第88話 風邪を引いたら
ティネちゃんとリュウカさんの話し合いが終わり、一日が経っていた。
あの後、四人で依頼に行き、そのまま一日が終わっていったのだ。
という訳で、朝なのだが、私は少し違和感を覚えていた。
何故だがわからないが、起き上がれないのだ。体がだるくて、そうするだけの力が湧いてこない。
なんだが、喉も痛い気がする。それに、体が少し熱い。
「うーん。アノン、おはよう……」
「あ、うん。お、おはよう……」
「あら?」
そこで、クラーナの目が覚めた。
クラーナは、私の顔をじっと見つめてくる。
どうやら、私の不調にすぐに気づいたようだ。
「アノン、少しいい?」
「え?」
クラーナは、自身の前髪をかき上げ、ゆっくりと顔を近づけてくる。
私のおでこと自分のおでこを、合わせてきたのだ。
この距離は、慣れているはずなのに、中々恥ずかしい。
「……熱いわね」
「あ、やっぱり?」
「ええ、風邪でしょうね。他に、不調はある?」
「うん。喉が痛い……」
「……確かに、少し声も変ね」
なんとなく察していたが、私は風邪を引いてしまったらしい。
そういえば、リュウカさんのパーティは、風邪で二人欠けていたはずだ。もしかしたら、その辺りからもらってしまったのかもしれない。
「アノン、今日は一日休みましょう。私が、付きっきりで看病するから、安心して」
「あ、ありがとう、クラーナ……」
クラーナはすぐにそう言ってくれた。
当然、今日は依頼に行ける訳はないので、その提案はとても助かる。
それに、クラーナが傍にいてくれるのは、とても嬉しい。クラーナがいてくれるだけで、少しだけ元気が湧いてくる。
「でも、お医者さんには見てもらわないと駄目よね」
「あ、うん。でも、お医者さんか……」
クラーナの言葉に、私は少し心配になってしまう。
私は、世間からあまりいい評価を受けていない。そのため、ちゃんと診てくれるのか、心配なのだ。
「大丈夫よ。いいお医者さんを知っているから、安心しなさい」
「え? そうなの?」
「ええ、私も利用したことがあるお医者さんよ」
「そうなんだ。それなら、大丈夫かな……?」
心配している私に、クラーナがそう言ってくれた。
クラーナにも問題無い人なら、私にも問題無いはずだろう。それなら、安心だ。
「とりあえず、朝食にしましょうか? 食べられる?」
「うっ……あんまり、食欲は湧かないけど」
「それでも、少しくらいは食べた方がいいわ。何か食べやすいものを用意するから、食べてちょうだい」
「うん……」
食欲は湧かないが、クラーナの言うこともわかる。
そのため、私は頑張って食べようと思う。
こうして、私達の一日が始まった。
今日は、中々大変な一日になりそうだ。




