第24話 広いお風呂で
私とクラーナとラノアは、レフィリーナちゃんとともにお風呂に入っていた。
「それにしても、広いお風呂だよね……」
「ええ、そうね……」
屋敷の広さと同じように、お風呂もそれなりの広さを誇っていた。
以前、三人で雪の降る町フルルッカに行った際、温泉に入ったが、ここのお風呂はそれと同等以上の広さである。
たくさんの人が入る温泉と同じ広さのお風呂が個人の家にあるというのは、なんというかとてもすごいことだ。
「泳げそうなくらい広いよね!」
「ラノア、確かにそうだけど、泳いでは駄目よ?」
「それは、わかっているよ……ちょっと残念だけど」
ラノアの言う通り、このお風呂なら普通に泳げるだろう。もっとも、それは非常に行儀が悪いことではあるのだが。
「その……ラノアは、いつも三人でお風呂に入っているのよね?」
「え? うん、そうだよ」
そこで、ラノアに対してレフィリーナちゃんが質問をした。
彼女は、なんだか少し縮こまっている。流石に、私やクラーナと一緒にお風呂に入るのは気まずいのだろうか。
今回こうして四人でお風呂に入っているのは、ラノアの発案だ。私達はいつも一緒に入っているし、友達とも一緒に入りたい。そういう気持ちが、彼女にはあったのだろう。
ただ、レフィリーナちゃんにとって、それが嬉しい提案であったとは限らない。友達の親とお風呂というのは、そんなに気が進むものではないのではないだろうか。
「羨ましいですわね……私は、この広いお風呂にいつも一人で入っていますから」
「レクリアさんとは、一緒に入らないの?」
「ええ……それは、私の方から断ってしまったので」
「断った?」
「なんだか、恥ずかしいと思ってしまって……」
今回ラノアは、レクリアさんのことも誘っていた。
しかし、彼女はそれを断った。どうやら、それはレフィリーナちゃんのことを慮ったためであるようだ。
もしかしたら、レフィリーナちゃんは既に反抗期に入っているのかもしれない。本人の性格も関係している可能性はあるが。
「恥ずかしいの? どうして?」
「ラノアは、恥ずかしくありませんの?」
「私は、アノンやクラーナとくっついてお風呂に入るの大好きだよ?」
レフィリーナちゃんの質問に答えながら、ラノアは私とクラーナの間に入って来た。
そして、そのまま私達の腕に自分の腕を絡ませる。広いお風呂であるというのに、私達はいつも通りくっつくことになった。
「まあ、ラノアには犬の獣人としての性質もあるから、あなたとは少し考え方が違うのかもしれないわ」
「犬の獣人の性質?」
「犬って、人や仲間に寄っていくでしょう? 私達も、それは同じということよ」
「なるほど……」
ラノアは、犬の獣人である。そんな彼女は、人間とは少しだけ感性が異なるということなのだろう。
とはいえ、それには本人の性格もあるはずだ。ラノアは、とても素直で真っ直ぐである。その感情を表に出すことを躊躇わない。それが、この行動に直結しているのだろう。




