第1話 服装への注意
※番外編は、時系列がバラバラです。
私とクラーナは、いつものように冒険者の仕事に出かけようとしていた。
「アノン、少しいいかしら?」
「うん? 何かな?」
そんな時、クラーナが私に話しかけてくる。
彼女は、何やら神妙な顔をしている。何か、重要な話でもあるのだろうか。
「……そのホットパンツは、流石にどうかと思うのだけれど」
「え?」
「足を出し過ぎているというか、なんというか……」
クラーナが指摘してきたのは、私の服装のことだった。
今日の私は、といよりも私は大抵の場合、スカートよりもパンツだ。
今日はその中でもかなり短めであるホットパンツである。そのことが、クラーナは気になっているようだ。
「それは、煽情的過ぎるわ。そんなに足を出しては駄目よ」
「そ、そうかな……」
「ええ、そうよ。私は、アノンの足を衆目に晒したくはないわ」
クラーナの言葉は、正直嬉しかった。
それは、私のことを好きだからこそ、出る考え方だと思うからだ。
確かに、私も他人にクラーナが必要以上に肌を晒すのは嫌に思う。ホットパンツは蹴りが出しやすいのでいいと思っていたが、やめた方がいいかもしれない。
「クラーナ、わかったよ。それなら、これからホットパンツは履かないことにするね」
「アノン、わかってくれて嬉しいわ。でも、履かないようにする必要はないのよ」
「え?」
「外に出ないのであれば、別にそれで構わないわ。いえ、むしろ、私はそれを推奨したいくらいよ」
「あ、そうなの?」
クラーナは、私にゆっくりと近づいて来た。
その視線は、明らかに私の太ももの辺りに向いている。
そんなに見られるのは正直恥ずかしい。今まで意識してこなかったが、もしかしてホットパンツというのはすごく恥ずかしい格好なのではないだろうか。
「あの……クラーナ、そんなに見られると恥ずかしいというか……」
「挟まれたい……」
「うん? 挟まりたい?」
私の言葉が聞こえていないのか、クラーナは小声で呟いた。
それは、私の太ももに挟まりたいということなのだろうか。いきなり、なんてことを言い出すのだろう。そういうことは、少なくともこういう時間には言わないで欲しい。
私がそんなことを考えていると、クラーナの視線が段々と下に下がっていった。今は、私のふくらはぎの辺りを見つめている。
「頬ずりしたい」
「頬ずりしたい……?」
クラーナは、またもそんなことを呟いてきた。
こんな時間から、そんな要求はしないで欲しい。増してや、これから依頼に行こうというのにそんなこと言わないで欲しい。
「アノン、挟まれたいし頬ずりしたいし、舐め回したいわ」
「いや、クラーナ、これから依頼に行かないといけないんだよ? というか、ストレートに言ってくるんだね?」
色々と呟いた後、クラーナは私の目をしっかりと見て言ってきた。
どうやら、別にその要求を隠しておこうとかそういうことは思っていなかったようである。
それは、驚くべきことだ。一瞬そう思ったが、よく考えてみるとクラーナはいつもこんな感じであるような気がする。
「アノン、依頼は後からでもできるわ」
「いや、クラーナの要求も後からでもできるんじゃない?」
「こんな気持ちで依頼に行っても、集中できないとは思わない?」
「……もう、仕方ないなあ」
私は、クラーナの要求を受け入れることにした。
なんというか、私も私でいつもなんだかんだいいつつクラーナの要求を受け入れてしまっているような気がする。
まあ、別に生活に困っているという訳でもないし、いいのだろうか。それとも、こういう所の分別はもっとつけた方がいいのだろうか。
そんなことを考えながら、私達はしばらく家でゆっくりと過ごすのだった。




