第18話 気が進まない依頼
私とクラーナは、いつも通り依頼に来ていた。
冒険者の依頼というのは、色々とある。だが、基本的には魔物の討伐が多い。
私達は、それを生業としている。魔物を討伐して、報酬を得ているのだ。
魔物の種類によって、報酬は変わる。
強い魔物を倒す方が、多くの報酬をもらえるのだ。
しかし、私達は基本的に報酬よりも、安全を優先している。
そこまで危険な魔物の討伐には向かわない。それが、私達の方針である。
ただ、最近はそうもいかなくなってきた。
私とクラーナは、色々とあってこの町でも随一の冒険者となっている。
そういう立場になってしまったため、強い魔物と戦わなければならなくなったのだ。
それは、別に断れない訳ではない。
だが、実力がない者達が強い魔物に挑むといい結果は得られない。それ所か、その人達が戻ってこない可能性がある。
それは流石に避けたいので、私達はそういう依頼を受けることにしているのだ。
「はあ……」
「アノン、そんなに落ち込まないで」
「でも……」
そういう訳で、私達は依頼にやって来た。
しかし、今回の依頼が、私はとても気が進まない。
なぜなら、今回討伐する魔物は、私が苦手な魔物だからだ。
「幽霊は、やっぱり怖いよ……」
「大丈夫だから、落ち着いて……」
「ううっ……」
震える私の体を、クラーナはそっと引き寄せて抱きしめてくれる。
今回の討伐は、凶悪な魔物の討伐だ。その魔物は、幽霊のような魔物らしいのである。
私は、幽霊というものがとても怖い。
そのため、そういった系統の魔物は、普段避けているのだ。
「アノンは、相変わらずそういうのが無理なんだな……まあ、私も得意であるとは言い難いが……」
「そうですわね……私も、得意ではありませんわ」
一緒に魔物討伐をするリュウカさんとキーラさんがそう言った。
二人も、私程ではないが、幽霊は得意ではないようだ。
「私は、平気ですよ」
「ええ、私もです」
ティネちゃんとカルノさんは、平気なようである。
ティネちゃんは、犬の獣人であるため、そうだと思っていた。普段から、そういう存在を感じ取れるはずなので、平気なのだろう。
カルノさんに関しても、平気そうだと思っていた。
彼女は、いつも冷静である。取り乱している場面が、まったく想像できない。
「そもそも、私は戦闘面の相性も良くないんだよね……幽霊系統の魔物って、徒手空拳が効かない訳だし……」
「大丈夫、大丈夫よ、アノン……」
やっぱり、この依頼を受けたのは間違いだったのかもしれない。
クラーナに抱き着きながら、私はそんなことを思うのだった。




