、ベッドで寝ていた。
隣にいたクラーナは、夕食を作りに行っている。そのため、今は一人だ。
私は、さっきまではうつしてしまわないか心配で、離れた方がいいなどと言っていた。だが、一人になるとクラーナが恋しくなってくる。
傍にいてくれるだけで、クラーナは元気をくれていたのだ。それがなくなって、少し体調が悪くなった気になってしまう。
クラーナも、夕食を作りに行くのかなり渋って、何度も頬にキスをしてきた。わかっていたが、私達はお互いに求めているようだ。
「アノン、お待たせ!」
「あっ……」
私がそんなことを思っていると、クラーナが帰ってきた。
手にはお盆を持っており、その上には食事が乗せられている。
「ちょっと、準備をするから、もう少し待っていてね」
「うん……」
クラーナは、お盆を机の上に置き、それをこちらに寄せていく。
さらに、椅子をもってきて、私の側に座る。
「体を起こすわね」
「あ、うん……」
クラーナが体を支えてくれて、私はゆっくりと起き上がった。
体の節々が痛いが、動けない訳ではない。というか、朝よりも大分楽になっている。一日しっかりと休んだのがよかったのだろうか。
「食欲はある?」
「うん。朝や昼よりは食べられそうかな……」
「それならよかったわ。食べるのが、一番大事だもの」
クラーナはシチューらしきものをスプーンですくう。
今日の夕食はそれであるようだ。
風邪の私に食べやすいようなメニューにしてくれたのだろう。その心遣いが、とても嬉しい。
「ふー、ふー」
熱いシチューを、クラーナが冷ましてくれる。
髪をかき分けてシチューを冷ますクラーナは、少し色っぽく見えた。これも風邪のせいなのだろうか。
「はい。あーん」
「あーん」
クラーナがスプーンを口元に運んでくれる。
私は、ゆっくりとそれを口の中に入れていく。
やっぱり、クラーナの作ってくれる食事はおいしい。
しかも今日は、なんだか力が湧いてくるような気がする。どうやら、体がエネルギーを求めているようだ。
「おいしい……」
「ふふ、ありがとう……」
私の言葉に、クラーナは笑顔になってくれる。
この笑顔を見るだけで、少し元気が出てくるのは気のせいだろうか。
それからしばらく、私は食事を行った。なんとか、クラーナが持って来てくれた分は、食べられたので、回復してきているのだろう。最も、クラーナが調整してくれていたので、そんなに量があった訳ではないが。
とにかく、治ってきているのは確実だ。きっと、このまま完治していくだろう。




