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第6話 食事の手助けをされて

 私は、しばらくクラーナの家でお世話になることになった。


 今は、クラーナが夕食を作ってくれている。


「クラーナは、料理が得意なの?」

「まあ、一人暮らしだからね。あなたはどうなの?」

「まあ、人並みには……」


 正直、私はあまり料理が得意ではない。

 不味くはないが、そこまで秀でている出来にはならないという、中途半端な腕前だ。


「それにしても、()(ほう)()って便利だよね?」

「そうね。今は、これがなければ、生活できる気がしないわ」


 魔法具とは、魔法によって作られた道具のことである。

 クラーナは、それを使って、調理を行っているのだ。


「そういえば、あなたって、食べられないものとかあるかしら?」

「あ、それなら大丈夫。私、基本的に好き嫌いはないよ」


 私は、基本的になんでも食べる方だった。

 何か普通ではないもの以外なら、特に問題はない。


「そう? それなら、いいわ」


 こうして、クラーナの料理は進んでいった。




◇◇◇




 クラーナの料理が完成したので、私達はテーブルについた。

 何故か、クラーナは私の隣に座っている。


「クラーナ? どうして隣に座るの?」

「それは……あなたにご飯を食べさせてあげようと思って」

「あ……そっか。それじゃあ、お願いしようかな……」


 私は両手を怪我しており、料理が食べにくい。

 そもそも、泊まる要因となったのも、それに関する一言だった。


「なら、スープからにしようかしら?」

「うん、それでいいよ」


 そう言って、クラーナは、スープをスプーンですくう。

 そして、それを自分の口元に持っていった。


「ふー、ふー」


 一瞬、疑問に思ったが、冷ましてくれているようだ。

 クラーナは、やはり優しい。


「はい、あーん」

「あ、あーん」


 クラーナに促されて、口を開ける。

 なんだか、恥ずかしい。


 口を開けてすぐに、スープが口の中に入ってくる。

 その味に、私は驚いた。


「お、おいしい!」

「そう? それなら、よかったわ」


 クラーナの作ったスープは、とてもおいしい。

 さらに、それを伝えると、クラーナは微笑んでくれる。


 なんだか、私の胸は幸せで一杯だった。


「あ、私だけじゃなくて、クラーナも食べてよ? なんか申し訳ないしさ」

「そう? それなら頂こうかしら」


 私の言葉で、クラーナも自分のスープをスプーンですくった。

 そのスプーンは、私がさっき口に入れたものだ。


「うん? どうかしたの?」

「い、いや、その……」


 クラーナは、何も気にせずスープを飲む。

 しかし、私は、なんだかとても恥ずかしい気分になっていた。


「あ! ごめんなさい。嫌よね? こんなの……」

「え? いやじゃないよ。ちょっと、恥ずかしいだけで……」


 クラーナも、私の様子で察したようで、照れてしまう。

 どうやら、意識していなかっただけみたいだ。


「……」

「……」


 お互いに照れてしまって、一度食事が止まってしまう。


「き、気にする必要なんてないわよね?」

「う、うん、そうだよ。気にする必要なんてないよ」


 私達は、何故か引くことができず、そのまま食事を続けることになった。こんなの気にならない訳ないのに。


 この後食べた料理の味は、恥ずかしさでよくわからなくなってしまった。

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