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第3話 私がいるから安心して欲しい

 私とクラーナは、ギルドに向かっていた。


「あなた、荷物は大丈夫? 重くないかしら?」

「うん、大丈夫だよ。ありがとう」


 クラーナは、とりあえず私への警戒を解いてくれたみたいだ。

 よく見ると、その尻尾が少し揺れている。

 これは、犬と同じで喜んでいるということなのだろうか。


「うーん?」

「……何よ?」

「いや、尻尾がね」

「え? ……あっ!」


 私が指摘すると、クラーナは顔を赤くした。


「違うわ。これは、その気分で……別に嬉しいとか、そういうことじゃないから」

「やっぱり、嬉しいんだね」

「なんで、そうなるのよ!?」


 クラーナは、わかりやすい性格のようだ。

 ちょっと素直じゃないところも、また可愛らしいと思えた。


「おい、あれって……」

「ああ、獣人に……ガランの娘だぜ」


 私とクラーナが話していると、周囲からそんな声が聞こえてくる。

 気にしたくはないけど、耳に入ると、やはり嫌な気分にはなるものだ。

 人の顔を見て、悪口とは何てムカつく奴らなのだろう。

 

「……」

「クラーナ?」


 私が怒っていると、隣のクラーナがとても悲しそうな顔をしていた。

 クラーナは、私と比べると少しだけ繊細なようだ。

 ここは、私が慰めなければならないだろう。


「クラーナ、気にしなくていいんだよ? あんなの」

「わ、わかっているわよ……」


 クラーナの顔は、あまり晴れていない。

 クラーナの心についた傷は深いようで、私の一言だけで癒すことはできないようだ。

 だけど、これで諦める私ではない。


「クラーナ」

「えっ? 何よ、急に?」


 私は、クラーナの手を握った。


「大丈夫、私がいるよ。だから、少しは安心して?」

「あなた……」


 クラーナの表情が、少しだけ明るくなったような気がする。

 少しは私の存在で、元気になってくれたかな。


「あっ……!」

「もう、ギルドね……」


 そうこう言っている内に、ギルドに着いていた。


「それじゃあ、さっさと換金しよっか」

「ええ」


 私とクラーナは、ゆっくりとギルドの中に入っていく。


「おい、あれ……」

「獣人だぜ……」

「ガランの娘もいるぜ……」


 私達の入場に、周囲の者達が騒ぎ出す。


「気にしないよ」

「あっ……」


 それに少し怯むクラーナを、私は引っ張っていく。

 さっさと換金を済ませて、こんな居心地の悪い場所から立ち去る。それが一番いいと思ったからだ。


「受付さん」

「ああ、はい、はい……獣人? それに……ガランの娘かよ……」


 受付に声をかけると、悪態をつかれる。

 この反応はムカつくけど、一応仕事だけはする奴らだ。今は、我慢するとしよう。


「デビルベアの換金をよろしく」


 私がそう言うと、目を丸くされた。


「……デビルベア? そんな強い魔物を?」


 そういえば、デビルベアは中々に強い魔物だ。それを倒したとなると、驚かれるのも無理はないかもしれない。


「証拠は、いっぱいあるよ」


 私はクラーナに合図して、デビルベアからとった毛皮などを受付に見せつける。

 受付の驚きが、さらに加速していく。


「そ、そんな……本当に……」

「これでわかったよね。かなりの値になるよね?」

「ま、まあ……」


 こうして、デビルベアは、結構な高値になったのだ。

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