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パーティを追放されたので、犬耳獣人少女と生きていく。  作者: 木山楽斗
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第98話 いい方向へ

 旅館で一夜を明かして、私達は帰ることにした。

 温泉も気持ちよかったし、食事も美味しかったし、部屋も快適だったし、旅館は本当にいい所だった。紹介してくれたエルキーナさんにも、感謝の気持ちでいっぱいである。


「エルキーナさん、色々とありがとうございました」

「いえ、お礼を言うのは、こちらの方です。あなた達のおかげで、私は長年抱いていた思いを解き明かすことができました」

「そう思ってもらえたなら、こちらとしても嬉しい限りです」


 馬車の前で、私達は会話を交わした。

 私達がここに来た目的であるエルキーナさんの思いを解き明かすことは達成できたようである。それなら、こちらとしても安心だ。


「また会いましょう、エルキーナさん」

「ええ、アノンさん」


 私とエルキーナさんは、固く握手を交わした。

 またいつか、彼女とは会えるはずだ。その時、彼女から良い変化が起こったという知らせが聞けることを楽しみにしていよう。


「さて、それではそろそろ行きます。お元気で」

「ええ、アノンさんも。それに、クラーナさんに、ラノアちゃん」

「はい」

「ええ」

「うん!」


 私達は、エルキーナさんの言葉に応えて、馬車に乗っていく。

 こうして、私達はフルルッカから去るのだった。




◇◇◇




 後日、私達の元にゲルーグが訪ねて来た。

 彼には、どうなろうとも来てもらうことになっていた。ことの顛末を伝えるためだ。


「そうですか……良い結果になりましたか。流石は二代目……お見事です」

「うん、まあね……でも、そういう感じの称賛はやめて欲しいんだけど……」


 私の言葉を聞いて、ゲルーグは笑顔を見せた。彼も、この結果を喜んでいるのだろう。


「……二代目、この際だから言わせてもらいますけど、本格的にこっちの仕事をしてみませんか?」

「え?」

「名ばかりじゃなく、本当に俺達の上に立ってもらえないかと、そう聞いているんです」


 そこで、ゲルーグは私にそんな質問をしてきた。

 それは、いつだったかクラーナとも話したことだ。ガランの仕事を継ぐこと、それは私としては複雑な思いを抱いていることである。

 今の仕事を継ぐことに、私は実の所そこまで気が引けている訳ではない。今の仕事は、正当なるものだからだ。

 だが、私はここを離れたくないと思っている。そういう理由で、今まで断ってきたのだ。


「……そのことについて、少し話し合いたいと思っていたんだ。いい機会だから、少しだけ話させてもらえるかな?」

「二代目……もちろんです」


 私の言葉に、ゲルーグは力強く頷いてくれた。

 私は、いつもその要請を何も言わず断っていた。いつもとは違う反応だったので、彼も少し期待しているのかもしれない。

 その期待に応えられるかどうかはわからない。だが、とりあえず話してみるべきだ。


「ふふっ……」

「クラーナ……うん」


 私は、クラーナの方を見てみた。

 すると、彼女が笑顔を向けてくれる。私の選択を、彼女も喜んでくれているのだろう。

 こうして、私はゲルーグと話すことになった。きっと、これで話はいい方向に進んでくれるだろう。

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