第72話 着替えを見られて
別荘についてから、私達はそれぞれ別れることになった。着替えの際に水着がわかったらつまらないというリュウカさんの提案があったからだ。
それは、私のせいなのかもしれない。あの発言をしなければ、きっとリュウカさんはこんな提案はしなかっただろう。
「さてと……」
「あら?」
私は、クラーナがいる部屋の前まで来ていた。
彼女には、少し申し訳ないことをしてしまったので、そのフォローをしに来たのだ。
「アノン、どうかしたの?」
「クラーナ、さっきはごめんね」
「え? いや、あれは私の方こそ悪かったわ。なんだか、変に嫉妬しまって……」
「謝罪の気持ちを込めて、クラーナには私の水着姿を一番に見てもらうと思うんだ。だから、中に入ってもいいかな?」
「……ええ、もちろんよ」
私は、クラーナに一番に水着を見てもらうことにした。そうすれば、クラーナも私が自分のものだと理解してくれると思ったのだ。
クラーナに招かれて、私は部屋に入った。皆との約束は破ることになってしまうことになるのは、少し申し訳ない。だが、今はクラーナのことを優先したいのだ。
そもそも、今日は遊びに来たのだ。皆、きっとそこまで厳しいことは言わないだろう。
「それじゃあ、お互いに後ろを向いて着替えようか?」
「……それは無理ね」
「え?」
「アノンが後ろで着替えているのに、振り返らない自信がないわ」
「まあ、確かにそうかも……」
「ここは、私の目の前で着替えてくれないかしら? その方が、なんだか楽しそうだもの」
「……へ?」
クラーナの発言に、私は少し驚いた。
なんというか、それはとてもすごい提案なのではないだろうか。
水着に着替える所を見られる。それは、とても恥ずかしいことだろう。よくわからないが、滅茶苦茶恥ずかしい気がする。
「ま、まあ、仕方ないなあ……それじゃあ、今から着替えるけど……」
「ええ、しっかりと見ておくわ」
「う、うん……」
だが、私はクラーナの提案を受け入れることにした。今日は彼女に申し訳ないことをしてしまったので、そうするべきだと思ったのだ。
とりあえず、私は服を脱いでいく。よく考えてみると、お風呂に入る時にはこういう動作を見られている。改めて考えると、それはとても恥ずかしいことなのではないだろうか。
下着にも手をかけて、私は裸になる。一糸纏わぬ姿になる必要があるのかどうかはわからないが、何故かそうした方がいいと思ったのだ。
「それじゃあ、水着を……」
「ええ……」
クラーナに見られながら、私は水着を着用する。
考えてみれば、この動作も日常で見られているはずだ。それなのに、どうしてこんなに恥ずかしいのだろう。
いや、今まで意識しなかっただけで、これは本当はとても恥ずかしい姿なのかもしれない。今度から、どういう顔で着替えればいいのだろうか。
「……」
「……」
というか、恥ずかしいのはクラーナがガン見しているからなのかもしれない。
日常では、流石にここまで見てはこないはずだ。だから、いつもよりも恥ずかしいのではないだろうか。
「ど、どうかな……」
「ええ、似合っているわ」
「んっ……」
着替えを終えて感想を聞くと、クラーナは賞賛とキスを返してくれた。
多分、クラーナも結構興奮しているのではないだろうか。いや、間違いなく興奮している。その赤くなった頬が、それを表している。
「それじゃあ、次は私の番ね?」
「え? クラーナの番?」
「ええ、しっかりと見ていてね?」
そこで、クラーナはそんなことを言ってきた。
それはなんというか、非常に魅力的な提案である。私は、生唾を飲み込んだ。これから、私は一体何を見せられるのだろうか。




