第81話 魔物の需要
私とクラーナは、リュウカさん達ともにギルドに帰ることになった。
新種の魔物については、リュウカさんが運んでいる。私達の戦いの記録と、あの死体を調べることによって、あの魔物の攻略方法が作られていくのだ。
「アノン、しっかり掴まっていてね?」
「あ、うん……」
体が小さくなった私は、クラーナにお姫様抱っこされている。
別に歩けない訳ではないのだが、服のサイズが合っていないため、彼女に運んでもらうことになったのだ。
クラーナは、背中に弓と矢を背負っているため、このような運び方になった。なんというか、少し恥ずかしい気もする。
「クラーナ? 重くない?」
「ええ、重くないわ。多分、アノンが思っているよりもずっと軽いと思うわよ?」
「え? そうなの?」
「子供の姿なんだもの。そんなに重い訳がないでしょう?」
「そう……なのかな?」
クラーナは、私のことを全然重たいと思っていないようだ。
子供の姿とはいえ、それなりの重さはあると思うのだが、そうでもないのだろうか。
まあ、クラーナは元々結構力持ちである。そのため、私の体重がそれなりでも、重いと感じないのだろうか。
「それにしても、アノンは本当に子どもになったんだな?」
「ええ、そうみたいなんです」
「こいつのあの光線に、そんな効果があったなんてな……恐ろしい光線だな」
そこで、リュウカさんが私に話しかけてきた。
彼女は、興味深そうに魔物と私を交互に見ている。魔物の力に、驚いているようだ。
「でも、ある程度の需要はあるのかもしれないな……」
「需要? どういうことですか?」
「ほら、私達やそれ以下の年の奴らは、こいつの攻撃を受けると一たまりもないし、命も危ないのかもしれないけど、ある程度年が上の人達だったら、この攻撃を受けてもなんともないんじゃないか? むしろ、受けたいという人がいるかもしれない」
「……確かに、そうかもしれませんね」
リュウカさんの見解は、とても納得することができた。
確かに、この魔物の光線は一定以上の年齢の人にとっては、むしろ好都合なものなのかもしれない。
私達くらいの年齢だった場合は、子供になって戦力が減ってしまうが、一定以上の年齢の人達は若返って強くなれるのだ。この魔物と戦うべきは、そういった年齢層の人なのだろう。
「まあ、この情報があれば、もう私達に討伐が頼まれるということはなさそうね」
「そうだね。多分、もう少し……いや、大分年上の人達が戦うことになりそうだね」
「私達がまたこの魔物と戦うとしたら、二、三十年後くらいになるのかしら?」
「もしかしたら、もっと先かもね」
この魔物の怪光線の正体がわかったため、私達が戦うということはないだろう。
私達が戦うよりずっと安全な人達がいるのだから、そういう人達の担当になるはずだ。
そんな話をしながら、私達はギルドに向かうのだった。




