第28話 助けてくれたのは
「えっと……助けてくれて、ありがとうございます」
「うん? ああ、別に気にしなくていいよ。それより、あなた達の獲物を取ってしまったんじゃないかと心配していたんだけど……」
「いえ、流石にデビルベア四体は厳しかったので……」
「それならよかったよ」
私がお礼を言うと、赤髪の女性が答えてくれた。
彼女の手には、先程まで光のようなものがあったはずなのだが、それはいつの間にか消え去っている。
恐らく、魔法のようなものだったのだろう。見たことがない魔法ではあるが。
「私は、アンナ。こっちは、妹のカルーナ。あなた達の名前を教えてもらってもいいかな?」
「あ、私はアノンです。こっちはクラーナで、こっちがラノアです」
「なるほど……」
アンナさんは、私とクラーナとラノアをそれぞれ順番に見た。
その後彼女は、少し考えるような表情になる。一体、どうしたのだろうか。
「よくわからないけど、あなた達は家族という認識でいいのかな?」
「え?」
「なんとなく、雰囲気がそんな感じがしたんだ。気を悪くしてしまったら、申し訳ないけれど……アノンとクラーナは、そういう関係なのかな?」
「それは……」
私はアンナさんの指摘に驚いていた。
確かに私とクラーナは、そういう関係ではある。だが、それがまさか一目で見抜かれるとは思っていなかったのだ。
そのため、少し怯んでしまった。アンナさんは一体、何者なのか。そんな考えが、私の頭の中に過ってくる。
「……そういうあなた達も、只ならぬ関係のようね?」
「あ、わかりますか?」
「ええ、あなた達からは同じ匂いがするもの。それに、その指を見たら予想できるでしょう?」
「指輪? あっ……」
クラーナの言葉に、私は気付いた。
そういえば、アンナさんとカルーナさんは左手の薬指に指輪をつけているのだ。
そして同時に、私達の薬指にも指輪がついていることを思い出した。もしかして、アンナさんはそれを見て、あのような指摘をしたのだろうか。
「思っていたよりも簡単なことだったかな?」
「あ、えっと……」
「ごめんね、色々とあって相手を観察するのが癖になっているんだ」
アンナさんは、少し鋭い目つきで私にそう言ってきた。
それは、戦士の目だ。恐らく、彼女の観察というのはそういうことなのだろう。
私なんかも、魔物と対峙する時には相手を観察する。アンナさんの場合は、それが人間にも及んでいるようだ。
ということは、彼女は対人戦も多く経験しているということなのだろうか。
「ああ、そうだ。三人に少し聞きたいことがあるんだ。この辺りで、普段見たことがない魔物を見なかったかな?」
「え?」
「私達は、新種の魔物を探しているんです。その魔物が、エルトニデアという町の人達を困らせていて……」
アンナさんとカルーナさんの言葉に、私とクラーナとラノアは顔を見合わせた。
エルトニデアを困らせている魔物。それは、私達がその町に向かう理由だったからだ。




