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パーティを追放されたので、犬耳獣人少女と生きていく。  作者: 木山楽斗
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第99話 今だからこそ

 私達は、いつも通り家でゆっくりとしていた。

 クラーナとラノアとこうやって穏やかに過ごせるのは、私にとって至福の時間だ。とても癒される。


「ねえ、アノン、クラーナ、二人は結婚式ってしたことがあるの?」

「え?」

「あら?」


 そんな中、ラノアからとある質問を投げかけられた。

 彼女の手には、レフィリーナちゃんからの手紙が握られている。恐らく、これはその手紙を読んだ結果の問いなのだろう。


「レフィがね、お母さんの友達の結婚式に参加したんだって、それで二人はそういうことをしたのか気になったんだ」

「ああ、そういうことだったんだね。結婚式か……私達は、開かなかったんだよね……」

「ええ、そうね……」


 私達は、結婚式というものは開いていない。

 色々とあって、そういう催しは開かないことにしたのだ。

 私達は、二人で一緒にいられればそれでいいと思っていた。愛を誓うのに式を開く必要性も感じなかったし、それ程意味があることだとも思わなかったのである。


「そうなんだ。なんだか勿体ないような……」

「勿体ない……まあ、そうかもしれないね。今改めて考えてみると、そういうのも悪くないのかもしれないと、そう思うよ」

「そうね……でも、それは今だからそう思うのでしょうね」

「そうだね……そうだと思う」


 当時と比べると、私達の周りの環境は随分と変わった。

 そんな今だから思うのかもしれない。結婚式を開いておけばよかったと。

 ただ、それは、あくまで今の環境においてそう思うというだけだ。多分、当時の環境ではそう考えることはできなかったのだろう。


「まあ、当時もアノンのウェディングドレス姿を見てみたいとは思っていたけど……」

「それは、私だって同じだよ」

「……今なら、私達のドレスを喜んで作ってくれそうな人がいるわね」

「……ああ、そうだね」


 クラーナの言葉に、私は少し笑ってしまった。

 ドレス一つ取っても、当時と今では違うのだ。本当に、この数年で私達の環境は変化したのだろう。


「それなら、今から結婚式をすればいいんじゃない?」

「え?」

「今から?」

「うん。別に、結婚してからすぐじゃないといけないという決まりはないんだよね? だったら、今からでも遅くないんじゃないかな?」

「それは……」


 ラノアの何気ない指摘に、私もクラーナも驚いていた。

 確かに、彼女の言う通りである。簡単なことという訳ではないが、今の気持ちに素直に従うというのも悪くないのかもしれない。


「クラーナ……」

「アノン……」


 私とクラーナは、顔を見合わせた。

 どうしようかとお互いを見つめたのだ。

 その顔を見ていて、答えはすぐに決まった。お互いに、笑みを浮かべていたからだ。

 こうして、私達は結婚式に向けて準備することに決めるのだった。




◇◇◇




 私達は、小物屋さんまでやって来ていた。

 ここは、私達にとって有益なものがいくつも置いてある場所だ。ただ、今日は買い物が目的で来た訳ではない。


「なるほど、それで私の元に来たのね」

「はい、申し訳ありませんが、お願いできますか?」

「喜んで協力するわ。二人は、家の常連さんだもの。このくらい、お安い御用というものよ」


 私達がここに来たのは、小物屋さんに結婚式に関する協力を求めるためだ。

 こういう時に、小物屋さんはとても頼りになる。顔が広く、色々なことを知っているため、相談するには打ってつけの相手なのだ。


「まあ、とりあえず、会場だとかそういうものは知り合いにあたればなんとかなると思うわ。それは決まり次第連絡するとして……そうね、あなた達には誰を招待するかとかを考えておいてもらえるかしら?」

「あ、はい。わかりました」

「ああ、それとドレスの手配なんかも任せようかしら? 最近の服屋さんは、あなた達にも好意的よね?」

「はい、それじゃあ、まずはそちらからあたってみようと思います」


 小物屋さんは、すぐに段取りについて考えてくれた。

 それは、ありがたいことである。正直、何から手をつけていいか、よくわかっていなかったからだ。


「ふふ、なんだかやる気が出てくるわね……あなた達の晴れ舞台、素敵なものにしましょうね」

「はい……ありがとうございます」

「本当にありがとう。それと、これからよろしくお願いします」


 私とクラーナは、小物屋さんに頭を下げてお礼を言った。

 私達の周りには、こういう優しい人達がいっぱいだ。そんな人達と巡り会えた縁に、私達は改めて感謝するのだった。




◇◇◇




 私達は、服屋さんに来ていた。

 私達のウェディングドレスをお願いするためだ。


「そういうことなら喜んで引き受けてさせてもらうわ。ウェディングドレス……わくわくするわねえ」

「あ、はい……」


 そのお願いに対して、カルテリーナさんはとても喜んでいた。

 基本的に、彼女は依頼をするとこういう反応をする。服を作ることを心から楽しいと思っているからこそ、こういう表情をするのだろう。

 彼女がこういう人であるのは前から知っている。そのため、驚くことはない。


「……あれ? そういえば、二人ともウェディングドレスということでいいのかしら?」

「え? あ、はい。そうですね……それでお願いします」

「ええ、そうね……まあ、お互いにお互いのウェディングドレス姿がみたいもの」

「なるほど、そういうことなのね……」


 私達は、お互いにウェディングドレスで結婚式を挙げるつもりだ。

 理由は、それを着た姿を見たいとお互いに思っているからだ。


「それも新境地ということね……ふむ、ここはお揃いの方がいいのかしら? まあ、クラーナちゃんには耳や尻尾があるから、完全に一緒にはならないけど……」

「お揃い……そうですね、それがいいです」

「ええ、二人一緒というのは、なんだか素敵よね」

「うん、そう思う」


 私達は、お揃いのドレスにしてもらうことにした。

 それが、素敵なことだと思ったのだ。それに、なんだか私達らしいような気もする。


「それじゃあ、採寸等から始めようかしら? ああ、やる気が出てくるわ」

「はい、お願いします」

「お願いするわ」


 カルテリーナさんの言葉に、私達は頭を下げてお願いした。

 こうして、私達の結婚式に関する計画は、どんどんと進んで行くのだった。

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