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第36話 引っ越しが終わって

「……これでいいわね」

「うん、ありがとう、クラーナ」


 私とクラーナは、引っ越しを終えていた。

 現在は、クラーナの家にいる。いや、今は私の家でもあるので、私達の家と言ってもいいのかもしれない。


「あら、アノン。疲れたの? 顔が赤いわよ?」

「い、いや、なんでもないよ」


 自分で考えていて、なんだか恥ずかしくなってしまった。これではいけない。


「うん? まあ、いいけど」


 クラーナは、そう言って気にしないでくれた。

 追及されると色々とまずいので、これは助かる。


「さ、さて、これからどうする?」

「そうね……時間的には、依頼にも行けなくはないけど……」


 そこで、私はクラーナに問い掛けた。


 引っ越しが終わったので、これからの時間は特に予定はない。

 思ったよりも早く終わったため、クラーナに何かしたいことがあれば、そうしたいと思ったのだ。


 例え、頭を撫でるのも、顔を舐められるのも、なんでも大丈夫である。


「買い物に行きたいわね」

「か、買い物?」

「ええ、食料の調達とかしたいのよ」


 しかし、クラーナの提案は、私の予想と違って、生活に重要なことだった。

 確かに、昨日は外に出ていないし、食料も残り少ないかもしれない。

 クラーナの提案は、とても合理的なものである。


 だが、私の心情的には少しだけ残念だった。

 なんだか、私も駄目になってきているようだ。


「よし、それじゃあ、行こうか?」


 ただ、それでもよかった。

 そのため私は、クラーナに向かって手を伸ばす。


 引っ越しも苦ではなかったし、クラーナと一緒に買い物するのも、それはそれで楽しそうだ。


「え?」


 しかし、そこで何故かクラーナは目を丸くした。

 何か問題があるのだろうか。


「アノンも行ってくれるの? 買い物だから、私一人でも大丈夫だと思うけど……」

「ああ……」


 どうやら、クラーナは私が一緒に行くことに、そんなことを感じているらしい。

 私を一緒に行かせるのが、悪いとでも思っているのだろうか。


 今更、クラーナを一人で行動させるつもりなどない。

 私にとって、クラーナと一緒にいることは、当然なのだ。


「一緒の方が楽しいし、荷物とか持てるからね? 変な遠慮とかしないでよ」

「……そうね。ごめんなさい」

「謝らなくていいよ。私のこと思っていってくれたのはわかるし」

「アノン……ありがとう」


 私の言葉に、クラーナは笑ってくれる。

 尻尾も大きく振っていることから、嬉しんでくれているようだ。


 そう思ってくれるのなら、私も嬉しい。


「それじゃあ、行こうか?」

「ええ」


 私の伸ばした手を、クラーナが掴む。

 クラーナの温かさが、手に伝わってくる。


 こうして私達は、買い物に向かうのだった。

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