第9話 些細なことがきっかけで
「アノン、どうしてわからないのかしら? あなたが、こんなに強情なんて、私知らなかったわ」
「クラーナの方こそ、強情だよ。いい加減、認めてくれないかな?」
私は、クラーナと一緒に毎日楽しく暮らしている。
ただ、本当に時たまにしかないが、彼女と喧嘩することもあるのだ。
それは、些細なことがきっかけである。例えば、どっちがより相手のことが好きなのかとか、そんなことだ。
「……ふん」
「む……」
そんな風に喧嘩をした後、私達はほとんど決まってソファの上で背中合わせに座る。お互いの方を見ないようになるのだ。
しかし、そんな時でも私達は離れようとしない。結局、相手のことは好きなので、くっついていたいのである。
「……」
「……」
そうやって背中合わせで体温を感じていると、その温もりとは裏腹に心がどんどんと冷めていく。
だんだんと冷静になっていくのだ。どうしてあんなことを言ったのか、どうしてあんなことで怒ったのか、それがわからなくなって、後悔の気持ちでいっぱいになる。
そんな気持ちになって、ふと後ろを振り返ると、クラーナと目が合う。それはきっと、彼女も同じことを考えていたからだろう。
「クラーナ、ごめんね」
「私の方こそごめんなさい」
目が合って、私達はどちらかがすぐに謝罪をする。
その謝罪に対しても、すぐに応えを返す。お互いに、仲直りしたいという気持ちは一緒なのである。
「仲直り……しようか?」
「ええ、そうしましょう」
「んっ……」
お互いに謝罪を終えたら、後は口づけをするだけだ。
それが、私達の仲直りの合図である。
彼女とこうやって口づけをするだけで、私の体には幸せが広がっていく。やっぱり、こうやって仲良しなのが一番だ。それを改めて認識する。
「アノン……」
「クラーナ……」
そして、私達はお互いが孤独だった時間を埋めるためにも、深い場所へと落ちていく。
もっとクラーナを感じたい。そんな気持ちが胸の底から湧き上がってくる。
その気持ちに逆らう必要はない。その流れに乗って、私はクラーナを求めていく。
「はあっ……はあっ……」
「アノン、可愛いわ……」
「……クラーナの方が、可愛いよ」
「あら? ……そんなことを言うと、また喧嘩になってしまいそうね」
「ああ、そうだね。それなら、お互いに可愛いということで、一つ手を打とうか?」
「ええ、それが良さそうね……」
そんな風な会話をしながら、私達はお互いに溺れていった。
こうして、私達はさらに仲直りするのだった。




