第21話 じゃれ合いが終わって
私は、クラーナに顔を舐められていた。
いや、最早舐められるだけではない。
頬を擦りつけられたり、耳を甘噛みされたり、もう色々だった。
だけど、私も、悪い気はせず、むしろ心地よいので、それを受け入れている。
つまり、私達は今、じゃれ合っているだけだ。
「ぷはっ……」
「あっ……」
「ペロ……」
クラーナは、耳を舐めていたのだが、満足したのか私の頬を舐め始めた。
クラーナの表情は、幸せに満ちており、それを見ていると、私まで嬉しくなってくる。
「ふう……そろそろ、本命かしら」
「本命ね……」
そこで、クラーナは一度舐めるのを止めた。
ここでいう本命とは、私の唇ということだ。つまり、これから私達はキスをするということである。
「いいのよね?」
「うん……」
そう聞いてくるクラーナだが、恐らく止まる気はないだろう。
もちろん、私も断る気はない。
「それじゃあ、いただきます……」
「あ、ん……」
私の唇に、クラーナの唇が触れた。
これから、本命が始まるのだ。
◇◇◇
結局、私はクラーナと二時間近くじゃれ合った。
現在、それは一度中断している。昼食をとるためだ。
クラーナは、昼食を作りに、台所に行った。私は、なんとなくベッドに留まっている。
「はあ……」
私は、クラーナとのキスに夢中になってしまった。
結局、私も楽しんでしまっていたのだ。
これは、かなりまずいことではないだろうか。
クラーナの方は、獣人としての本能であるといえるが、私はそうではない。つまり、普通にクラーナとのキスが好きだということだ。
それは、もしかして、クラーナのことが好きということなのだろうか。
「好き……?」
私は自分の唇に、指を当てる。
キスが楽しいから、好きだということにはならないかもしれない。だけど、そう思えるだけの根拠はあった。
なぜなら、クラーナと触れ合うと楽しいし、一緒にいると安心する。それは、好きだからと言えるのではないだろうか。
ただ、結論を出すにはまだ問題がある。私には今まで、そこまで親しいといえる友達がいなかった。もしかしたら、私の抱いていることは、友達に抱くものなのかもしれない。
それに、考えたくないが、私がそういうことが好きだという可能性もある。
「考えても、仕方ないのかな……?」
結局、考えてもまだ答えは出そうになかった。
それなら、気にしても仕方ないのかもしれない。
これ以上考えると、クラーナとまともに話せなくなる気がするため、私は一度考えるのをやめにする。
とりあえず、昼食を食べに行こう。
そう思いながら、私はクラーナの元へと向かうのだった。