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第76話 匂いのチェックは厳重に

 私はクラーナとくっついていた。

 私が依頼の帰りに女性を助けたので、その匂いを消しているのだ。

 クラーナにとって、そういう匂いがするのは嫌らしい。


 クラーナは、私の膝に座り、体をこすりつけ、匂いを消している。


「すー」

「うっ……」


 しばらくそうしていると、クラーナが私の体を匂い始めた。

 匂いが消えたかのチェックなのだろう。

 首筋など、入念に匂いを嗅いでくる。


 少し恥ずかしいが、今後のために受け入れることにしよう。


「クラーナ、どう?」

「ええ、問題なさそうだわ」


 クラーナは、私の体を隅々まで匂っていく。

 首から胸、胸からお腹、お腹から足まで、全部だ。

 足に関しては、体を低くして、足先まで匂われた。


 なんだか、とても恥ずかしい。


「さて、ここはどうかしら?」


 クラーナは、一度体を起こし、私の膝に再び乗ってきた。

 今度は、顔周りらしい。


「すん、すん……」

「うっ……」


 クラーナは顔を近づけ、匂いを嗅いでくる。

 頭から、口周り、耳まで匂って、クラーナは離れていく。

 恐らく、チェックが終わったのだろう。


「ど、どうかな……?」

「ええ、大丈夫よ。あの子の匂いは消えたわ」

「そ、そうなんだ。それは、よかった……」


 どうやら、匂いはきちんと消せたようだ。

 助けた女性には悪いが、クラーナのためにも消えてくれてよかったと思う。


「さて……」

「うん?」


 そこで、クラーナが動き出した。

 目的地は、私の胸である。


「ええ!? クラーナ!? 何をしているの!?」

「すー」


 クラーナは私の胸に顔を埋めて、匂いを吸い始めた。

 急な行動に、私は驚いてしまう。

 流石にここは、色々と混乱する。


「あの子を助けたことは、立派なことだったと思うわ」

「え?」


 私がそんな風に考えていると、クラーナがそう話し始めた。

 何やら、考えていることがあるようだ。


 私は恥ずかしさを押さえて、クラーナの言葉に耳を傾ける。


「でも、ああいう風に胸で受け止められるのは、少し嫌な気分になってしまうわ……」

「クラーナ……」

「それは、アノンが悪い訳ではないわ。これからも、そうして欲しいと思うくらい。だけど、この胸は私の……」

「うん……」


 どうやらクラーナは、女性が一時的に私の胸に抱かれたことが嫌だったらしい。

 だから、こうやって、抱き着いてきたのだろう。私がクラーナのものであるということを、確かめるために。


「クラーナ……」

「アノン……」


 私はクラーナの体に手を回し、片手で頭を撫で始めた。

 独占欲を見せてくれるクラ―ナが、かわいくて堪らない。


 その感情を抱いてくれるのは、とても嬉しいことだ。だけど、同時に辛いことでもある。

 だから、クラーナを安心させたい。

 その一心で、クラーナを抱きしめる。


「アノン……ありがとう」

「大丈夫だよ、これくらい……」


 私とクラーナは、しばらくそうしているのだった。

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