第40話 二人との別れ
私達は、厄災の戦姫も含めてエルトニデアの町の教会に戻って来ていた。
シスターは、一人犬の獣人が増えていることに驚いているようだった。一方、ラノアは早速彼女に話を聞こうとしている。
「あなたは誰?」
「妾は、厄災の戦姫というものじゃ」
「やくさいのせんき?」
「ふむ……クラメリアという名前がかつての名前じゃ。まあ、好きに呼べばよい」
厄災の戦姫は、ラノアにそう自己紹介をした。
そういえば、私達も彼女の名前は聞いていなかった。とても間の抜けた話である。最も基本的なことを聞いていなかったなんて。
「さてと、話はまとまったみたいだね」
「アンナさん?」
「私とクラーナは、そろそろ行かせてもらうよ。グラムベルドを仕留めたことを仲間に報告しないといけない」
「もう行ってしまうんですか?」
「近くの町で、仲間が調査しているんだ。早く報告して、それを止めてあげたい」
「ああ、なるほど……」
アンナさんとカルーナさんは、もう行ってしまうようだ。もう少し彼女達と話したい気持ちはあるが、事情が事情なので引き止めることも憚られる。
「ありがとうございました。今回の事件は、私達だけでは解決できなかったかもしれません。お二人のおかげで、全てが終わりました」
「いや、そんなことはないと思うよ。二人の実力なら、きっと大丈夫だったと私は思っている。もちろん、多少は苦戦したかもしれないけど、グラムベルドと鋼竜くらいには勝てたと思う」
「そう言ってもらえると嬉しいわね。まあ、真実がどうだったとしても、あなた達のおかげで助かったのは事実だわ」
「役に立てたなら幸いです。まあ、主に役に立ったのはお姉ちゃんですけど」
私とクラーナは、アンナさんとカルーナさんとそのようなやり取りを交わした。
二人には、随分とお世話になった。短い間ではあったが、二人との時間は楽しかったと思う。できることなら、またどこかで再会したいものだ。
「二人とも、元気でね」
「ラノアちゃんも元気で」
「アノンとクラーナと一緒に、幸せにね?」
「うん!」
アンナさんとカルーナさんは、ラノアと目線を合わせて彼女にも声をかけてくれた。
笑顔で送ろうと思っているのだろう。ラノアは別れを悲しむ素振りを見せはしない。
「シスターにも、お世話になりました」
「いえ、お二人もどうか良い旅を」
「それじゃあ、厄災の戦姫、いやクラメリア、あなたも元気で」
「うむ、達者でのう」
「それじゃあ、行こう、カルーナ」
「うん、お姉ちゃん!」
シスターとクラメリアさんとも挨拶をしてから、二人はすぐに歩き始めた。
こうして、アンナさんとカルーナさんと私達は別れるのだった。




