第73話 続々と
クラーナの着替えも終わって、私達は外に出てきていた。
彼女の着替えを眺めるという行為は、非常にすごいものだった。これから彼女の着替えを見る時は、あの光景をまた思い出すのだろうか。それは大変そうだ。でも、楽しそうでもある。
「あれ? お前達、同じ部屋から……」
「あ、リュウカさん。すみません、その……」
「いや、別にそれは構わないんだけど……なんというか、お前達の雰囲気が……」
「え?」
同じく出てきたリュウカさんは、少し頬を赤らめていた。
もしかして、私達の表情に何か出ているのだろうか。いつも通りのつもりなのだが、こればっかりは私達にはわからない。
というか、よく考えてみれば、愛し合う二人が同じ部屋で二人きりで着替えたという状況だけでも、色々と想像できるのではないだろうか。なんというか、私達は結構大胆なことをしていたのかもしれない。
「まあ、そういう手がありましたのね……サトラ、今から私達も部屋に行きましょう」
「え? キーラ、私達はもう着替えているよ?」
「もう一度、やり直せばいいだけですわ」
「いや、そんな、皆を待たせるのも悪いし……」
リュウカさん達だけではなく、キーラさんとサトラさんも出てきていた。
というか、続々と出てきている。私達の事情は、大体伝わってしまったようだ。
「お熱いねえ……やっぱり、若いってのはいい。年を取るとああいう心は忘れてしまうのかね? いや、個人の問題か……」
「お母様、そんなことを言わないでください。大体、お母様も大概お父様とは仲が良いではありませんか」
「レフィ! 水着、似合っているね」
「え? ああ、ありがとうございます……あなたも、に、似合っていますわよ」
「ありがとう!」
「ほら、お熱い」
「お、お母様、からかわないでください」
ラノアとレフィリーナちゃんは、なんだか微笑ましいやり取りをしていた。
二人を見ていると、癒される。ついでに、火照っていた体も冷めていく。
「まあ、とにかく、海に行こうぜ。いつまでも水着のまま、廊下で話しているというのも変な感じだ」
「そうですね……」
「海!」
リュウカさんの言葉に、ラノアが大きく反応をした。
彼女は、今まで海を見ないようにしていた。水着に着替えて海に行くまで、我慢しようと思っていたらしい。
だからこそ、海に行くという言葉にここまで喜んでいるのだろう。いよいよ、彼女と海との初対面だ。
「そんなに楽しみですの?」
「うん、楽しみだよ」
「なんだか、羨ましいですわね……私も、初めて海を見た時は、こんな感じでしたの?」
「うん? ああ、そうだな……なんだか、懐かしいよ」
海を初めて見る。それは、ここにいる誰もが経験したことだろう。
私も、初めて見た時は感動したかもしれない。正直あまり覚えていないので、定かではないのだが。




