第88話 悪魔の善行?
私は、クラーナとラノアとともにガランの部下であるゲルーグの話を聞くことにした。
どうやら、ガランに関することで何か大変なことが起こっているらしい。一体、何が起こっているというのだろうか。
「ことの始まりは、数十年にも前に遡ります。二代目も生まれる前のことです」
「私が生まれる前か……その頃から、あの人は悪党だったの?」
「……ええ、そうですね。悪党でした。ただ、今回は悪行を犯したという訳ではありません。お頭は、一つの町を救ったんです」
「救った……なんだか、あまり信じられない話だけど……」
ゲルーグの言葉を聞いて、私が最初に抱いたのはそんな感想だった。
あの人が、一つの町を救う。そんな善行をしていたとは、にわかには信じられないのだ。
「アノン、もう少しお義父様に対して優しさを見せてあげて」
「そうだよ。お祖父ちゃんは悪い人だったのかもしれないけど、そういうこともあったのかもしれないよ?」
「……わかった。とりあえず、話を聞いてみる」
私が余程険しい顔をしていたのか、クラーナとラノアが言葉をかけてきた。
確かに、私はガランに対して少し厳しすぎるかもしれない。話を聞く前から、否定するのは良くないだろう。
「ごめんなさい。話してもらえるかな? ガランのことを……」
「……ええ。先程も言った通り、数十年前、ガラン一味はフルルッカという町に立ち寄ったんです。フルルッカは、北の方にある町で、雪の積もる綺麗な町でした。そんな綺麗な町でしたが、訪れた時からどうも違和感がありました。町に活気がなかったんです」
「活気がなかった? それは、確かに嫌な感じだね」
町の活気がないというのは、どう考えてもいいことではない。何か問題があることは、明らかだろう。
「町の人達に話を聞いてみた所、なんでも領主の貴族の取り立てが厳しいらしくて……まあ、要するに圧政が敷かれていたんです」
「圧政……」
「お頭は、権力というものは嫌いでした。特に、我が物顔で威張っている貴族というものは、大嫌いな人間でした。だからこそ、その領主が許せなかった。そんな風に威張っている奴らは叩き潰してやろうと思った訳です」
「……ああ、なるほど、それはなんとなく理解できるよ」
ガランの行動は、とてもよく理解できた。
あの人ならそうするだろう。そう思える程に、その行動は納得できるものだった。
彼は紛れもない悪党だ。だが、そういうことに関しては許さない。そういう人間であることは、私もよくわかっている。
「こうして、ガラン一味はフルルッカを領地とする貴族に襲撃をかけました。まあ、結果として悪徳貴族は皆……いえ、まあ、悪徳貴族は討伐された訳です」
「なるほど、まあ、あの人の後の悪評を考えれば、そうなるよね」
ガラン一味は、非常に強大な力を持っていた。
貴族の権力をもってしても、それを止めることはできなかったようだ。
それは、なんとなくわかっていたことである。ガラン一味がその勢いを削がれていないどころか、その悪名を轟かせていることから、勝利したのだとは思っていた。
「……それなら、特に問題はないんじゃないかしら? 悪徳貴族が討伐されて、めでたしめでたしでいいんじゃない?」
「うん、そうだよ。何が問題なの?」
クラーナとラノアの言葉には、私も同意である。
この話は、ガランが数少ない善行をしたというだけだ。まあ、善行かどうかは怪しい所だが、少なくとも町の人は喜んだだろう。
貴族からの報復があるとか、そういうことでもないはずだ。それだったら、彼の歯切れが悪い訳がない。
「問題は……とても複雑なものです。二代目、心して聞いてもらえますか?」
「……わかった。よくわからないけど、覚悟を決めておくよ」
ゲルーグは、とても深刻そうな顔をしていた。
その顔を見ているとわかる。彼が、私がとても衝撃を受けることを言ってくるつもりなのだと。




