第48話 髪型の悩み
「ラノア……少し髪が伸びたわね?」
「あれ? そうかな?」
ある日のお風呂上り、クラーナはラノアの髪を魔法具ドライヤーによって乾かしながら、そのように呟いた。
確かに、ラノアの髪の毛は少し伸びている。いつもよりも長めになっているので、そろそろ切った方がいいだろうか。
「次の休みに散髪しようか?」
「うーん……どうしよう?」
「あら? 何かあるの?」
私の言葉に、ラノアは考えるような仕草をした。
いつもなら快く散髪を受け入れてくれるのだが、どうしたのだろうか。
「伸ばしてみるのもいいかなって思ったんだ」
「あら……」
「ああ、まあ、それもいいかもしれないね……」
「ええ、ラノアがそうしたいならそれでもいいのではないかしら」
髪型というものは、個人の自由だ。ラノアが髪を伸ばしたいというなら、反対する理由はない。
きっと、髪を伸ばしたラノアもとても可愛いだろう。正直、見てみたいという気持ちもある。
「クラーナは髪が長いけど、どんな感じ?」
「どんな感じ? まあ、別に不便があるという訳ではないわよ? ああ、いえ、それは多分慣れね。普通に考えたら、短い方が楽だと思うわ」
「ああ、それはそうだね。私も面倒だから短くしている所はあるし」
クラーナの言葉に、私は頷いた。
私も髪を伸ばそうかと思ったことがない訳ではなかった。いや、あの時は単に散髪に行くのが面倒くさかっただけだっただろうか。
だが、結局私はばっさり切った。髪を洗ったりなど、色々と大変だったからだ。
「そうなんだ。それじゃあ、伸ばさない方がいいのかな?」
「そういう訳ではないわ。髪が長くて良かったこともあるもの」
「そうなの?」
「ええ、髪が長いとね。アノンに長い時間髪を洗ってもらえるの」
「あ、それはいいね?」
クラーナの意見に、ラノアは同意した。
確かに、私はクラーナの髪を長い時間をかけて洗う。私がクラーナに洗ってもらう時よりも、時間は遥かに長いはずだ。
「でも、それはアノンに悪いわよね? ごめんなさいね、いつも長い時間をかけて洗ってもらって……」
「あ、ううん。それは全然大丈夫。クラーナの髪を洗うの、私は好きだからさ」
「そう? それなら良かったけど」
クラーナの髪をゆっくりと洗うのは、私にとっても楽しい時間であった。だから、私はラノアの髪が伸びてもまったく問題はない。
「うーん……どうしようかな?」
「まあ、ラノアの好きにすればいいと思うわ」
「でも、どちらにしても散髪は必要かな? 揃える必要はあると思うし」
ラノアは、髪型に関してかなり悩んでいるようだ。
恐らく、決定はもう少し先になるだろう。私達はそれを気ままに待つとしよう。




