第41話 早く帰らないと
「それじゃあね、シスター。また来るからね!」
「ええ、ラノア。またいつでも遊びに来てください」
「シスター、お世話になりました」
「元気でね、シスター」
「ええ、アノンさんとクラーナさんもどうかお元気で。それと、私が言うことではないかもしれませんし、お二人に言うまでもないことだとは思いますが、ラノアのことをよろしくお願いします」
「もちろんです」
「ええ、この子をこれからも幸せにすると約束するわ」
私達は、シスターとそのように言葉を交わした。
教会に一晩泊まらせてもらって、私達は帰ることにした。件の魔物が討伐された以上、エルトニデアの町に留まっておく必要がなくなったからだ。
「それじゃあ、お元気で」
「シスター、またね!」
「ええ!」
私達は、シスターに手を振ってから歩き始める。目指すは、久し振りの我が家だ。
そうやって歩きながら、私は昨晩先に旅立った人達のことを思い出す。アンナさんとカルーナさん、それに厄災の戦姫ことクラメリアさん達は、それぞれ目指すべき場所へと一足先に旅立ったのである。
「……本当に、クラメリアさんは大丈夫なのかな?」
「ええ、多分大丈夫でしょう。彼女は強いから」
クラメリアさんは、私達の案内の申し出を断った。なんでも、自分で世界をゆっくりと見て回りたいらしく、それは一人の方が都合がいいようなのだ。
私の手紙ももたせてあるし、家に帰ったらガランの部下だった人達に伝令も送るので、アジトに着いて揉めることはないだろう。
ただ、無事にガランのアジトに辿り着けるかは心配である。位置は教えてあるが、迷ったりしないだろうか。
「まあ、いざとなったら彼女も人に聞くでしょうし、あんまり心配しても仕方ないと思うわ」
「まあ、そうかもしれないね」
私は、クラーナの言葉にゆっくりと頷いた。
確かに、あまり心配し過ぎても仕方ないのかもしれない。私達よりも何十倍も強いクラメリアさんなら、多少の問題はなんとかできる。そんな彼女のことを心配するのは、おこがましいことなのかもしれない。
「二人とも、何話してるの? 早く帰ろうよ」
「あ、ごめん。ラノア」
「今行くから、少し待って」
私達が話していると、ラノアは既に数歩先にいた。
まだ町の中だが、この町は犬の獣人をあまり快く思っていない人も多い。そのため、目を離すべきではなかった。これは少し反省だ。
「というか、ラノアはそんなに早く帰りたいの?」
「早く帰りたい訳じゃないよ。でも、早く帰らないと帰れなくなりそう」
「ああ、そうだよね。確かにそうかもしれない」
「……まあ、それ程距離がある訳ではないし、また来ればいいのよ」
「……うん」
私とクラーナは、ラノアの手をそれぞれ握る。
こうして、私達はエルトニデアを後にするのだった。




