第47話 体温を感じながら
私は、クラーナとラノアとともにベッドの上に寝転がっていた。
この家のベッドは元々大きいものであったため、三人で寝ても特に問題はない。そのため、私達はずっと寄り添いながら眠っている。
大切な人達の温もりを感じながら眠るというのは、とても素晴らしいことだといえるだろう。クラーナと眠り始めた時から、私は睡眠にそれ程不便を感じたことはない。なんというか、よく眠れるようになったのだ。
「アノンもクラーナも温かい……」
「ふふ、温かさでいったらラノアの方が上だと思うけど?」
「え? そうかな?」
「うん、そうだね。ラノアの方が体温は高いと思う」
「そうなんだ……自分ではわからないな」
子供であるラノアの体温は、私達よりも高いように思える。というか、私よりは絶対に高いだろう。それはそもそも、種族の違い的に間違いない。
「元々、犬の獣人は人間よりもちょっと体温が高いよね?」
「ええ、そうね」
「そうなんだ?」
犬と人間の両方の性質を受け継ぐ犬の獣人は、人間とは異なる部分が少しある。体温に関しても、その違いの一つだ。
犬の獣人の平均的な体温は、人間よりも少し高い。クラーナに関しても、私よりは少し温かいのである。
「でも、私はアノンの体温が好きだよ?」
「え?」
そこで、ラノアは私に身を寄せて来た。彼女の温もりが伝わってくる。本当にとても温かい。
「ラノアにとって、私の体温が丁度いい温度ってこと?」
「いいえ、そういうことではないわ」
「え?」
私の質問に答えてくれたのは、ラノアではなくクラーナだった。
彼女は、私の手をゆっくりと握ってきた。クラーナも、私の体温が好きだということなのだろう。
「アノンの体温だから、安心できるってことだよ?」
「私の体温だから?」
「ええ、温度とかではなくて、誰の体温かということが大事でしょう?」
「……まあ、それはそうだね」
私はラノアとクラーナとの距離を詰める。確かに、二人が温かいととても安心する。それは二人が、そこにいてくれるということが鮮明に伝わるからなのだろう。
「いやあ、いいですね……私も昔、あの人と一緒にそうやって眠っていましたね」
「あわっ……!」
「アノン、落ち着いて……」
「あ、うん……」
ほのぼのとした私は、突然現れたレイコさんに思わず声をあげてしまった。
最近はレイコさんが現れても体が反応するくらいだったが、寝る前という暗い時にその半透明の体が現れられるとやはりびっくりしてしまう。
ただその話の内容はとても興味深いものであった。レイコさんも、ローレリムさんと私達のように眠っていたらしい。
本当に二人は仲が良かったようだ。それはなんというかほっこりとする。




